書きなぐり High&Low8 忍者ブログ

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昔の分です。
いずれ1のように直します。





誰か止める奴はいなかったのかと怒ったところで。
と言った調子でお疲れ会という名の押し掛け訪問をされた。
ソファでぐったりできるだけまだマシか?
押し掛け訪問してきたのは武器科の五名。
破砕、早撃ち、暗殺者、アヤトリ、舞師。
「だからいっただろうが。こいつの部屋集まんのにはむかねぇって」
「機械学なんかって、あーそう思えば編入生だっけか?ほぼここにいるみてぇだし忘れてたわ」
青磁が俺の部屋が汚いというふうにいう。
汚くはないが、作りかけのパーツで占拠されてるのは確かだ。
俺の担当と言うだけあって俺の出身を知ってるらしい副委員長がうなずいた。
俺は中等部一学年の時、こちらに編入してきた。
この学園の引き抜きでこちらにやってきたわけだ。
引き抜き自体はめずらしくないが、俺が元いた学校から引き抜かれ学園に行くというのは非常にめずらしいケースであり、当時ちょっと騒がれた。
すっかり埋もれてるけど。
「…魔法機械都市の出身なのか?」
さわやかながらに驚いている一織。
そう思えば、一織も魔法機械都市で三年学んだ後こちらに入学している。
「そ。魔法を科学にかえ、行使する都市出身」
今のところ、魔法石を使ってそれを果たしているが、ゆくゆくは電力を魔法に変換し行使することを目的にしている。
「どおりで魔法石の扱いがうまいわけだ」
会計がおつまみをひろげつつ感心している。結局ここでお疲れ会をするようだ。
「ていうか、俺はそんなことより、俺を抜きにしてお疲れ会してくれんかなぁいうことでね…」
「安心しろ、この面子で目立ちまくって此処まで来たから、明日からサヨウナラ穏やかな毎日だ」
まったく安心できない上に俺の言葉を無視したことを堂々と副委員長が言った。
ひどい。
もう疲れた身体でだるくて眠いのに寝かせてくれないし、その上なんとか自分の意思を伝えたら、無視した挙句、目立ちまくってここに来たから明日から人気者にあんたなんかが相手にされて!とキィキィされろと、そういうことですか。ああ、そうですか。
酷すぎて、何か気が遠い。
「だって、お前だって有名人だろう?平気平気」
いけしゃあしゃあといいきるのは、将牙が将牙故だ。
将牙は自分自身が破砕であるということがばれても平気だし、かかってこられたら望むところだと殴り倒す男だ。
おかげで将牙には友達があまり多くないのだが、そこは本人も気にしているところだ。
「それは違うだろ、将牙。反則狙撃は確かに叶丞くんだが、叶丞くんは理想と画面で見られる反則狙撃とはまた違う」
正体もばらしていないことだし。と、俺をかばってくれたのは、この中ではおそらく一番常識的な会計だった。
おそらく出禁を恐れている青磁と常識的な会計は俺の部屋にこっそりくることを提案してくれたに違いない。
副会長である一織は、あとでなんとでもできる自信があるし、実際なんとかしてしまうので別に何も恐れなかっただろうし、堂々としたものだったろうが、提案されれば従ってくれるだろう。
しかし、将牙は有名人だが俺の友人だし、他の有名人とは違って美形だからともてはやされたわけではない。
もちろん、美形の類ではあったのだが、持ち上げられることのない、危険物であるため、誰も文句は言わないのだ。
ただ、自分自身がそうであるし、文句言われたら殴り倒せよ、逃げんなよな道をつらぬき、それで俺にブチ切れてしまう将牙にとって、目立たないように、訪問しようということに納得できずそのままつっこんで来たに違いない。
風紀副委員長にいたっては、面白そうだから目だってやろうと、目立たないよう来ようとした連中を引っ掻き回し此処までつれてきたに違いないのだ。
つまるところ、風紀副委員長がほとんどわるい。
将牙はとめたって一人で来るし、だからといって他を巻き込んで一緒に行動はしないだろう。
結論に至った俺は唐突に呟く。
「性質悪いわぁ副委員長、ほんま性質わるいわぁ…」
「…今更だろう、目をつけられた時点で終わりだ」
一織が副会長スマイルのまま、さらっと告げた。
ちょっと哀愁を感じた。
魔法使い連中が頭使ったからこぞって甘いもの食いにいってくるといって一緒に飯を食いにいったので、何かこちらもやるべきだろうかと思って催してみたという適当な理由で行われたお疲れ会は、なんと朝まで酒飲みたちの宴となった。
俺は翌朝、あんまり寝れもせず、へべれけになった将牙を自分のベッドに寝かしつけ、会計と飲み続ける副委員長を無視し、部屋に散らばったつまみと酒瓶を適当にゴミ袋にいれていた一織にだけ声をかけ、シップをはって栄養剤を飲みながら銃の整備をすることとなった。
なに。この身体に鞭打ってる状態。
とにかく銃の整備である。
ばらして、掃除して…これ、半日はかかるんだけど。しんどい、しんどすぎる。と、溜息をついているときだった。
置いてきたはずの一織の気配がこちらにやってきた。
「…手伝うぞ?」
「……なんや、下心とかあります?」
人の厚意になんてこと言うんだ。と思われるだろうが、こんなしんどい作業をただで手伝ってくれる奴はそういない。
まして、俺と一織はそんなに親しいわけでもない。
「ある。ちょっと聞きたいことがあって」
がちゃがちゃと銃を解体し始める一織は手馴れていた。
普段短剣をつかっているはずの彼がどうして、銃を解体できるかという疑問を口にだすまえに、彼はその答えをくれた。
「魔法機械都市で、銃を少し、やったからな」
「俺、そんなに不思議そやったん?」
「まぁな。で、だ。俺が聞きたいのはその魔法機械都市のことなんだが」
「ん」
一織が解体し、ソレをどんどん掃除するという流れ作業をしつつ、俺は頷く。
魔法機械都市は俺の故郷であり、今でもあちらの友人から最新情報は届くし、帰省もする。
二年前から魔法機械都市から遠のいているだろう一織よりも情報通である…と思いたい。
「あー…正しくは、魔法機械都市でのキョーについて、だが」
ていうか、そのキョーっていうの固定になったのか。
「どこの学校に所属していた?」
「市立魔法機械寵栄学園(しりつまほうきかいちょうえいがくえん)、魔法機械学部、武器学科、銃専攻」
専攻まで述べたのは、だいたい俺が通っていた学校を言った場合、そこまで聞かれることが普通だからだ。
面倒を省いた。それだけの話。
「……俺は魔機寵栄学園、魔法機械学部、武器学科、魔法武器専攻だった」
「…おんやまぁ。せやったら、あれかいな。先輩いうことになるんかな、一織は」
あの学園は一応魔法機械都市では一番でかい学園だった。
一織が通っていたとしてもおかしくない。
それより驚いたのは専攻が魔法武器だったこと。
今、一織が使っているのは普通の武器だ。
「まぁ、そう…なる…」
一織は微妙な顔をする。
コンプレックスなんだろうなぁ。本来なら先輩であるはずの一織が俺とこうして同じ学年にいるってこと、そしてあっちの学園じゃ先輩って立場になること。
「せやかて、俺、あんまあの学園、ようけおらんかったし」
中学の時にあの学園に入学したのだが、すぐこっちの学園に引き抜かれ、その誘いにのってこちらに来てしまったため、あちらの学園ことはあまりおぼえていない。
「…お前は、あちらでも、有名人だっただろ?」
「え、なにいうてるの?そんなわけないやんな。一年もおられんかったのに?」
「……」
一織は手を止めない。
非常に助かるが、一気に無表情になった一織が、解体行為を繰り返す様子は、背筋に汗が浮かぶ。
もちろん脂汗だ。
俺もかろうじて手は止めていないが、先ほどからなにやら室温が下がった気さえする。
正直、怖い。
「俺のはいった当時、入学して早々、シュミレーションを壊した新一年生の伝説があった」
「なんや、そんな人おんねんなぁ」
俺の他にも。
と他人事のように、銃口を磨く。
もしかしなくてもそれは俺のことかもしれないが、あえてここは知らないふりをしよう。
「その一年生は、さらに、新しくなったシュミレーションで高得点をたたきだし、未だにそのシュミレーションではその得点を超えられるやつがいない」
へーそんなん、早撃ちがいったら一発で越されるに決まってる。レベル下がったなーあの学園。
なんて更に他人事のようなふりをして頷く。
「そなんやぁ」
「さらに、サバイバルゲームで高順位を獲得し、罠をはりまくり、卑怯だ反則だといわれ…」
「…なんや、かわいそうやからやめたって、そういうこというの」
「挙句、転校していったと」
いや、もう、それ、俺でしかないから。
確信をもって言ってるだろ、一織。
なんで今日は朝からそんな過去のやらかしてしまったできごとを聞かなければならないのだろう。
しかも、それがあったから、この学園に引き抜かれちゃったんだけどさ…。
「あーうん…うん…そやね、俺やよ。そうやよ、俺やよ。それで、それがどないしたん」
なんか色々耐えられなくて開き直ってみたら、一織が、一つ息を吐いた。
そして、手を止めて俺を見る。
「…そうか。解った、……ありがとう」
嬉しそうに、一織が笑った。
へぇ、そんな風に笑うのか。…会長もそんな風に笑うのかなぁ。
何が解ったのかは解らないし、俺がきいたことに対しての答えはない。
けれど本人は納得したようで、いい笑顔だけかえしてくれた。
まぁ、いいんだけどさぁ。俺としてはちょっとだけ納得いかない。
「なんやの。ちょっと気になるんやけど」
「別に。ただ、キョー。一つだけ宣言してく。…やっぱり俺は、お前をものにする」
「はいはい、そうですか…って、そうですか?は?もの…は?」
え、それ、なかったことにしたのでは?と俺も思わず手を止めた。
「今度は俺が求愛するから、覚悟しろ」
「いやいやいやいや、ちょお、まって?」
「待たねぇ。受けつけねぇ。俺はしたいようにかしねぇ」
言いたいだけいうとさっさと一織は作業にもどった。
ちょっとまって、そんなところも会長と似てなくていいとおもうんだけど、どうなの、一織さん!
◇◆◇
魔法機械学。
魔法を受け付けない身体に生まれた俺にとってそれは、最後の望みのようなものだった。
魔法至上主義者にとってそれは邪道であり、嘲る対象であったが、魔法を使えない俺にとっては溺れているときの藁のようなものだった。
魔法機械だって、魔石を扱えなければ扱うことの出来ないものなのに、最終的には電気を魔法に変換することが目標とされるそれに、俺は縋ったのだ。
…魔石も扱えぬ体質にも関わらず、だ。
俺の有り余る魔術と法術の知識はあの学園では大変役にたつようで、俺の入学は学園として大変ウェルカムな状態だった。
せめての矜持で魔法武器なんて選択したが、魔法武器すら俺には扱えるものじゃなかった。
魔法を扱えば俺の体調が悪くなる、とかならばまだ言い訳ができたものを、ある程度魔法を無効にするという厄介な体質に生まれてしまったがために、自分自身で魔法を扱うことが出来ないのだ。
弟ほどの力と魔法ならばかかるし、弟は昔から俺に魔法をかけることを目標にしている節があり、それに対する研鑽に余念がない。
そのくせ単純なところがあるため、猟奇ほどの精密さがない。
そんな弟を俺の第一課題にしたのは、おそらく精神面と俺に魔法をかけるということにも特化している弟の攻撃をどうするのかというのを見られていたのだろう。
弟の魔法を待つまでもない。
俺は弟を瞬時に落とすことを選択した。
魔法機械都市では結局、魔法を手に入れることはできなかった。
ただし、魔法無効の体質をコントロールすることと、武器を扱うこと、この身体の使い方を覚えた。
それで、この学園に入るのは充分だったし、弟を落とすに足りた。
気を失った弟を見て、遠いところまで来てしまったなと思いもした。
けれど、キョースケが魔法機械都市出身だときいて、思い出す。
何度も。
魔法機械都市ですら、何度も、コンプレックスを刺激され、慣れない武器の扱いも、今まで使っていなかった身体でついていった授業も、何度も、やめてしまおうと思った。
その度、『伝説』を思い出した。
あの学園にいながら、一切の魔法も使わず伝説を作り上げた挙句、その力で俺の行かなければならない学園にいった。
羨ましく、妬ましく、そしてそれができないことではないという事例であり、目標だった。
ただ無理ではないということが、どれだけ、俺の支えになっていたか解らない。
それは結局俺にはできなかったことではあるのだが、それを悲観しないで済んだのは、おそらくその伝説を知るやつが、俺の近くにいたからだ。
『あいつは…すっげー呑気で。シュミレーターを演算機能がついていけないくらい追い込んで壊しておいて、絶望、みたいな顔で、『壊してもた。やってもたー…』ときた。思わず反省文かかせた』
『高得点だしたときも『なんや、また、壊してもたんちゃうん?コレ、やばい?トンヅラこいたほうがいい?』だぞ。あの集中力おかしい。絶対変態だ。だいたい後ろもみえてないはずだろみたいなおかしなことなってたし。絶対変態』
『サバイバルゲームにいたっては、俺、本気でコイツ死んだらいいんじゃねーのって思ったしなぁ。トラップトラップらんらんらんみたいな状態だった。これも『なんや楽しなってきたで、罠張るの』とかいうってたそ。変態決定』
天才って腹が立つなと思ったことも多々あったというより、今も思うところだが、その伝説の人となりを聞くたびに意外と普通だなと思った。
そして、その呑気さに腹が立つ共に、肩肘はってる自分自身が馬鹿に思えたものだ。
悲しむ前に腹を立て、こける前に力を抜くことができた。
伝説を教えてくれた友人のおかげであったし、結局在学中焦がれ続けてしまった伝説のおかげであった。
その伝説にキョースケは似ていた。
だから、欲しかったのだろう。
伝説なんて、この学園にきてから思い出すことさえ少なかった。
けれど、それによく似た反則狙撃を意識していたのだ。
伝説がキョースケだとわかった今は、友人の語った伝説がそのとおりであることを証明し実感するために欲しく思った。
それが、俺が昔から欲しかったものでもあるから。
課題があったからといって学校の強制イベントがなくなるわけじゃない。
そう、新入生歓迎会というグループ戦闘大会は、問題なく申請したグループで行われるわけで…。
「あーん。すごぉーおい!焔術師大活躍だねぇー」
そりゃあ魔法使いたい放題のフィールド上で時間を気にせず魔法が使えれば焔術師は強かろうよ。
時間を与えたら魔術師なんてやりたい放題だ。
…力の保有量が尽きない限り、だが。
魔法は基本的に何かを使って発動する。
それが時間であったり、保有した力であったりするわけだ。
だから、時間を使いたくなければ力を使えばいいし、力を使いたくなければ時間を使えばいい。
ただし、力も時間も有限。そこをなんとかするために、人に師事したり、人の研鑽を盗んだりするわけだ。
だから、時間も、力も使った分だけ魔法は大きいものになるわけだ。
焔術師は大規模殲滅魔法っていうやつを得意としている。
これはただ単に焔術師が生まれ持った力の保有量が多かったがゆえに、力押しが得意で細かいことをするのが得意ではない。ということに由来している。
炎は攻撃性が強い魔法が多く、それはもう力のぶつけ合いのような魔法が多く存在するわけで。
そんな理由から、焔術師は炎系の魔術が得意なわけだ。
しかし、大規模殲滅魔法なんてのはどれも術式の展開に時間がかかる。
それをどれだけ展開を早くするかってのが魔術師たちの腕の見せどころなわけだが、それでも、大規模とつくだけあって、今のところ一瞬でといわれる時間でそれを成すことはできていない。
それなりに時間を食ってしまうわけだ。
いくら力の保有量が多くとも、術式が全て簡略化できるわけでもない。
焔術師も力押しをしてしまったりするが、補助や力の無駄の排除を必要としないというだけで、時間の短縮には熱心だ。
大型魔法にしては早い術式の展開ができる。といってもいい。
しかし、その間に狙われてしまったら問題外だ。
そう、狙われてしまうほどの時間を、術式展開に必要とするわけだ。
「さすが、猟奇、近寄らせないどころか焔術師の補助までしてしまいますか」
そして、うちの相方は今回のグループ戦闘で焔術師のサポートなんてやってるわけで。
「は、破砕も、さ、さすがの破壊っぷり…」
将牙も破砕の名にふさわしく遮蔽物をガンガンつくったり壊したり。
「殲滅魔法逃げ切れたと思ってもぉー、暗殺者にほっとしたとこぐさりーだなんてぇーひどいよねぇ…」
いやもう、他人事みたいに言ってるわけだけれど。
「この結界から出られない状態で呑気に言っている場合ではないんじゃないか…」
今対戦しているのは俺たちなわけだ。
この結界だって、猟奇対策といってさっきからずっと人形遣いと追求が何重にも張り続けてるわけで。
それも猟奇…良平に一気に三重とか砕かれたりするわけで。
「この殲滅魔法防いだら動きましょうか…できたら、反則にアンを止めてもらいたいのですが」
「…そんなに持たないが、かまわないか?」
あの人ホント強いから…。俺は溜息をつく。
一度勝ちはしたが、アレは良平の魔法があったからで、俺が完全勝利を収めたってわけじゃないし。
あれから時間も少したっている。
なんだって日進月歩だ。特に暗殺者は進まないわけがない。
「かまいません。私は将牙を叩きます。アレは、魔法使い両名の殲滅にこちらにむかっているようですし…アンの居場所を追えるのは貴方くらいでしょうし」
居場所が気配で逐一わかったとしても、あのスピードについていける身体があるかっていわれたら否なわけで。
ほんと少しの間だけしかもたないわけだ。
できたら暗殺者をおとしたいけど、どうにもなぁ。
良平は力の保有量さえ把握できれば落とせないこともない。
あいつは保有量が少し少ない。無駄遣いさえさせれば問題はない…が。
今回は補助をするためか、マジックサイスではなく、刃がついた…普通の武器をもっている。
グループ戦闘で力を使うと予測して、それを最終戦まで持っていくためにアイツは力を出来るだけ温存するかまえでいたわけで。
ここで、結界崩しをするのもできるだけしたくないようで、ちょっとサボリ気味だ。
全力できたら、俺たちもこんなに呑気にしていられない。
「い、今…!」
殲滅魔法を防ぎきった瞬間に俺たちは追求の言葉を合図にそれぞれ動き始める。
人形遣いは人形を動かし始めた。
人形遣いはゴーレムも作れるわけだが、自分自身の用意した人形…人の形をしてなくてもいいわけだが、それを動かすことも可能だ。
人形遣いの魔術は強靭な人間以外の何かを使って敵を圧倒するか、数を使って敵を圧倒するかのどちらかを得意としている。
人間以外の何かを使い、人間の限界を超えた振る舞いをさせることは、人間である俺たちにとっては恐怖の対象であり、また、想定の範囲を超える。
こうしたら動けないだろうだとか、こういう動きはできないだろう。という思いが俺たちの中にはあるからだ。
まぁ、それも慣れてしまえば問題じゃない。
見慣れてしまえば、それなりに対策が出来る。
しかし、じかに見ていない、触れていないものにはやはり、対応しきれないものがある。
これも、悔しいながら、ゴーレムは先日課題に取り組んだため、ほぼ遮蔽物として使っていたからあまり活躍の現場を見なかったが、おそらく見慣れてしまっているしどれだけ動けるかをなんとなく察しているんだろうと思う。
だいたいゴーレムを作るには時間を要する。
その間にこちらは不利な状況になってしまうにきまっている。
ならば手持ちのコマを使ってもらうしかない。
あらかじめ人形を用意してもらったわけだ。
複数、頑丈で、できるだけ破損が難しいもの。
燃えたり、濡れたりしても平気で、折れたりしても大丈夫なもの。
「あはぁ。意外と動くもんだねぇ単調だけどぉ、そのほうがそれっぽいもんねぇ」
人形遣いはそういって笑いつつ、人形を操作する。
まっすぐ、良平と焔術師に向けて、スピードだけ重視で人形遣いに攻撃をお願いしておいた。
人形遣いはお願いどおりやってくれたようだ。良平はソレをたたき落とし、俺を探した。
さすがに俺はこのフィールドに入った時点で気配は慎重に慎重に殺していますとも。
視界にはずっと入っていたけれど、だからこそ、何処にいるかなんて察知しなかっただろう。
…まぁ、暗殺者は俺の位置を執拗に確認してた、みたいだけど。
あっちの作戦だろう。
怖い、本当に暗殺者は怖い。
俺より上手に気配を殺すから。
暗殺者が気配を殺したら、それこそ近くにいても解らず、その名に恥じない。
俺も全力で暗殺者の位置を追ってたんだけど、たまに消えるから困る。
集中力を分散させるとダメなんだよなぁ。
「本当、怖い…!」
俺はおそらく暗殺者がいるだろう位置に向けて銃を撃つ。
誰かさんによって蹴られたフレドはなんとか復活。今日も火薬を叩いて銃弾射出。
「どっちが」
静かに姿を現した暗殺者が俺の方が恐ろしいと、銃弾を避ける。
「近い!」
意外と近い。移動スピードが相変わらず速すぎる。
引き金を引く間にどれほど移動するんだこの人は。
俺はライカの引き金を何度も何度もひく。
連射できる銃でよかった。
でも、そのどれもが暗殺者に当たることはない。 しかし、その銃弾が地面に落ちる前に、それらは暗殺者に向かう。
追尾弾ではない。
俺はそれを見る前に元の位置から動いている。
「…ッ?」
暗殺者もわけがわかってないようだ。
俺が何かしたわけじゃない。もちろん奇跡でも偶然でもないので、何度もそれは起こり得る。けれど、あんまり期待はできないかなぁ。
俺はわけが解らないながらも、混乱をする前に攻撃を避けることに集中した暗殺者に舌打ちした。
せっかく不意がつけたのに、全部避けられたからだ。
避けたあとで襲ってきた分も、さらにそれを避ける前に俺が撃った銃弾も、だ。
暗殺者こそ、複数視点でももっているのではなかろうかと、疑ってしまう。
けれどそこはそれ。
俺は速さをとると正確さにかけるし、正確さをとったら速さに欠ける。
これを両方とも引き上げられるだけ引き上げた妥協点で近接戦を行っているわけで、下がった分だけ量で補っているわけだから、俺は舌打ちしながらも銃撃はやめないわけだ。
魔石は先日課題で使い放題しちゃったからまともに使える奴が少なくて温存もしたいんだけど、相手が相手。
弾入れてる時間はないわけで。片手で撃ちつつ、銃を召喚。
召喚する瞬間の隙をもちろん、暗殺者は逃してくれないわけで。
暗殺者の持つ短剣が俺の腕を掠める。
学園の防御システムは今日も絶好調。
実際には傷つけられてはないから、血は一滴も出ない。
出ないんだけど、俺は右腕に痛みと違和感を覚える。
負傷はしないけれど、実際の戦闘を模倣して使えないものは使えなくするってわけだ。
これが蓄積するとまぁ、戦線離脱となるわけだ。
でも、右腕に攻撃を受けたわけだが、その右腕は使えないほどの負傷をしたわけではない。俺は右でそのまま、引き金をひく。
暗殺者の顔が歪む。
「相変わらずきわどい攻撃をしてくる」
ていうわりには、きっちり避けてくれるわけだけどね。
あんまり近いと銃弾を弾くのも困難。
近ければ近いだけ、威力は強いからだ。
まぁ、近ければ近いだけ俺も危険にさらされてしまうわけだが。
再び銃弾が向きを変える。
良平はまだ戦線離脱してないし、そろそろ焔術師の殲滅魔法がくる。
不穏な空気が漂ってる。力もどんどん局地的に膨らんでいる。
人形遣いが攻撃に転じた今、サポートに専念してくれているのは追求。
焔術師の殲滅魔法を未然に防ぐのが追求の仕事。それが出来ないようであればこちらの防御をお願いしてある。
ただ、追求は位置を複数同時に正確に魔法を発動させることが難しいとのことなので、俺たちは追求が魔法を発動させることができる位置に向かわなければならない。
移動させてくれるかな、暗殺者が。
無理だろうな。と判断した俺は、暗殺者をここで戦線離脱させるために、尽力することにした。
焔術師に戦線離脱させられるだろうけど、俺一人だけ戦線離脱させはしない。
あの焔術師が、兄である暗殺者を気にせず殲滅魔法を使っているのだ。おそらく、焔術師の魔法で暗殺者が傷つくことはないということなのだろう。
「そろそろ終わらそうか」
ここまできたら出し惜しみはしない。
使っていない弾を暗殺者に投げるようにしてばら撒く。
さっきからおかしな動きをする銃弾にあたらないようにする暗殺者はかしこい。
俺はさらに魔石を適当に掴むと宙に投げる。
「展開!」
更に魔石によって銃弾がばら撒かれ、一部が銃を俺の前に何本か出す。
「人形遣い!」
俺は叫ぶと、ガンガン撃つ。
ちゃんと人形遣いは俺の意図を察してくれたようで、用意した人形…俺が使っている銃弾、一度も魔術で動かしていないものを動かしてくれた。
「くそ…ッ」
暗殺者でも、悪態つくんだな。
と思ったところでホワイトアウト。
今日も焔術師は絶好調ってか。
俺は新歓が始まる前に人形遣いにお願いして俺の銃弾に人形使いの使役魔法を使ってもらった。
つまり、俺の銃弾は人形遣いの今回限りの人形だったわけだ。
数が多いし対象が小さいから、あまり自由は利かないし、一瞬しか繰れないとのことだったのだが、それだけで充分だったわけで。
一応奥の手としてつかってもらった。
「反則」
「え…なんや不当」
戦線離脱して、食堂に行く…前に確保されて、一織の部屋にて残りの試合を観賞という運びになったわけだが。
いやぁ。生徒会とかああいうお仕事している人はいい部屋住んでるって本当だったんだなぁ。と思うこととなった。
広い。上に何この映像機器。羨ましい。画面でかい。
「人形使いの魔法というだけでも、難解な魔法だというのに、なんだその使い方は。反則にもほどがある」
「人の考えへんことを考えるんが、裏をかくっちゅうことやろ?」
「そうだが。ああ、コレだから」
いや、そのあとに何って続くんですかね。
変態?伝説?反則?…もしかして、全部?
結構、一織は好きなように言ってくれる。さもすれば、会長よりもきついことを言ってくる。…いや、会長はもう、これでもか!っていうブラコンだったので、一織の性格を憧れから真似、そして進化した形が会長なわけで、一織の方が、その、原典というかそういうものなので、強いというか。
とにかく会長にすら言われたい放題な俺が、一織に言われたい放題にならないわけがない。
ただし、一織は理不尽なことを言っているという自覚があるため、控えめというか、認めた上での発言が多い。
会長は認めたって悪態をついてくれる。…悲しい事実である。
そしてそれは、一織がこうして俺に構うことでさらに激化した。
ブラコン、さすが。である。
優しくしてくれたって罰はあたらないのに…。
「やけど、殲滅魔法でこのとおりやし。まぁ、結構戦力的にガッツリ削れたからよかったんやけど…あ、あかん。うちとこ負けてもた…」
舞師が将牙を落としたのは良かったんだけど、あと二人ってとこで、良平が焔術師のガードをやめたようだ。
それに気がついていなかった魔法使い二人をさっくりやっつけるあたりはさすがの猟奇。
すると、遠距離攻撃型の人間はいなくなった。そこで舞師は猟奇と直接対決を始めたわけなんだけど、敵側の遠距離攻撃型の人間はいるわけで。
そこで一気に落とされてしまったわけだ。
そして、俺たちのグループは全滅。
一織所属のグループは、二人残ることとなった。
この新歓は欠けた人員は補充できない。つまり、このまま二人はあのまま戦闘を続けることになるということだ。
「ああ…早く食堂に行かねぇと十織が煩せぇな」
一つ溜息をはいて、一織が立ち上がる。
ブラコンな会長は、俺と一織が一緒にいると嫌がる。俺への当たりをつよくする。
ヤキモチ?照れ隠し?といってみたいものだが、明らかに一織に近づかないようにするための牽制であるため、それを口にしたが最後、俺はきっとハートブレイクだ。
落ち込んで溜息すら出せない状態に追い込まれるだろう。
「そやね…」
食堂に行ったら行ったで、『キィキィ!お前なんて!お前なんて!』の視線に見つめられるだけだけど。
一織は俺に遠慮も容赦もしなかった。
食堂で、生徒がもっとも多いと言われる時間帯に一織は宣言した。
「今日から俺は、コレをものにするため、行動する。邪魔する奴は背後に気をつけろ。一閃で終わらせる」
自分自身が暗殺者であることさえ宣言したも同然の言葉で生徒全員をあの爽やかスマイルから程遠い…ニヒルな悪役スマイル…それはもう、お怖い笑顔で脅しつけなされた。
近くで聞いてた俺は思わず、言ってしまった。
「なんでやねん!」
万感の思いを込めたつっこみだった。
キィキィより怖かったのは会長の視線で、もう、会長ファンを俺の敵にしたくてすぐに行動に移してくれました。
「コロス」
その場で宣言した会長の目が、マジ過ぎて怖かったです。
風紀副委員長はゲタゲタ笑って馬鹿にするし、会計には哀れまれるし、あんまり認識のなかった書記の人にすら『ドンマイ』っていわれちゃったし、良平からは友達がいのないことに、半径二メートル以内近づくなといわれてしまった。
ロッカーの私物はさっそくお亡くなり遊ばされて、机はもう芸術作品になってた。
机で花をつくるとか、芸術の粋に達してはいるけれど、何をつかってこのような…とか、執念とかそんなものを感じてしまって、非常にどうしようもない気分になったものだ。
仕方ないので、新しくやってきた机には、カウンター魔法と少々のトラップを仕掛け、さらに、呼び出してくる連中は無視を決め込み、それでもこちらにかかってくる連中には…まぁ、トラップにひっかかってもらいました。
将牙も暴れるので、今は、視線だけお受けしております。
しかし、最近、一織のファンからは一部期待の熱視線を受けている。
「副会長さまの、お友達になってくださってありがとうございます!ついでに、ものになってあげてください!」
だそうで。
なんというか、ある一定以上は一織が人に興味をもてないようで、一織の親しい友人というのは指を折る方が早いのだそう。
このままでは心許せる友人のみならず、恋人も出来ないのではとはらはらしていたらしい。
ものにするだなんて、一織らしくない言葉に心底ホッとして、心底羨ましくおもって、心底憎いと思ったらしいが、それでも、しばらくして、一織を再び心配したようだ。
もし、俺がものにならなかったら、一織は、どうなるのだろうかと。
どうもしないだろうよ。というのが俺の感想。
アレは恋愛感情でものを言っているわけではない。
欲しいというのは近しい場所にいればそれでいいというだけのことで、別に恋人でなくてもいいわけだ。
例えば側近と言われる場所に俺がいるのなら、一織は俺をものにしたことになる。
俺がものにならなくとも、一織が悔しい思いをするだけで、絶望することはない。
本気であっても、一織は分別をつけている。
それがわかるから、そう、どうもしない。
もし、分別がつかなくなってきたら、どうかしてしまうのだろう。
ただ、それを言った所で、俺が一織の特別の枠であるのは確かなので、俺はあえて黙ることにした。
好きで敵視されたいとは思っていない。
「なんやもー面倒やなぁ…」
食堂に行くと、そこは戦場でした。
「なんや、生き残り組は変装のまんまかい」
「大変だな」
他人事のようであるが、他人事だった。
追求のおかげでシステムが一部限定で働くように出来るようになったとかいうことで、新歓で生き残った連中は変装後の姿のまま、昼食をとっていた。
変装をしていない連中が、コレ幸いと変装後の連中に群がる様子は圧巻だ。
普段はキャーキャー言われる立場である一織も、眺めるだけの立場に回ってしまうほどの騒ぎでもあった。
「風紀は動かんのん?」
「動ける状態じゃないんだよねー俺も委員長も生き残ってるからー」
テーブルの下に気配を殺して隠れていた早撃ちを発見して声をかけると、早撃ちはちゃんと返事をしてくれた。
「なるほど…」
「と、いうわけでー…臨時風紀委員して頂戴よ」
と、風紀の腕章を貸してくれた早撃ちは、ニヤニヤ笑って楽しそうだった。
腹が立ったので、俺は息を吸った。
「早撃ち様がいらっしゃったぞー!」
そのあとは風紀の腕章もつけずに、さっさと人ごみに紛れたわけだ。
一織なんて、あの目立つ容姿なのに、見事に人ごみの中に埋もれるからすごい。さすが暗殺者というべきか。
「風紀ねぇ」
「やれ」
「…風紀委員会では机の下に隠れるんはやっとるん?」
「奴ら、下をみない」
「左様で」
「とにかく取り締まれ」
「もしかして、風紀命令なん?」
「相違ない」
机に隠れた風紀委員長のアヤトリとボソボソと会話した後、俺は溜息をつく。
風紀の命令はきいておかないとあとが怖い。
風紀副委員長は余計なことしかしない早撃ちであるし、良平以外はわりとどうでもいいとおもっている青磁が風紀委員長であるからだ。
「了解。しゃあないから、お手伝いいたします。あー…ひぃ?」
まわりに関しては面倒だなぁと思いはするものの、一織とはいい友人であるといえる。
ワリと話が合うし、話していて面白い。
叶丞というのは未だ難しいらしく、俺のことをキョーと一人で呼んでいるのが何か寒いといって、俺に一織ということを禁止され、呼び名がないと不便だなということで、『ひぃ』と呼ぶようになるくらいには、仲良くなったつもりだ。
「なんだ?」
人ごみに紛れはするものの、俺の傍にいた一織に声をかける。
一瞬青磁がビクッとした。
急に現れたみたいで驚いたのだと思う。
「手伝うてくれる?副会長の言うことやったら聞いてくれるやろ」
「なるほど。従おう」
一織は俺の指示に従ってくれるつもりらしい。
俺は暫く思案した後、この際だから、色々牽制しようか。と、持ち前の運動神経を発揮することにした。
そして、一織にも、発揮してもらうことにした。
まず大きな音を食堂で立てる。
何ものってない机をアヤトリの協力の下、危なげなくひっくり返す。
被害はもちろんないように、だ。
その音に誰もが振り返ったとき、俺と一織は普段よりもゆっくりめに、観衆に見やすいように大立ち回りを始める。
まず一織が足を振り上げる。
まずかかと落しか。それ、くらっても防御しても大ダメージだよ、容赦がないよ、一織さん。
俺はソレを避けるとひっくり返した机のテーブルクロスを片手に持ちバサッと広げつつ投げる。
これだけで、人って言うのは、テーブルクロスに気を取られちゃう。
視界いっぱいに広がっただろうテーブルクロスを払うこともしないで俺の攻撃をまった一織は冷静だ。
そう思えば、今日は二戦目だなぁ。
なんて思いながら、俺は口角を上げる。
勝敗が決するまでがんばったりはしないけどね。
「なーんや、戦う縁とかあんねやろかねぇ」
俺はその辺に机にあったシルバー類を手に取ると、一織に投げつける。飛び道具は飛び道具でも、あまり投げることは得意ではない。
もちろん、被害が他に及ばないように、俺と一織を囲む円ができた瞬間に結界をはるように、良平にはリンクで伝えてある。
しかし、一織はソレを避けることなく見事に投げた分だけ手でキャッチしていく。
「さすが」
「こんなこともできるとは聞いてねぇよ」
俺が褒めると、あちらも感嘆をこめた言葉を漏らした。
ある意味相思相愛だ。
キャッチしたシルバー類を俺に投げ返すあたりもさすが。
コントロールいいナァ。なんて感心しながら、受け止めるなんてできない俺は、避けるのは止めて、やはりその辺にあったトレイで片っ端から叩き落す。
急に静かになった現場で、俺が動きを止めると、一織も動きを止めた。
「はいはい、皆さん騒ぎたいのもわかるんやけど、風紀に狩られとうなかったら、お静かにねぇ?」
「今、騒ぎすぎて新歓がつぶれたら、皆、残念だろう?」
今日はどうやら、爽やか副会長で通すらしい。
ニコっと王子様スマイルだ。…正直、近くにいる俺は気持ち悪いのだが、それは我慢だ。
「というわけで、もし何か騒ぎが起きたら、今日限り、風紀代理の俺と、副会長がぶちのめすさかい、騒ぐのはほどほどでお願いするで」
そういいきったら、俺は散らかしたものを片付け始めた。
何か一部の一年生から熱いまなざしを受けてる気がするけど、気のせいにしておこう。
◇◆◇
「やっぱ、反則くんって面白いね。副会長と仲いいみたいだけど、会長のことたまに切なそうに見詰めるよね。どっちが好きなんだろう」
食堂の特別二階席。
したからは見えないその席で、僕はいつものメンバーで食事をしていた。
「連理(れんり)ッ」
嗜めるように僕の名前を呼んだのは、斗佳。学園のシステムによる変装後は双剣と呼ばれる幼馴染。
「何?ヤキモチ?」
反則くん含む三人に?それとも、反則くんのみに?って聞かなかっただけ、今日の僕は親切。いつもなら、変装後の名前の通り追求をしている。
けれど、返した言葉が斗佳にとって気に入るものじゃなかったらしい。
「そういう問題じゃない」
彼はそういってチーズケーキを食べる。
斗佳の食後のデザートは必ずチーズケーキだ。
斗佳はすぐそうやってはぐらかす。
だから、一向にいい方向に転換しないんだよ。と、僕は言わない。
さすがにソレをいったら、斗佳が追い込まれてしまって可哀想かなと思うからだ。
まぁ、言ってやるのが親切、なのかもしれないけれどね。
「そこでやめんなら最初っから聞かなけりゃいいのに」
ぽつっと呟いたのは目の前に立ちふさがるものはなんでも破壊する…破砕と呼ばれている将牙だ。三年生になったけれど、新歓には参加したことないだろうといわれて、参加することになったひとりだ。
その隣で溜息を吐いて将牙の頭を軽く殴ったのは、その双子の兄で舞師と呼ばれる伊螺だった。
「将牙も余計なことは言わない」
伊螺は基本的にいい人だ。
だから、こんな厄介なメンバーに囲まれても世話を焼くし、緩衝材になってしまう。
僕はそんな伊螺のことを尊敬しているがマネしようとは到底思わない。
ああいうのは幸が薄くてかわいそうだな。とは思う。
僕は普段は大人しくしている。
大人しくしているが故に、話し出すといい性格だとか、黒いだといか言われてしまう。
僕は只、したいようにしているだけなんだけどね。
「食べたら、会長のとこと当たるんでしょう?がんばってね」
「ふん。猟奇ごときに負ける俺じゃない」
「良平馬鹿にすんなよ!お前なんかあっという間だ」
「…なんだと…!」
「もう、寄ると触るとなんだから、お前ら、近くに寄るな」
なんだかんだというけれど。
でも、僕はこのメンバーが気に入っている。
もちろん、今下で騒いでる連中も。
だから、暫くはこのままがいいなぁと、なんとなく思った。どうせ、また、無理難題ふっかけてくるだろうけどね、この学園は。


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