書きなぐり 主人は僕に頭があがらない5 忍者ブログ

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はやいもので、5です。
そろそろ他のもやらなきゃなぁと思いつつ。


僕×会長


展開というか、立ち直りが早い会長。


本文は続きからどうぞ






学園で起こっている事柄は一つではない。
常に細かな何かしらがあり、それがいずれ大きくなったり、消えてしまったりする。
その大きくなっている事柄の一つが、転校生であり、かつ、すぐさま消えるだろうことも転校生だ。
転校生は派手に学園をかき回している。
それは、学園に合わない転校生の流儀であったり、排他的な学園への挑戦であったりした。
けれどそれは、大きく見えて中身がないできごとだ。
苛立つし、面倒ではあるが、ただの空騒ぎである。
この空騒ぎはあまりに唐突で、人の反感を買った。表面があまりにも大きすぎ、また、ある意味タイミングもよすぎる。
俺が倒れたあと、実家に呼び戻され、戻って来た学園に今までとは違う何かを感じた。
俺は、空騒ぎの表面上の大きさと苛立ち故に、この転校生が何をしたいかが見えていなかったように思う。
こうして学園に戻ってきて、違和感を疑問にした今でも、表面上転校生が何をしたいかは解らない。解らないからこそ、その中身のなさに、首を傾げた。
転校生の空騒ぎは、大きすぎた。だから、その大きな事柄に隠れて進行する小さな何かが、本当の中身だと気がつけなかった。
「クソジジイにシェスをとられてもしかたねぇな」
自分で言って自分でへこんだ。
父がシェスをはべらせる姿は、帰宅時に何度か見せ付けられたが、アレが毎日続いた挙句、俺の元にシェスが戻ってきてくれないと思うと、堪えるなんてものではない。
しかも、これ見よがしにシェスを人の姿ではべらせるから、俺にはあの姿でしか傍にいてもらえないと言われているようで腹がたつ。
アロウズいわく、シェスは人間の姿になる必要がないと感じているときは、あの狼姿なのだという。
それでも、父がお願いしたら、人の姿なるのかと思って、腹立たしい。俺がお願いしてもなってくれるのかとシェスを見つめる時間も増えるというものだ。
やたらと苛立ち、そしてシェスを見つめては、俺は何をやっているんだと思い、たまにあった目が柔らかい色で思わず照れてしまったりと、本当に、シェスを相手に何をやっているのだろう。
これでは、まるで恋だ。
そこにたどり着くと、俺はいつも堂々巡りを繰り返してしまう。
シェスは人間ではない。人の形すらしていない。
雄であるという事実は、この人間ではないという事実を前に些細なことのように思う。
人の形であったのなら、まさか、男だろうと思うことも出来たのだが、同じ形ではないという事実があまりに重たい。
シェスが人の形をとってから芽生えたものが、恋だったとしても、あまりにも俺にはないことだった。
これが恋であるわけがない。
否定をするたび、シェスに前と同じように接することができないことに説明を求めた。
そして、同じ答えにたどり着く。
最近では、あまり考えたくないばかりに余計に生徒会長という職務に熱心だ。
おかげさまで、転校生の違和感に隠れていた小さな事柄もあたりをつけることができそうである。
しかし何をしていても、最終的にシェスへと戻るのだから性質が悪い。
それは思わずため息もついてしまう。
「重たいねぇ……恋わずらい?」
「るせぇ。てめぇと一緒にすんな」
声をかけてきた会計のミスティに悪態をつき、舌打ちをする。
恋煩いではない。違うと思いたい。きっと違う。
再びいつもの繰り返しだ。
「当たんないでくれる?俺だって好きで、恋なんかしてない」
好きにならなければ恋にならないように思うが、何か言いえて妙だ。
ミスティが、好きな奴から離れるために生徒会に入ったことを知っているだけに納得ができる。
「わりぃ」
一言だけ謝って、俺はもう一度ため息をつく。
好きで恋をするのではなく、恋が事故だといのなら俺のシェスへの感情がまさにそれのような気がしてならない。
否定したいがしきれない。
ならば、逆に、俺の感情が恋だとすればどこに違和感があるか探してみればいい。
探して思う。
「……やっぱ、恋かもしれねぇ」
違和感がほとんどない。
俺が種族の違いに対して壁を感じなければ、すぐにでも認めてしまっただろう。
それほど、俺はシェスが好きだ。
シェスに恋人ができた場合まで考えて、何もないというのに誤魔化しようがないくらい腹の底から嫉妬してしまっただなどと、見苦しいにもほどがある。
「そんなに潰れるようにいわなくても」
「俺が人間じゃなけりゃよかった……」
「何の後悔?え?会長、ちょっと大丈夫、色々」
結構薄情な会計が俺を心配するほど俺は落ち込んだ。
シェスが人間ならば、ではなく、俺が人間ではなくなることを考える時点で、取り返しがつかないくらいだったのだが、あまりに落ち込みすぎて気が付けなかった。



俺がそうしてへこんで帰ってきても、シェスは同じようにいつも通り、俺を迎えてくれる。
おかえりというように、短く吠えられ、ただいまといえば、少しおちつく。
中等部のときより、俺が部屋にかえると、どんなことがあっても俺を同じように迎えてくれるのはシェスだ。
しかし、俺を落ち着かなくさせるのも、また、シェスだ。
アロウズと仲良さそうに話していると、今、うまく接することが出来ないだけにいいなと思うと同時に、アロウズのくせにというなぞの八つ当たりまでできてしまう。
「おまえ、シェスと仲いいよな」
俺の感情をどうこうと判別する前に、俺と会計の会話を盗み聞きして、俺に何かに聞いてきて鬱陶しいアロウズを黙らせ、シェスの動向を探るべくアロウズに命令したくせに、嫉妬とは、俺も心が狭い。
「そうですね!先輩には一生ついて行きたいです!」
しかし、正直なアロウズは俺の嫉妬もなんのその、まっすぐ嬉しそうに答えてくれた。
一生とは大げさだと思うと同時に、同じ長さを歩いていけるんだなと思って、また心の狭いことを考えた。
どうして、シェスとずっと一緒にいられないのだろう。
ずっと俺の傍にいればいい。
せめて俺の生涯、ずっと隣においておけばいいではないかと思う。けれど、シェスを他人に見せるのはもったいない気もする。
自分自身の思考の鬱陶しさに舌打ちものだ。
「面倒くせぇ」
「お、おれ、わた、わたしですか……?」
「いや、今回は違う」
「今回は?」
アロウズが悲惨な顔をして問い詰めてくるのを無視して、面倒くさい自分自身を頭から消すべく、不貞寝をしようと布団の中にもぐりこんだ。
俺がどんなに布団を乱して出て行っても、帰ってきたら布団は俺がいつ入ってもいいように整えられている。シェスは素晴らしいお手伝いさんぶりを発揮している。それこそ、このまえシェスがいっていたように嫁に貰ってもいいくらいだ。
いっそのこと、このまま何事もなかったかのように、シェスを当たり前、かつ堂々と嫁に貰ってしまおうか。
甘い誘惑だ。
プロポーズらしいことはもうしてしまったのだから、このまま、好きだとかなんだとか言わないで、シェスを俺の傍に置けば、成立するようにも思う。
しかしながら、ちゃんとした意思表示は必要かもしれない。だいたい、プロポーズはしたかもしれないが、俺の意識もそれにむいていなかった上に、プロポーズをうけたシェス自体が本気にしていない。
こんなことまで悶々と考えてしまっている俺に、今更種族の違いという問題は、立ちはだからなかった。
勝手な妄想でシェスに恋人を作り上げ、嫉妬した時点で、すでに諦めのような、もう仕方ない好きだからという境地に立っていた。
何か邪な気持ちさえなければ、純愛として成り立つのではないかという気さえしている。
そう思えば、俺は早かった。
何をもじもじしている暇がある。人間の一生はそんなに長くない上に、何があるとも知れない。
「よし、思う存分撫でて補給するか」
「誰を!?」
すっかり俺に相手にされていなかったアロウズは、その晩、俺が撫でまわしてくるのではないかと戦々恐々したらしい。
緊張の面持ちで朝から部屋の隅に立っていたアロウズより、俺を起こしにきたシェスをこれでもかと抱きしめ、撫でて満足した俺に、妙に納得したと語ってくれた。
撫でている間大人しくしていたシェスは、俺が満足して我にかえると、いつもとは少し違う色を目に浮かべた。
少し不思議そうで、いつもと違った優しそうな目とか微笑ましそうなものを見る目ではなく、ほんのり嬉しそうで、シェスも寂しかったのかもしれないと思った。
思った瞬間に俺も寂しかったのだなと理解した。
重症だ。









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