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もしかしたらタイトル違うかも。
と思いつつ。
なんだか、私が人外話に手厳しいみたいになってるんですが……
あと、これ、ストックホル……いや、いやいや。
そうではな…くない気もします。
非日常下ですしね、明らかに………
本文は続きからどうぞ!
と思いつつ。
なんだか、私が人外話に手厳しいみたいになってるんですが……
あと、これ、ストックホル……いや、いやいや。
そうではな…くない気もします。
非日常下ですしね、明らかに………
本文は続きからどうぞ!
何事もなく数日がすぎた。
俺はどこかに行きたいわけでもないため、城らしきものの中で深緑の竜と話す日々を送っている。
たまに三男のクルガがきては例の緑の人姿でじゃれついて、クリエイトという作業に戻る。
「竜は、人間が嫌いなのか?」
ここ数日で律儀な深緑の竜との会話は増えた。俺は、この律儀な竜と話しているのがわりと好きで、律儀な竜も嫌そうではないから、調子にのってゆっくり敬語をなくした。
まだ、竜から嫌がられる様子はない。
『好きか嫌いかはわかれるところだ。人間は弱いが、我らを食い物にする』
伝説とかそういうのに則れば、不老不死とかいう言葉が出そうである。
つっこんで話を聞いてみた。
「食べたら不老不死になるとか?」
『一時期それもあったらしいが、今は、普通に、高級食材、すばらしい装飾品、最高級の武具といったところだな』
淡々と説明してくれているのだが、食べられるということについて、嫌悪感はないのだろうか。
「なんで普通に話せるんだ?」
『食われること自体は、生きたままでないかぎり、何も。無駄に狩るには我らは少なすぎるし、強すぎる。このあたりは動いているかぎりは食えるものだという考えが強い。食うために狩られるなら、それも自然の摂理だ』
「じゃあ、人間も食う?」
食うとなると俺は客人という名の非常食だ。
『食う。しかし、我らは好んで人を食わない。食いでがない上に、食うと、追い回してくるからな。数が多いだけにやっかいだ。それならば食いでがあって、弱肉強食を知るやつらを食う』
俺は、この長すぎて……実は本当に異世界にきてるんじゃないかと思わされる夢の世界で、幸運を噛み締めた。
本来なら、食われるところだったのだ。
「だったら、異種族間で協力とか友情とかは……」
幸運を噛み締めながら、すっかりいい話相手になっている深緑の竜とは、その弱肉強食に従うと、俺なんか食うのが面倒だから食われてないだけみたいな扱いになる。
それは少し寂しい。
『いや。食い合わない連中もいれば、食い合っても、集団ごとに協定を結び、その集団は一種族を食わないことにしているところもある。だから、なろうと思えばなれる』
それなら、俺は勝手に、この名前も知らない深緑の竜は友達っぽいものだと思うこともできる。
『……しかし、おまえの場合は特殊だ。他の種と協力関係は結べないだろう』
「……なんで」
『人間に捨てられた人間だ。その上、この世界の人間ではない。この世界では何のしがらみもない。出会い頭に食われてしまえば、どうしようもない』
俺は、本当に幸運にもまだ、食われていない。
だから、もしかしたら、そういった関係も築けるのかもしれない。しかし、俺は、友達になりたいと思った竜に、それを否定されてしまった。
おまえは一人だから、誰も助けてくれないんだよと言われた気分である。
この竜が助けてくれたなら、出会い頭に食われるということはないだろうから。
「ああ、うん、そうだな」
早く、こんな夢、覚めてしまえばいい。
俺が竜に友達になれないといわれ、不貞腐れた日。
ようやくクリエイトとやらがおわったらしい。
「兄上兄上!人間の巣、ちゃんと作ったよ」
『巣じゃねぇ、家だ。好きならもう少し、勉強しろ』
「俺、人間の文化には興味ないし。人間って動物の姿形が好きなんだよなー」
『飼うは無理だな。遠くから眺めて満足しておけ』
不満そうに口を尖らせる緑の人は、俺にじゃれ付く割りには俺と仲良くしようとはしない。特に意志の確認とかをしたことがないのだ。
「あ、そうだ兄上。竜は人間の巣……家には入れないサイズだよ」
それは確かにそうだ。竜は人間の家に入る大きさではない。
『わかっている。家ができたなら、食料を届けるくらいしかすることがねぇし、クリエイト終わった、てめぇがやればいい』
俺に向ける言葉とは、えらく違いがある。
それも、やはり、友達ではないと言われているようでショックだ。
「やったー!人間に餌やりたかったんだ!」
『食事』
「……兄上細かいよー。だってこの人間なにもしないよー?お客様にしたって、こんなに一所にいないよふつう」
『この世界の生きものじゃねぇ上に、あまり気持ちのいい視線もくれねぇのに、外に出る気になるのか?』
「こっからでてってやるぅー!みたいな」
緑の人が言うみたいに、そうなってもおかしくはない。
しかし、俺は外からここに来ている。ここに入ったとき、明らかにここと砂漠らしき場所が異なる場所であることは感じたし、ここが広大であるけれど砂地とは違った荒れ地であることも、知っている。
スリッパで歩くには不適切であり、また、見所がある観光地には見えなかった。
「出ても死ぬだけだけど。その点、賢いね、この人間。兄上とただ話すだけだし。何もしなくても餌くるんだもん」
夢の中であるが大変なダメ人間状態だ。
何か目的でもあったなら良かったのだが、わけのわからないまま連れてこられ、食べられなかったことにほっとし、投げ捨てられなかったことにもほっとするしかやることがない。
それなりに深緑の竜と話してきてわかったが、とてもではないが、急に放り出されて一人で生きていける場所ではない。
『おまえが連れてこさせて……無責任にも程がある』
ああ、やはり、この深緑の竜は律儀だ。
俺はそう思いつつも、三男の言ったことを反芻した。
夢でもさすがに、この何もしていない状況はダメであろう。
せめて食料が少ないといわれるこの土地で、自分の食料をなんとかするべきではないか。
俺はそう思い、クルガではなく、深緑の竜に尋ねた。
「俺の食べるものはどうやって用意されているんだ?」
いつも、小さい芋の蒸したものが、塩も胡椒もなく渡されるのだが、それはいったいどこから得ているのか。それを購入している場所、もしくは採取している場所が分かれば、俺にもなんとかできる。かもしれない。
「なんで兄上にきくかなぁ……俺にはわかんないけどさ」
不満をいう三男を無視して、深緑の竜はちゃんと答えてくれた。
『採取できる場所がある。そこで適当にとって蒸しているが……採りに行くのか?』
俺が頷くと、深緑の竜がしばらく黙ったあと俺に手のひらを見せた。
『乗れ。案内しよう』
「兄上、俺もいっていー?」
『おまえは無駄に掘り起こして飽きるだろうが。ダメだ』
「えー…」
『マイス呼ぶぞ』
「兄上いってらっしゃーい!」
笑顔で見送るクルガに、深緑の竜の手のひらに乗りつつ、俺は首を傾げた。
『……マイスはクルガの側近なんだが、口煩いうえにしつこい』
俺が聞かずとも答えてくれた竜に礼を言い、どこにでもそういう関係の奴らっているんだなと感心した。
翌日から、俺は掘ってきた芋を、俺の家とやらの前で焼いたり蒸したりした。
水は塩湖と普通の川があったため、塩湖の水をたっぷりとって完成度の低い塩を作ったり、蒸留させた水を飲み水にしたりした。
俺が今まで与えられていた水は、川の水で、えらく濁ったそれを組んで放置しておいた上澄みを飲んでいたらしい。
よく腹を壊していたのはそれのせいだったのかと、納得した。
結局、俺の飯係は必要なくなったし、俺は洗濯やら身の洗浄までできるようになった。
洗濯は水で洗うだけだし、体を洗うのも水で洗うだけなので、とてもきれいとは言い難い。
いつも傍にいた深緑の竜がいないのは、寂しいが、相変わらず遊びにくるクルガもいるから、一人というわけでもなかった。
芋のある場所や水を汲みにいくのにも、たまに色々な竜を見かける。
でもいつも睨み付けられ、威嚇されてしまうから、話し掛けもしないし、じっと見ることもない。
色々な竜のなか、深緑色をした竜を探しては、もう会うこともなく目覚めるのかなと思ってもいた。
一向に目覚める気配がない、この夢に、俺は現実なのかもしれないと思うこともあった。しかし、現実だと思えることが一つもない。
俺は布を干し、空を見上げた。
空は赤く、まるでずっと夕焼けのようだった。
それも、現実感がなく見える。
「人間!人間!」
今日も今日とてクルガは元気だ。
人間人間とはしゃぎまわる。
「……おまえの兄貴はなにしてんだ、最近」
「なんか、会うたびきくね。兄貴のこと、好きなの?」
「おまえより」
「俺のがたぶん、人間のこと好きだよ?」
その割りには、俺はずっとクルガにとって『人間』だ。
名前を言わない俺にも原因はあるだろうが、聞こうともしない。聞く必要を感じていないのだ。
クルガと違って、あの深緑の竜は、俺を『人間』という固有名詞にはしなかった。
あくまで人間というときは、種の名前としてつかっていて、呼び掛ける時は、『おまえ』といった。
名前を教えあうことはなかったが、少なくとも仲間外れみたいな呼び方はしなかった。
別に竜になりたいわけではないし、俺はまごうことなき人間だ。
しかし、なんだか、無性にあの竜が懐かしい。
「ま、いっけど。兄上は今日も外出。やっぱ、交渉は面倒だって言ってた」
「交渉」
「そ。外交が兄上の仕事だしね」
あの竜は、律儀だし、責任感強いし、頭もいいから、きっとあの竜ほどの適任者もいないだろう。
「交渉、進んだら、人間にも会いに来るかもね」
友人でもない厄介になってるだけの存在なのに、それはないのではないか。
そう思いもしたが、あの律儀な竜のことだ。
客人扱いした人間をずっと放っておくだなんてことは、しないだろう。
そう思うとなんだかおかしくなって、ちょっと笑った。
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