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北の塔長は実はこんな人。
意外と軽い人。
塔長なんて柄じゃない北の塔長×告白をさせてもらいたい東の塔長
本文は続きからどうぞ。
意外と軽い人。
塔長なんて柄じゃない北の塔長×告白をさせてもらいたい東の塔長
本文は続きからどうぞ。
たとえて言うなら、可愛い子はふわふわの砂糖菓子。甘くて柔らかくて、溶けて消える。
それに比べると、こちらは食べ物ですらない。
甘くないどころか、味もしなさそうな、それでいて塩辛いという感覚を味わうような、そんなものだ。
塩辛いものよりは甘いものが好きだったのだが、どうも、こうして下から見上げてくると、可愛いなとか愛おしいなとか思ってしまって、そうか、だから好きなのかと感心する毎日で、だから、振られるとは思ってなかったわけである。
「別れよう」
「はあ?」
「エイリ、卒業するし」
「うん?」
「別れよう」
切り出されて最初から最後まで理解の及ばなかった俺は、間抜けな顔して間抜けな声で首を傾げるしかなかったわけで、愛しい恋人は次の日には俺の傍にいなかった。
もしかしたら、何か特別に理由があったのかもしれないし、俺の笑顔が気に入らなかったのかもしれないというかむしろ、俺を好きだといってくれたことが軌跡のような気がしてくる。誰もが羨むような恋人だったから、いい思いをしたと思い込むこともできたが、振り返らずともちょっと悲しく寂しく、突然すぎてわけもわからず、卒業して、高校に進学してようやく思うわけだ。
振られた。
好きだった。
だが、時は既に遅い。
きっと、今は新しい男を見つけている。
そういう奴が恋人だったのだ。
簡単に言うと、俺の見る目がなかったということになる。
高校に入学してそろそろ最後の年かなというときになって、思い返して、ふと、ぼんやりそんなことを思った。
遅すぎると思う。しかし、こうも思うのだ。
もう一度出会わなければ、美しい青春の一頁だった。
「転校生見た?」
「見た見た、超美人可愛い!」
男ばかりの異次元で、たとえ同性であれ、美しいのは罪であるらしい。
俺の美しい青春の一頁でなければ、その美しさは罪だなと頷いてやれたものを、美しい青春の一頁は、こうして思い返すと闇歴史と良く似ていて、大変苦い思いが蘇った。
そいつ、男好きだから、ちょっと粉かけたらなびくけどポイ捨てだと言わないだけ親切だ。
俺とのお付き合いも二月ほどで終わったし、そのあとも順風満帆だと風の噂で聞いていた。
「あ、東の方だ」
周りが転校生を観察している中、俺は誰かの呟きに反応し、腰を上げる。
「エイリ」
その場を離れようとする俺を止めるために発されただろう声で、どれだけの人間が腰を抜かしたことか。あまつさえ、股間を隠したことか。想像に容易い。
容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群、魔力も高ければ、声も素晴らしい。
「いつになったら、俺の告白を聞いてくれるんだ?」
「いつになったら、俺の告白を聞いてくれるんだ?」
心地よい低音が、眠気を誘う。
俺もそこそこ抵抗力があるせいで、いつもいつも、他の連中の思春期をかき回す東の塔の長の声と戦わなければならない。
抵抗力がなければ、東の塔の長が俺の意志を無視すれば、俺だって他の連中と同じように腰を抜かして思春期を隠さねばならない状況だったに違いないのだ。
「シグレ。欲求不満にはいくらでも付き合ってやるが、お前の告白なんて聞いた日には、そうでなくてもよしとか答えそうだろう」
不満そうな顔をする東の塔の長、シグレに苦笑する。
「俺は力でものを言わせたいわけではないが、それでも構わない」
何をそんなに気に入っていただけたのか解らないが、俺は闇歴史がチラついて、軽くいいということができない。
「俺が構う」
シグレの肩を叩いて通り過ぎると、シグレがため息をついた。
「今日も失敗か」
「今日も、ため息ものだったよね、北の方!」
「東の方も本当素敵……」
「ああ、あんな方々と一度は話してみたい……」
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