書きなぐり mine 忍者ブログ

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俺の魔法使いと言わせたいがために、遠いところまで旅立ってしまった話です。

魔法使い×会長

なんですが、このあとから本編にはいる予定だったので、

魔法使い×王

になります。

本文は続きからどうぞ









「先生!ラーグリアス様が来てるって本当ですか!」
俺はロノを見上げ、ロノにしつこくからんでいた。
ロノは俺をようやくはがし、長椅子に押さえつけ、なおも事に及ぼうとする俺に抵抗していた。
「ら、ラーグリアス様から離れろ!この下郎め……っ!」
俺は是非ともロノと、子供には見せられないいけないことをしたかった。しかし、その見せてはいけない子供がやって来て、ロノを俺から剥がそうとするのだ。俺はよそ行きの表情で、助かったような風を装わなければならない。
「……ありがとう、シオウ。しかし、師を下郎扱いするのはどうなんだ?」
いけないことを教えられない子供であるシオウは、顔を赤くし、背を伸ばした。
「ラーグリアス様を襲う不貞の輩には下郎で十分です!」
小さな拳を握ってまでの力説に、俺はシオウの赤毛に手を伸ばした。
「そうか。小さな騎士よ、ありがとう」
嬉しそうに零れんばかりに笑むシオウの頭を撫でる。俺から剥がされ、不貞の輩にまでされてしまったロノは、あくびを噛み殺し、何処かよそに視線を向けていた。
その先にいるのは、俺が新しくつけられた護衛官である。
護衛官はロノの視線に刺され、狼狽えているようだ。見つかるとは思っていなかったらしい。
「へへ……それにしても、ラーグリアス様、今日は何の用で?」
「ちょっとロノウェの様子を見に」
「えー……」
ロノは俺の後輩にして、俺の魔法使いで、俺の元騎士で元護衛官だ。俺を守り、足を怪我してからは、俺がお願いをして護衛官から退いてもらった。
「先生は確かに強いですけど、ラーグリアス様を守れるほどとは思いませんし、二つ名も持ってませんし、ラーグリアス様が気をかけるような素晴らしい点もありませんし」
ロノ……ロノウェ・ジェリスは、護衛官だった時代に俺の命を三度救い、学生時代に一度救っている。ロノはいつも目立った活躍をせず俺のワガママを聞いてくれた。最高の護衛官で、恋人だ。
しかし、三度目の時に怪我を負った。少し後遺症が残るだけで済んだことが不思議なくらいの怪我だ。俺はロノに最も信頼を置いていたが、それ以上に愛しているロノを失うことが嫌でワガママを言った。
以来、ロノは護衛官を退く代わりに、他の護衛官を数人つけるという条件で、子供たちに先生と呼ばれる日々を送っている。
今でも、一日の半分は憑かれたように騎士団で教導を受けているらしい。
「元護衛官だから、気になるのは仕方ないかもしれませんけど、階段踏み外して退官だなんて」
確かに、説明を省略すればシオウのいう通りかもしれない。
ロノは、王位継承の儀を行う塔の階段の一番上から突き落とされた俺を助けるために身を呈した。塔には魔法を封じる力がある。魔法は使えない。手すりすらなく、塔の壁に突き刺さったような階段から突き落とされてしまったら、悪くすれば転落死だ。
ロノは俺に手を伸ばし、俺の身体を受け止め、壁に手を当て止めようとした。しかし、俺の勢いは止まらず、ロノと一緒に階段の外側へと落ちたのだ。
剣をつきたて、擦れて血にまみれた右手で俺を抱えたまま、ロノは潔く飛び降りた。そのままでいても落ちてしまうのは時間の問題だったからだ。
足を潰してもうまく足から着地しようと体制を整えてからの落下だった。
見事俺はロノという緩衝材のおかげで無傷で助かり、ロノは足を形作る様々なものを壊し、血だまりを作った。
ロノが出血多量で死んでしまうという可能性を考えることより、怒りが勝った。俺は怒りのまま封じられているはずの魔法で塔を破壊し、崩れる塔の瓦礫から、またロノは俺を守ってくれた。
ロノの結界の中、ロノの血を止め魔法を使いながら、己の愚かさを知った。
ロノは魔法を使ったせいでさらに血を失い、俺を庇うようにだいたまま体温をもなくそうとしていた。
「ラーグリアス様……?」
思い出すだけで、血の気が引く。体温は低下し、心臓の音が鈍くなる気さえする。
「なんでもない」
顔色が悪いに違いない。シオウは心配そうな顔で、俺の近くでおろおろする。
「シオウ、ラーグリアス様に温かい飲み物を」
落ち着かないシオウに、調子の戻らない俺のために、ロノが口を開く。
シオウは、素直に返事をし、急いで部屋から出て行った。
「……できれば、護衛官の方も退出願いたいくらいだが、今の俺じゃあんたは守り切らないだろ」
俺を引き寄せ、来たときとは違い、背中に腕まで回してくれる。俺が落ち着くまで背を撫でる手は、いつも通り、温かい。
「そんなことはねぇんじゃねぇーの。いつも、助けてくれるだろ」
俺はロノの背中に腕を回し、確かめる。
ロノが温かい。そばにいる。
「なぁ、俺の魔法使い」
俺の言葉に、ロノがかすかに身体を震わせた。笑ったのだろう。
「……そうだな、意地でも守るよ、我が君」


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