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風紀委員長がただひたすら攻を好き好きする話。
本文はつづきからどうぞ
ハルに告白し、付き合いはじめてしばらくたったある日、俺は悩んでいた。
俺は浮かれすぎていて、ハルが魔法を使えるということに気付いていなかった。
だから、魔法世界に帰らねばならない理由をどう説明したものか悩んでいた。
魔法はハルが住んでいる世界では、ありえないことだ。
火だの水だの、何もないところから生み出しているわけではないのだが、そう見えるのは、おかしいことであるらしい。
こちらからすれば、ちゃんとした理論があり、何もないわけではなく、なるようにして魔法を使っているのだから、そう考えることのほうがおかしい。
むしろ魔法を知らない人間こそおかしな存在なのだ。だから、蛮族の世界だなどと言われてしまっている。
俺はハルのことを一度も蛮族だと思ったことはないが、ハルに出会うまで、ハルの住む世界は下等だと思っていた。
「ハル」
大体、その頃の俺はハルに夢中すぎて、付き合っていながらハルの本名すら知らなかったのだから、そんな魔法がどうとか言えるわけがなかった。
しかし、俺は魔法の世界の人間で、しかも魔法学校で風紀委員なんかやっていたら、ひとよりも早く学校に行かなければならなかったし、貴族で特A級の魔法使いとなると、それなりに魔法世界のあれやこれやに使われなければならない。
だが、できることなら、ハルと同じ立場に生まれたかったとさえ思っていた。
「レイ?どうかしたか?」
その時の俺は名前も偽っていて、ハルがハルとしか名乗っていないのをいいことに、レイとだけ名乗っていた。
こうして振り替えると、ハルは俺に何も聞かなかったし、付き合ってはいたけれど、とくに俺に興味があるようにも見えなかった。
俺はハルしか見ていなかったから、ハルが俺を見て笑い、俺の相手をしていてくれればそれでよかった。
……今も、占有する時間こそ増えろと思っているが、それでいいと思っている。
ハル本人がいれば、肩書きも人種も、生きる世界が違うのもどうでもいいのだ。
そこまでベタぼれなのだから、肉体関係の有無もどうでもよかったというか、ハルが俺の前にいればいいので、そこまで思い至らなかったのだが、悩みはじめると誤魔化すために、肉体的なあれこれを使いはじめた。
はじめはキスで、最後はセックスだ。
キスするたびにもどかしく思い、セックスをするたびに泣きたくなる。
誤魔化している、場合ではないのに。
そうこうしている間に時間はすぎた。
「……実家の方に帰らなきゃなんねぇから、しばらく会えない」
なんとか魔法以外の理由を用意した。
「実家こっちじゃねぇのか」
ハルがいうこっちというのは、ハルと毎回あっているクラブに近い場所という意味ではなく、ハルが住んでいる世界のことを指していたのだが、そんなことはわかっていない俺はただぎこちなく頷いた。
「結構遠くてな」
「そりゃあ……遠いだろうな」
実家に帰るだけで会えないとなると、かなりの距離だと思ってくれたと思っていた。
実際のところ生きている次元が違うのだから、確かに遠い。
「次、会えんの、わかんねぇけど」
ハルとは付き合っていたし、肉体の関係まであるのだから、すぐ切れてしまえる縁とは思いたくなかった。
しかしながら、いつ会えるか分からないような恋人と、ずっと付き合っていられるというほどのものはないと確信していた。
俺はただただハルが好きだったし、このまま切れるのも嫌だったのだが、ハルはそうでもなかったと思う。
「連絡する」
連絡するし必ずまたすぐに会いに行くから別れないでほしいとは言えなかった。
今更、プライドが俺の邪魔をした。
「わかった。いつでも連絡してくれ」
ハルは自ら連絡しないと言外に告げていたが、俺は待っててくれる事実に少し浮かれていた。
「おう」
この時のことを思うと、ハルが今、俺の恋人であるのはもはや奇跡だった。
ハルとはずっと連絡をとっていたが、次に会えたのは冬休み。
ハルは、この時すでに、俺とは自然消滅して友人くらいになったんだろうなと思っていたそうだ。
俺がまわりとはレベルが違う美形だったというのも要因し、あんな出来よさそうな奴が俺のことを好きとか、明らかおかしいとも思っていてくれたらしい。
俺とは違い、魔力の相性がいいことにも気が付いていたというのだから、一時の気の迷いなんじゃないかとも思っていたそうだ。
冬休みにハルに会って、やはりハルが好きだった俺は、冬休みも会える時間はハルを独占した。
ハルは男にも女にももてた。容姿もいいほうであるし、なにより頼りがいがある。そのくせ、人との距離のとり方が絶妙なのだ。それを人は解ってくれている、助けてくれる、かっこいいと安易に考えた。
かくいう俺も、ハルにはベタぼれなわけだから、そんな誉め言葉を素直に受け取り、少し自慢に思ってもいた。
その影で、毎日毎日、ハルをつなぎとめることを考えた。
今まで俺があると思っていた俺の魅力は、ハルの前ではたいした魅力に思えなかったからだ。
魔法がうまく使えることは、魔法なんて関係のない世界ではむしろマイナスであったりするし、顔がいいのだってある一定以上いくと親しみがもてない上に、俺の場合は怖い顔に類する。がたいがいいのはハル相手にプラスになるようなことではないし、クールであるとか粗雑であるとか可愛げのない性格はもとより人に好かれるにはある一定の条件が必要である。俺はそれを満たしていたが、ハルにはその条件を満たしている状態で会ったことがない。そうなると俺はいけすかない乱暴なやつだ。
頭が良くとも運動ができても、ハルの知るところではなければ意味がない。
こうなると俺の魅力は、カスだ。不必要な素養にしかならない。
プライドが無駄に高いこともあり、格好悪いこともしたくなかった。
ハルは本当に遠かった。
「ハル、また、実家の方にかえるんだが……」
「大変だな、遠いと。今度は春休みか?」
今度を聞かれたときどんなに嬉しかったことか。
ハルは冬休みにこの調子なのだから、春休みも来るようなことがあればこうなんだろうなと思ったらしい。
俺がハルをお気に入りであるとは思ってくれていたようだが、どうしても俺がハルを好きだとは思えなかったそうで、いつか飽きるんだろうなと傍観していたようだ。
そんなことが一年ほど続いて、また夏になったとき、漸くハルは俺の気まぐれじゃないのではないかと疑い、こう聞いた。
「お前、本当に俺のこと好きなのか?」
ひどい話だ。
おかげで千年の恋も冷めてしまったが、ハルを嫌いになれるわけがなく、しかも朝から晩までハルであるのは変わりない。千年だとか気の遠くなる話ではなく、近くなっただけで、ハルが好きだということは変えようがなかった。
その後、俺にハルが魔法使いであることを説明してくれ、ようやく俺は相性のことに気がついたのだ。
騙されたとか力が引き合ったからということを頭に入れたところで、ハル以上、ハル以外、これほど好きになることなどないと断言できたし、今でもできる。
俺はハル自身に夢中すぎて、ハルのことをよく知らなかったが、ハルは俺のことをよく知っていたらしい。俺が魔法の世界の貴族であるとか、それ以外の情報も知っていた。
だからこそ、遊びだと思っていたらしい。
こんなに好きで好きで仕方がないのにとその日、身体で想いを伝えてみたら、ハルがその日から俺のことを絶倫野郎だとからかうようになった。
淫乱よりはマシだと思う。
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