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今回は最初に明言しましょう。
主人公は、会計です。
ちょっと面倒なので、詳しくいうとマニアック会長時代の会計です。
タイトルの読みは『からはら』
ここでしばらく連載?したあとに、色々の方に移そうかと思います。
主人公が会計であるため、あんまりというかほぼラブな部分はありません。
それでもいいかたは、つづきからどうぞ。
「君は、理事長候補として選ばれたんだよ」
少し悲しそうに目の前の大人が笑った。
そいつは中久逢月(なかひさあづき)といって、特殊な能力や霊能力者といわれる類の人間が集まる学園の理事長だった。
「……そ」
「そっけないね」
「……そ」
一応返事をしているのだから、まだマシだと思えと、視線を向けると、理事長は変わらぬ笑顔でこちらをみる。
「そういうわけだから、君は今日から、生徒会会計をしてもらうよ」
「どういうわけだよ」
「代々決まってるんだよ。第一候補は生徒会会計になるっていうの」
「へぇ」
俺が興味がなさすぎるせいなのか、それに見合った適当な返事をしていたせいか、理事長は少し楽しそうな顔をした。
「他にも決まっていることがあるんだけど」
「はぁ、そうですか」
「君にはたぶん、事前に連絡がいってるよね?」
俺は自宅にきた、高級感あふれているくせにやたら大きく分厚い封筒を思い出した。
この学園の決まりごとやパンフレット、入学許可証、様々なものが入っていたその封筒に、ついでみたいに入っていた、理事長候補の決まりごと。
そのうちの一つに俺は思いを馳せる。
「それで、あんたの名前は?」
「中久逢月だよ」
「それじゃない。あんたのことはきっちり恨みたいから、ちゃんと本名を教えろ」
中久逢月は代々理事長となった人間が名乗る名前だ。
名前は呪であると同時に、呪うための道具にもなる。
中久逢月は理事長というものの代名詞であり、その場に縛り付けるための名前であると同時に、他からの呪いを受けないようにするための名前だ。
「それを君に教える必要はないだろうね」
「そうかい」
俺はソファーから立ち上がると、必要なものを手に、理事長室から出ていく。
「またね、勝木くん」
「できたら二度と会いたくない」
この学園は特殊である。
男女平等が叫ばれて久しいこの現代に、未だ男尊女卑とは言わないまでも、男性を優位に見ており、女性を敬う場合は大抵、神聖さを問う一族の子息ばかりが通学している。
その女性の神聖さは、年頃の男性といて、失われる可能性がある……つまるところ、女性は処女でなくてはならないと思っている一族の子息ばかりが通っているのだから、需要により、この学園は男子校だ。
しかも、とある理由により、ひどく辺鄙な場所に学園は建っている。
遊びたい盛りの高校生や中学生を押し込めるには、ひどく適していない。
色々な欲求不満がたまれば、ストレスをぶつけられるところに欲求は向かう。
健全に屋内遊戯に向かえばよかったのだが、彼らの欲求はそこに向かわなかった。
元々男性を優位に思っている一族の子息ばかりなのだから、女性に抱く感情を男性に向けても、おかしいと思わないどころか、それが高貴な振る舞いで、嗜みであるようにすら思われている節があった。だから、それらの欲求不満は不思議なほど男遊びで発散されることとなった。
そんな考え方である人間が多いというのも特殊であるのだが、それよりなにより、この学園が建っている場所と、この学園にいる生徒や教師が特殊であった。
霊能力者、異能力者と呼ばれる人間がこの学園には集まっている。
それは大抵、旧家と呼ばれる家の人間ばかりだし、旧家の人間でなくても、能力が強い者しかいない。
それ以外の人間を、この学園は必要としていないのだ。
そして、この学園が建っているのは、能力者と呼ばれる人間を集めなければならなかった理由に直結している。
「今度、転校生が来るそうだよ」
「へーそうなの」
「興味ないんだ?」
クラスメイトの宮代野(みやしろの)が首を傾げる。
大変可愛らしく見えるその様子を、これで男なのだから詐欺だと思いつつ、俺も同じように首を傾げた。
「どうだろ」
宮代野がすれば可愛らしく見える仕草も、俺がすれば、ぼんやりしているといったふうに見えるという話だ。
「どうでもいいなら、興味あると思って話すよ」
宮代野は誰もが認める美少年であったが、少々強引な性格だった。
「なんか、急に見えるようになったとかで、すごい優秀なんだって」
この学園に転校してくる、編入してくるということは、それだけの力を有しているといわれ、注目される。
俺は高等部からこの学園にいるが、学園長候補だなんていう俺にとってはどうでもよく、ここの人間にとってはとても輝かしい名称を持って、しかも一年生ながら生徒会会計になってしまったから、注目の的だった。
おかげで、クラスメイトの宮代野が話しかけてきたのだから、ある意味役得だったのかもしれない。
宮代野は強引な性格であったが、それ以上に好き嫌いのはっきりしたやつだった。
「優秀ねぇ……大体ここに来る奴は優秀っていうお触れがあるじゃん」
「そうだけどね。なんか、噂になってるんだよね。刺激が少ないからかな」
確かに、この学園には刺激らしい刺激がない。
一応、年頃の青少年を押し込めるのだからという理由で、娯楽施設のようなものも敷地内には存在しているし、テレビだってあればインターネットだってある。
しかし、ここが彼らのすべてではない。狭い範囲に閉じ込められているという感覚も強く、また、僻地に学園が存在しているため、最新のものがすぐさま与えられるというわけでもない。
何かを待つという感覚に慣れない連中は、特に何もない日常に飽き飽きしているものだ。
「ふーん、そういうものか。ま、今度の人はちょっと特殊みたいだけどねぇ」
学園長候補という肩書きのせいか、それとも、特殊な学園の生徒会会計という立場のせいか、俺には宮代野以上の情報が与えられていた。
「あ、やっぱり知ってるんだ。教えてくれたりしないわけ?」
「来てからのお楽しみの方が楽しいでしょ」
そうはいうものの、俺も別に出し惜しんでいるわけではない。
ただ単純に面倒なのだ。
この学園に転校生がやってくるのは珍しい。
珍しいがないわけではない。
ただ、もとよりちゃんと保護されていて、突然の能力開花により混乱を極め、まともな会話ができる状態である思春期の人間が少ない。
そんな珍しい転校生は、本当に珍しい状態だった。
つい最近まで普通……というには裕福で、知らぬものはいないと言われるような企業の会長のご子息なのだが、能力だなんて関係のない人だった。
それでも、普通の男子高校生だ。
能力と関わることもない人生を歩んでいただろう。
その男子高校生が、とある化物のせいで、見えなかったものを見る目を手に入れた。
それだけで、男子高校生の世界は激変した。
「ええと」
そんなことは現象としては珍しいことであるのだが、この学園の転校生としてはそれくらいあって然るべきことだ。
だが、この転校生は一味違っていた。
「ああ……この学園を案内してくださる方ですか」
俺と同じクラスになる転校生は、見えなかったものを見る目を手に入れて、一度引きこもった。
急に化物どもが見える目を手に入れたというのだから、当然のことだ。
現実にはありえてはいけないものが、他の人には見えないものが見えてしまっているのだから。
それだけではない。
この転校生の目は、過去や未来も見えてしまう。
見たくもないものを見せられてしまう。
それは、誰もいない場所に引きこもりもする。
それから立ち直るということは並大抵のことではない。
しかも、この学園にやってきてもいいという資格も得ている。
そんな転校生は、俺と同じクラスにはいるようになっていたが、俺より一つ年上だった。
しかし、今、転校生が学園の校門近くにとめた馬力のあるバイクに乗れる年齢ではなかったはずだ。
「そう、だけど……」
転校生はヘルメットを外し、それをバイクの椅子の下に収納したあと、こちらを向いた。
それは大層な美形だった。
この学園の顔を重視している連中のアイドルになれるだろう顔の持ち主。
そして、明らかに道路交通法を違反している男。
それが、転校生の琴田信貴だった。
「早速、案内お願いします」
ゆるく笑った男前は、憎らしいほど、かっこよかった。
「え、ああ、ええ……」
「あと、この門、どうやって開けるんですか」
綺麗に丁寧な言葉を話してくれるのが、余計にこちらの緊張を誘う。
「お、押していただければ」
俺もクラスメイトになるというのに、ついつい敬語になってしまった。
「スライド式じゃねぇのか」
独り言の粗雑な言葉がいやににあっているし、できればそちらの言葉で話しかけてもらいたい。
「ありがとうございます」
やはり、ゆるく笑みを浮かべて礼を述べてくれる男は、かっこよかった。
「あ、あの、すみません、あの、緊張するんで、普通に、ふっ………つうに喋ってください」
鉄格子をになっている戸を開いて学園の敷地内に入ってきた男前は、俺の様子と言葉を見て聞いて、一瞬、ポカンとしたあと、実に楽しそうに笑ってくれた。
ああ、なんだこの人、すごくかっこいいけど普通の人だ。
安心していたら、琴田信貴はこう言った。
「普通な?クラスメイトになるやつが迎えに行くって言われてたから、それでいいんだろうが」
「あ、うん。俺はクラスメイトになる予定の、勝木亮。一応、会計とかやってます」
「知っていると思うが、琴田信貴だ」
これが、後々、会長となるシギとの出会いだった。
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