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七夕のリクエストの、主人と僕の何かです。
どこに置くものか悩んでこちらに。
主役はもう一人の僕です。
では本文はつづきから。
朝昼晩の三食に間食を交える、人間の食事というものは偉大だと思う。
そう、先輩が作るご飯はいつでもおいしい。
俺は竜と魔女の間に生まれた子であるのだが、母は一応、元は人間だったくせに食事は実験の一環だった。栄養があるのか薬剤なのか、よくわからない食事が卓に並ぶ。父親は竜であったから、食事という名の実験に付き合うこともない。俺は一匹と一人の子であったから、二種類の食事にありついたわけだ。おかげで、草も肉も食べられる。しかし、母の薬剤くさい料理より、父と一緒に食べる肉の方がよかった。
だから、味覚は父に似たのだろうと思っていたのだ。
それは違う。
「先輩、今日のご飯はなんですか」
「パスタ」
「パスタ! 豚の燻製のやつですか?」
「残念ながら、牛のミンチのトマトソースだ」
パスタは豚の燻製のクリームとチーズのものが一番好きだ。しかし、先輩の作るご飯はどれもおいしい。
先輩が作るものはルーゼ様が好きな鶏の香草焼きも、俺の好物である肉団子もハンバーグもおいしいのだ。その次に好きなクリーム系……グラタンやクリームパスタ、クリームシチューも好きである。とろとろに肉を煮込んだスープも素晴らしい。口の中でほろろとほどけるお肉も本当に、よだれが出そうになる。
いつもたくさん食べたいと思う。けれど人間サイズでは限界があるし、竜の姿では物足りなさすぎる。
先輩にいわせればくだらない悩みであるそうだが、俺からすれば贅沢な悩みだ。
「それも好きです。多めにお願いしますね」
先輩は少し肩を下すと、わかっていますという顔をして姿を変える。いつもの狼姿だ。
『お前は食い意地が張っている』
「そうはいいますけど、先輩のご飯おいしいんですよ!」
『メネエルが泣くぞ』
「母さんのあれは実験ですから」
いかに自らの美貌を保つかという実用性がある実験なんだとか。食事とはそういうものだと思っていたが、おいしいご飯というものは違うと俺はここで知った。
「あー早く夕飯の時間にならないですかねぇ」
先輩が呆れたようにそっぽを向いて鼻を鳴らす。
先輩は俺のいうことにはそうして冷たい態度をとるけれど、もしこれがルーゼ様なら話は違う。
夕飯のために寝室で勉強されていたルーゼ様を呼びに行った先輩ときたら、ルーゼ様のこんな一言で目を細めて笑うのだ。
「もう夕飯か? 今日は何か楽しみだ。お前のつくるものはおいしいから」
俺の言ったこととどう違うか聞きたいくらいである。
ちょっと量の話とか、子供みたいにはしゃいだとかそのくらいじゃないか。
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