王道なんです。
王道ですよ。
間違いありません。

山奥のおぼっちゃま校に転校するヤンキー。まごうことなき王道。

少々、私の趣味で悪人顔でも、少々私の趣味で口が悪くて朗らかさがなくても、少々私の趣味で性格が悪そうでも、何ら問題なく王道ですよ。

最近はそういうのもありますし、よく見かけますもんね！クールな主人公という奴。

クールな主人公という奴。クールな……


ちょっとばっかし理事長が変態ぽくとも溺愛だもの、当然の成り行きですよね。

仏の顔は三度まで。
王道って免罪符はどこまで…


本文はつづきからどうぞ

簡潔にいうと、俺を好きすぎる伯父が、ようやく二親をたらしこみ、あんまり学校いってない息子を安心安全な伯父の全寮制男子校にぶちこんだという話だ。
安心安全どころか、伯父曰く、あっくんの貞操が心配だよぅーいじめられたらどうしよぅーうえーんというような学園だった。
男子校で男が貞操の危機というのは正にそのままの意味なのだが、伯父は甥を手元に置きたがり、欲望に負けた。
そして俺は校門を見上げ、入るべきか入らざるべきかを悩んだ。
悩んでいたら門が開いてどうぞだなんてスピーカーから聞こえ、なんかここは山奥の日本の学校のはずなのに、ロイヤルな王子がいらっしゃって、直々に理事長室まで案内してくれるという。しかも、ニコリとか擬音のつきそうな笑顔で案内してくれた。俺はニコリと同じような笑みを返したつもりだ。
ひかれた。
友人曰く、笑うなら両方の口角をあげろ。何か企んでいるかカスい笑顔に見える。とのことだった。
そんなカスい笑顔をはりつけ、俺は理事長室までいった。
ドアを空けたとたん飛び掛かってきた伯父を、横に動くことで回避。勢い余って理事長室から出た伯父をそっとドアをしめることによって閉め出す。後ろ手に鍵をかけ、眺めのいい理事長室から、空が青いな雲一つないなと現実逃避をした。
「あっくんあけてー！あっくうぅうぅぅうん！！」
伯父は、俺の貞操の危機を心配した。
心配した結果、黒いもじゃもじゃの…アフロと、目を隠すための色つき眼鏡…星型フレームを用意してくれた。
俺は有り難く思ってそれらのづらと眼鏡を入っていた箱に戻して、親父に渡した。親父は宴会の出し物に使うと喜んで、俺に黒髪の七三づらをくれた。
真面目っぽいだろう？という、真面目にも種類があるだろうといいたくなる発言を飲み込み、少々天然が入った親父のために七三づらをその場で被ったのはいい思い出だ。
幸薄そうな悪徳金融会社のいやみたらしく卑屈な社員にしか見えなかったそうだ。
俺は長くてうっとうしい髪をようやくゴムで縛ると肩をならし、やっと入ってきた伯父を見た。
「あっくんったらもぅー！おちゃめさん！」
「……家帰っていいか？」
「だ・め」
まとわりついてくる伯父を蹴りつけ、払い除け、学園の説明をなんとか聞き終わった俺は、とりあえず髪切りてぇなと思った。
寮に着くと寮監が俺を見て『理事長が溺愛してるってどんなかと思ったら…』とがっかりした顔をした。
鍵をおざなりに受け取り、自室に向かう。
二人部屋ということで、誰が一緒になるのかと、ネームプレートを見上げる。俺のネームプレートは俺がもっているため、そこにはまだない。一つ隣が開いたそこ、白地に黒いマジックペンで『相田冬海』と、なんとも寒そうな名前があった。
名前の相性はばっちりなんじゃねぇのと俺はその隣に俺のネームプレートをいれる。
青木春秋（あおきはるあき）。
伯父は俺を愛して止まない甥っこの秋くんから、あっくんと呼ぶ。
はると呼ばないのは、父が晴靖（はるやす）という名前だからだ。
親しみをこめて、春一番のごとく妹をさらっていって幸せにしてしまった男はーくんと伯父は呼んでいる。
伯父の感性がよくわからない。
俺はドアを何度かノックして、返事がないのを確認してから中に入った。
中には、ソファーで寝ている、おそらく同室者だろう奴がいた。
俺は挨拶もしないで、ドア前に荷物が置いてある俺の部屋だろうところへ向かった。
部屋のなかに入ると、とりあえずベッドに寝転がり思った。
眠い。