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急に打ち出して、着地点がみえぬwww
といいながら、書きなぐりにつっこみます。
軍人×占い師
とかになるんだろうけど、この時点でこの職業はほぼ関係ない。
本文はつづきからどうぞ。
それを知ったとき、俺は、幸運だと思った。
俺の好きな奴は、俺ではなく違う人が好きで、あちらからすれば、不運なことだ。誰もが可愛そうに、あんなよく知りもしない男と一緒に居なければならないなんてと慰めたことだろう。
あちらからすれば、俺のことはよく知らない男であったが、俺からすれば、よく知った奴だった。
俺はそんな可愛そうなやつと、婚約をした。
俺はそんな可愛そうなやつと、婚約をした。
国の決めた結婚という制度は、男が女より極端に多い、この国の『女を取り合うくらいなら、もうお前ら結婚しとけよ』という投げやりな政策だった。
女も男も15になると、婚約者が決まり、18になると結婚をする。
投げやりに決めた政策であるが、生涯の相手を選ぶとなると真剣だ。15のときに決まる婚約者は選びに選び抜かれ、更に三年間の猶予期間に相性をはかり、婚約者を変える事だってできる。
大抵、15のときに決まる婚約者はそのとき付き合っている恋人であり、居ない場合は慎重に相性が良さそうな人間が選ばれた。
それでも駄目なものは駄目である。だからこその三年の猶予だ。
その三年間で婚約者を決め、18には結婚をするのだが、20までは離縁も簡単で、選びなおしの期間として25までは自由に結婚相手を決められる。
ここまでくると、もう、婚約者というより、恋人といってもいい。国の政策でお見合いをさせられるのが15というだけで、25までは何の強制力もない。
しかし、15までの期間とそれから18になるまでの期間はこの国の人間にとって、とても特別な期間だ。
国に決められる運命は、身辺調査からはじまり、魔法を使い、さらにそこから占いで見つけるという、運任せにしか思えない方法で選出される。
幼い頃から、いかにそれが特別で運命的か教えられてきた人間にとっては、その15までは夢を見る期間であるし、18までは運命の相手とめくるめく期間であるのだ。あとの期間は夢も何も、現実を見ての再スタートのようなものなのだから、大事ではあるがそう特別な期間ではない。
その15の時。
俺、ロウ・リグ・ジェレイドは、運命の相手としてクルズ・セーファ・ネスタとお見合いをした。
俺は金持ちの息子で、セーファは貧乏だが特別な子供だった。
だから、俺とセーファのお見合いは、魔法や占いという手法を使って選ばれたのではなく、俺の父が金で買い取った、運命とは程遠いお見合いだった。
それを知っていたから、セーファは、このお見合いは最初で最後と思っていたし、それを知っていたから、俺は幸運だと思ったのだ。
金で買われた運命は、二人の意思など関係ない。
たとえ、セーファが誰か他の奴が好きでも、俺の結婚相手になるのだから、そう、俺にとって幸運でしかない。
仏頂面で挨拶されても、これ以上の進展が見込めそうになくても、穏やかな、友人くらいの関係に持ち込めば、きっと結婚してからも切ない想いはさせてしまうが、穏やかにすごせていけるはずだ。
そう思っていたし、実際、17までそうだったのだから、きっとうまくいっただろう。
でも、残すところ、一年。
セーファが未だ別の誰かを想って、それこそ、俺という邪魔な存在がいるから、余計に想いが募るのをみていると、俺は心底から悪い奴になれなくて、仕方なく、セーファに言ったのだ。
「なぁ、婚約、破棄しようか」
セーファは魔法が使え、国の重要な人間になれる人間だった。
そういう奴らは国で唯一の魔法学校に通う。そこで、奴らは奴らの運命を見つける。
その運命を、セーファはずっと見てきた。
「……無理だろ、そんなん」
「無理じゃねぇよ。俺が軍に入ればいい」
一方俺は、親が金持ってるだけの、賢くもなければ特殊な力も持っていない、ただのクソガキだ。
だからこそ、選べるものはたくさんある。
「……城にあがるんじゃないのか」
「あがる予定だった。けど、そこにこだわってたわけでもねぇし、言われるのに従ってただけだし。いいんだよ、友人としか思えねぇんだし」
城にあがるのには、本当はこだわりがあった。
両親に言われていたこともあったが、セーファが魔法を使う力を持つ限り、城に仕えることを知っていたからだ。
魔法を使う人間は、この国の憧れや畏怖を一心に受ける。彼らは、必ず城に仕えるから、彼らに近づきたいと思う人間は城に上がることを夢見る。
俺もその一人であったわけだ。
俺の場合、それが、魔法や占いをする人間ではなく、セーファ個人にむかっていたので、そう、セーファを諦めると決めたときから、城に上がることなんて意味がない。
軍に入れば、俺の身柄は親から離れ、国のものとなる。そうなると、親の意向で金で買った運命などないも同然だ。
「でも、お前の立場、悪くならないか」
「この家で?大丈夫だって、俺、いい男だし、できるし、エリートになってお前よりグレード高い……そうだな、女を嫁に迎えてむしろ、万々歳?」
「自分でいい男っていうな」
「まぁ、そんなわけだ。婚約解消したら、さっさと婚約きめちまえよ」
ずっと、セーファが好きだった。
初めて見たのは魔法学校の入試のときだった。
魔法使いや占い師は憧れの対象であるから、なりたい人間はこの国にたくさん居る。
特に魔法学校に入れる年頃の子供は、魔法学校の試験をこぞって受けにいく。
俺はやはり両親に言われるまま、魔法学校の試験を受けに行ったのだが、そこで見たセーファに一目ぼれをしたのだ。
残念なことに、俺には魔法の才能はなく、試験には落ち、現在通っている学校で、たまに見かける魔法使いのたまごたちを眺める日々を送っていた。
軍に入れば、眺めることもなくなるのだろう。
軍は、国の内側ではなく外からの侵入に備えて作られた機関だ。
辺鄙なところに送られるのが目にみえている。
それでも、エリート軍人街道にのると、国の中央に勤められるようになるのだ。
これまた残念ながら、そのような実力を発揮できるとは思わないし、発揮したいとも思わない。
「そういうわけだから、俺がまた、こっち帰ってくるまで元気でな」
こうやって考えると、片や国中にあこがれられる存在。片や金で縁を買うしかない、しかも親の金で買うしかない存在。まるでセーファに見合わず、手が届くような人間じゃない。
そんなことは幸運が転がってきたときから、気にした覚えがなかったが、それも理由に付け加え、セーファを逃した。
「お別れの挨拶には気が早ぇよ」
「いや、俺、今日、入隊してきたし」
「……おまえ、それ、俺に聞くことなく解消だって言えばいいだろう」
「ほら、俺ほどのいい男、もったいねぇだろ。一応、聞いてやるのが筋ってやつだ」
「だから、自分で言うなよ」
そうして俺は、25すぎても結婚出来ぬまま、辺鄙な場所で、爺さんや婆さんたちとひよって茶を飲む生活を手に入れた。
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