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のるかそるかの続きというか。
二百余年あとの話。
もう、お前ら、さっさとつきあっちゃえよ。
軍人×占い師
微妙な設定まで考えたけど、この生かされないっぷり。
本文は続きからどうぞ
二百余年あとの話。
もう、お前ら、さっさとつきあっちゃえよ。
軍人×占い師
微妙な設定まで考えたけど、この生かされないっぷり。
本文は続きからどうぞ
まるで何も知らない姫君のように、十年二十年、百年二百年と、ずっと一人でいる必要などなかったし、待っている必要もなかった。
約束をしているわけではない。冗談のような言葉で帰ってくるといったのを、勝手に待っていただけだ。
だから、これは、八つ当たりだ。
「優秀すぎる魔法使い……お前は占い師になったんだっけ?とにかく、それはふけないし、死なないって聞いたけど、マジだったんだな」
久しぶりに会っての第一声がそれだったのも俺が八つ当たりするに足るものだった。
蹴り倒し、馬乗りになり、殴る代わりに噛み付いて、あれよあれよと、やらせようとしたら、溶けて消えた。
八つ当たりもできないとは、あんまりだ。
「……いや、ちょっと久しぶりの再会にしちゃあ……なんていうか、激しすぎ」
消えた体はもやのようになって、俺と離れた場所に人の形を作りながら、何処からともなく言葉を発した。
「お前が悪い」
ロウ・リグ・ジェレイド、軍に所属した際に家との関係を断ち切っているため、ジェレイドという家名はもう持っていないので、ロウ・リグ、もしくはロウという名前だけしか持って居ないかもしれない男は、一切悪くない。
これは、八つ当たりなのだ。
「お前こそ、よく生きていたな。あれから、十数年くらい後に、北で死んだと聞いていたのに」
「死んだぞ?一回死ななきゃこうはなんねぇよ」
俺の知る限りでは、リグはただの人間で、家が金を持っているというだけの普通の、いや、少しだけ憎らしい男だった。
こんな溶ける体をもっていたり、何百年も生きたりはしない。
「お前らの魔道に堕ちるってやつと似たようなもんだよ。軍の人間は必ず儀式を受けて、人じゃないものになるか、人のまま死ぬか。俺は一回人として死んだんだけど、心残りがあったらしくて、化けて出ちゃった」
魔道のことを知っていて、あの第一声なのだから、俺でなくても腹が立とうというものだ。
「何が化けてでちゃっただ。可愛くいえば許されると思ってるだろ」
解らないふりをして、首を傾げる仕草を見ていると、リグは何一つ変わらない、憎らしい男でしかないように思えた。
初めて会ったのは、十五のとき。
俺は、リグと婚約した。
金によって結ばれた関係であったが、リグは俺に悪いようにはしなかった。二年ほど穏やかで、少し楽しくもある生活を送ったが、俺はその頃他の奴に片想いをしていて、その婚約を邪魔に思っていた。
ある日、リグが俺と婚約を破棄するために軍に入った。
それ以来、俺はリグと会っていない。
「まぁー、俺がここにいるのはこの際、よかったよかったということにしておいて。今はどうなんだ?片想いの君は一緒に魔道に堕ちてくれなかったのか?それとも俺の知らない間に貞操感かわった?」
貞操感は、確かに占い師になって変わった。しかし、それは、悪い方向ではない。
「お前がここにいるのは、確かにいいことだが、腑に落ちない。今は、ご覧の通り崇め奉られている。あいつは魔道に堕ちられなかったし、一緒になんとかしてくれるほどの仲にもなれなかったし、今はこんなな上に、神聖さが失われることを恐れられて独り身だ」
「神聖さというと、未開通か。いや、でも、別に未開通でも」
「童貞もだ」
俺が婚約解消をした半月後、俺はもう一度婚約したが、その婚約が嫌ですぐさま占い師になった。
俺はすぐ有名な占い師になると、神聖さを保たないと占いが外れるようになるとか、馬鹿らしい理由をつけて婚約を解消させた。
「二百年あまりの童貞未開通が、昔の婚約者の服をはぐのは、なんかの確認か?」
「腹がたって」
「いや、腹がたった位でできることじゃねぇだろ」
そう、確かにそれだけでは出来ないだろう。
しかし、俺の腹立ちも二百年ほどのものなのだ。
リグと婚約を解消した後、俺はリグに言われたことを実行するためにも、片想いをしていた奴に告白をする予定だった。
そのときには既に、そいつには婚約者がいて、このまま仲良く結婚するだろうといわれていた。当たり前のように振られてすっきりする予定だったのだ。
だが、俺は、告白できなかった。
振られることが嫌だったからというのも少しはあったかもしれないが、それ以上に、言おうとするたびにリグの顔がちらつくからだ。
穏やかで、少し幸せな二年は、俺の執念のような片想いすら、忘れさせてくれていたのかもしれない。今になっても、このときの気持ちはよく解らない。
ただ、あれだけしつこく片想いしていたのにも関わらず、気がつけば俺の気持ちは風化していた。
その代わりにリグのことを考えることが多くなった。
すぐに帰ってくるだろうと、そのときまでにそれをなんとかしてやろうと思っている間に、中途半端な気持ちのまま、リグが死んだと聞いた。
「できないこともない」
「それはそれは、好かれたもので」
呆然として、しばらく何も手につかなかった。
よく覚えているし、こうしてリグを目の前にしても震えが止まらない。
「悪いか」
開き直ると、リグがしばらく俺を見つめたあと、顔を片手で覆ってゆっくり、俺から顔を背けた。
「いや、ちょっと待て。それは、ちょっと待て」
「これ以上待たされてたまるか」
耳まで赤くなったリグは、俺の声を聞くや否や、再び空気に溶けていなくなった。
「逃げやがった」
リグが居なくなったばっかりに、極めてしまった神聖なる占い師様の能力と権力を存分にふるって、なんとしてもこちらに引きずり出してやろう。
俺が意欲的になったというのに、これがまた、リグときたら、地位や名誉を得て帰ってくるどころか、戸籍まで消えてしまって、現在存在していないことになっていたのだから、腹立たしいことこの上ない。
存在していないことには、俺の権力も振るいにくい。
やはり、憎らしい男である。
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