書きなぐり トマトマト 忍者ブログ

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タイトルに深い意味はありません。

お家は8の着く職業マイペース野郎×なんせ俺、神様だしなぁマイペース元会長

神様ケツ滑りダイジェスト。


続きは本文からどうぞ









出会いというのは不思議なものだ。
一生涯一度も接点ができなさそうな、遠い世界の人間と知り合いなる。そんなことが、タイミングよく転がって来ようとは数年前まで思いもしなかったし、その一回を除くと今後一切起こりそうもないと今でも思う。
それは、3月の終わり、入学式の前、寮の非常階段から始まる。
俺は部屋の近くにある非常階段の踊り場に出て、電話をしたかった。
あいつは、非常階段をゆっくり降りていた。
俺が非常階段に出るタイミングが速くても遅くても、俺はあいつと接点を持つことなど一生なかっただろう。
俺が非常階段のドアをあけ、携帯を取り出した途端、2段ほど鉄筋の階段を叩く音がした。
その、2段を叩く音を忘れるほどのインパクトがある音と共に、一人の男がケツで滑り落ちてきたのだ。
「松谷、階段から野郎が……」
『空から落ちてきたみたいにいわないでくださいよ。まさかひょっとして天使とかいわないですよね?』
「天使が美形だってんなら、あながち間違いじゃねぇけど……悪魔の方が似合いじゃねぇかな」
落ちてきた男に手を差し出しながら、電話を続けた。
あまりのことに呆然として、手は出してみたものの、電話はそのままにしてしまったのだ。
耳元で松谷が何か言っているのを聞きながら、俺は男に声をかけた。
「……立てるか?」
男は無言で一時停止し、痛みが過ぎるのを待っていたらしく、ぎこちなくこちらを向く。
今にも悪態をつきそうな顔が、険しくなる様は、見ていて気持ちいいくらいだった。
「わりぃな、見ちまったし。忘れることはできんだけど、なんかせびった方が信用できるか?」
自分自身の面構えを熟知している俺は、わざと薄く笑って見せる。相手には面白半分のたちの悪い顔に見えただろう。
半端な優しさの手はとられることはなかった。
男は手すりに捕まると、よろよろと立ち上がる。
すぐに立ち去らなかったのは痛みからか、俺に言いたいことがあるのか。
俺は後者だと勝手に決めつけた。
「飯一食。売店だったかコンビニだったかあったろう。それで忘れる」
男は俺を睨みつけたまま、少し空いていた非常階段前のドアを閉め、落ちてきた階段を登る。
「来い」


男は、その時点で俺に名乗らなかった。
ただ、広くて明らかに俺とは違う部屋の住人だと言うことは、すぐに理解した。
寮の説明書には一切書かれていない、商品の宅配サービスがあることがその証拠だ。
男は俺に、商品一覧を渡すと、選べと言って、そろそろと一人掛けのソファに座った。きっと、まだケツが痛いのだろう。
俺は遠慮なく、カツサンドとエビクリームコロッケサンド、水を指差し頼む。すると、男は携帯を取り出しどこかに注文をした。
十分ほどで、それらはこの部屋に届けられ、俺の手元にやってきたのだ。
「よし。あんたのことは忘れた」
これで部屋に戻れれば俺は、男を入学式で知ることになるはずだった。
しかし、俺は部屋に戻れなかった。
恐ろしいほどの呼び鈴の連打と怒鳴り声を聞いてしまったからだ。
『龍神(りゅうがみ)、クソがさっさと来いっつったろうが!』
ケツも痛いだろうに、頭を痛そうに抱える姿は少し可哀想に見えた。部屋を出るタイミングを失った俺は、どうするべきか解らず首を傾げるしかない。
首を傾げて困っていた俺を、男……龍神迅一(りゅうがみじんいち)は何かを思いついたような顔で見つめてきた。
ちょうどいい奴がいるから、適当に契約しちまおう。そういう腹づもりだったらしい。
俺に手招きをしてきたものだから、素直に近づいた。
「手を貸そうとしてくれた礼に、俺の一番大事なものをくれてやろう。光栄に思え」
俺がこのとき、ジンについて知っていたのなら、飯を要求なんてしなかっただろう。
それさえなければ、いや、電話を部屋でしていれば、俺はジンと契約なんてしなかった。
後悔はそれなりにした。


そうして出会ったのが数年前になる。
最近では第三学年になった俺のそばを離れないジンを、離すべく、毎朝苦労していた。
「大学遅刻するぞ」
「あんな大学今すぐやめて、俺はお前と一緒に進学するまで、お前のペットになってやる。どうだ、素晴らしいだろう」
ジンは偉そうで、偉そうにするだけの身分がある。その癖、ものぐさだった。
適当を絵に描いたような男で、毎日毎日、ダラダラしていたいような奴である。
俺が入学した学園には校舎が二つあり、大きくわけて二つの学科があった。魔科と、普通科だ。
その二つの学科は行き来がなく、本来、生徒会しか共通していない。生徒会以外の人間は、一部の教師しか魔科の存在を知らず、魔科は秘される存在だった。
俺が偶然出会ったジンは生徒会長で、あちらでは有名な龍の一族であるらしい。
俺が出会った頃執拗に契約して欲しいと、ある生徒に迫られており、適当に逃げていたのだが、友人である風紀委員長にお前が逃げるからこちらに被害がくると怒らていたそうだ。
春休みには決めるからと適当なことを言って誤魔化していると、あっという間に新学期が迫っていたとかで、タイミングの悪い俺が苦し紛れに選ばれたらしい。
おかげで、会長の秘密の契約者と言われては探されたり、誘拐されそうになったり、フラフラした友人を持つ風紀委員長の愚痴をきいたりしたものだ。
「素晴らしかねぇよ。また留年したらどうしてくれんだよ」
「笑う」
「笑うな、お前に巻き込まれて留年してんだから」
魔科など関係ない普通科で過ごすはずであった俺は、魔科のとんでもない事件に巻き込まれては、怪我をした。
おかげで出席日数が足りず、留年している。
「あちらに転科すればよかったんだ。お前は阿良座(あらざ)の人間だし、血も濃い。転科しても問題なかっただろう」
阿良座というのは俺の母方の姓で、父と万年新婚夫婦である母は、家出同然で結婚してしまったため、縁が薄い親戚でもあった。
「俺は、あんなよくわからん勉強をするつもりはねぇ」
「結局しただろう」
「巻き込まれるたびにせざるを得ない状況に追い込まれたからだ」
「巻き込まれたって言うが、最終的にはいつも、俺の好きにさせてくれる」
呆れが勝って、好きにしろという気分なのだが、俺のため息をこよなく愛するジンは、嬉しそうに語る。
「なんだかんだ言って、結局俺のために折れるだろう」
ジンは、家柄もそうだが、容姿も良ければ、成績優秀、運動神経もよく、誰もが傅いて然るべきと言われる身分だった。
今も、ほとんどの存在がジンに頭をたれる。
だから、なんだかんだ言わずともジンに従うこと、ジンの意思に沿うことが普通なのだ。
俺が渋々折れたところで、それがジンの機嫌をよくするものではない。
あるとすれば、それは色目か、呪いだ。
「そうだな、どうでもいいから、大学いけ大学」
俺とジンの場合は、呪いである。
龍の一族との契約は、その力を分け与えられる代わりに呪いがかかるのだ。
龍の一族が都合のいいように、下僕扱いしても不満がられないように、惚れさせる。
しかし、ここで一つ問題があった。
阿良座だ。
阿良座はその世界では畏怖される存在だった。契約したものを隷属、使役することに長けた恐るべき一族だったのだ。
龍神の血と阿良座の血が争い、おかしな形で呪いを発動させた。
それで、ジンは契約完了の瞬間から俺にトキメキを覚え、俺はどう抵抗してもジンには逆らえない気分になるという微妙な呪いを得たのだ。
これが、数年続いてしまうと恋とは何なのかも解らなくなってしまう。
恋なのか、呪いなのか。
契約を解いて確かめたい。だが、ジンがそれを許してくれなかった。
ごねられると最後には渋々諦める。それが呪い故かジンに甘いからなのか、わからない。悪循環だ。
俺は人相を犠牲にし、毎朝サボって俺の背中に張り付こうとするジンを剥がしては、龍になって大学にいくチートも裸足で逃げる姿を見送る。
しかし、そんな俺にもチャンスは巡ってきた。
留年のチャンスとジンとの呪いを解く、ダブルチャンスだ。
留年のほうはご遠慮願いたい。





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