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アップするのをすっかり忘れてました。
これだけ本の話をしているんだから、これはふっておかないとな。
と思ったので。
船の話は、友人に聞いただけでもういいですってなりました。
あとは、ちょっと舞台系に。
一応両方とも本になってます。
おすすめ本が行き詰まってきた感いっぱいです。
本屋の本棚眺めたいと思います。
では本文は続きからどうぞ。
会長が図書室に尋ねてくるのは、意外とはやかった。
「てめぇは俺を寝かせない気か」
「いや、そんなつもりは…」
うっすらと隈を作った会長は、正解を引き当て、一日目に二冊、翌日に全冊かりたと、今見ているパソコン画面には表示されている。
「じゃあ、次は紹介しますか?」
「次は…いい。しばらくはあれを読むから」
まだ読み終わっていないということだろう。
と、いうことは、だ。
今日は俺に文句を言いにきた、ということである。
「そうっすか。ちょっと用意してたんすけど…」
会長は俺の言葉に目を細め、しばらくの間沈黙した。
何か考えているようだった。
「……大人向けの本」
「はい?」
「紹介するなら、大人向けの本。俺が読む」
今までの本が子供向けだったかどうかは、少々考えるところがあるが、大人から子供まで広く読まれているのは確かだ。
しかし、本は年齢制限をされていないかぎり大人も子供もないものだ。
いささか子供が読むにはつまらないかもしれない、という本なら結構あるが。
それにしても、会長はこの前からまるで会長ではない誰かのために本を読んでいると思えるようなことをいう。
前の本は読みかけではないのだろうか?『俺が読む』というのは、つまり、どういうことなのか。
浮かれていた気分が一気に沈む。
「……兄がいて、病気の弟がいた。兄は船の上で、懺悔する…」
「それはすっきりしないから読まない」
俺の八つ当りのような推薦はすぐに却下された。
それなら明るい話にしようと、また口を開く。
「猫がいた。一匹の猫だ。猫は主人の日常を…」
「現国の教科書みたいな選出だな」
「…猫は全文のってないでしょう?」
「のっていないが…」
今までが今までだった分、なんだかつまらなさそうな顔をする会長。誰かのために本をかりて読んでいると考えるだけで、軽く嫉妬して本を投げやりにすすめてしまっている俺。
投げやりにすすめてしまっているが、面白いと思った本だ。…船の方は、ちょっとした意地悪であったが。
「あの作者は、風流を愛してるんで、粋ですし、それに結構読みやすいですし」
「『月が綺麗ですね』ってか?」
からかうように笑った会長に、やっぱりこの人は、高嶺の花で、俺なんて眼中にないのだと思わされた。
俺は会長から目をそらし、頷く。
「そうっすね。つきが…きれい、ですね」
同じ感覚で見えないというのなら、なんと白々しいアイラブユーだろうか。
「…月だなんて形をかえるものに愛を誓うだなんてって話がありましたねぇ…」
「ああ…読んだことはないが、見たことはある」
俺は会長に視線を向けないままに、舞台なら、俺より見ているだろう会長に、俺は漸くお薦めの本を見つけた気になった。
「…舞台の裏には、おぞましい怪物が住んでいると噂されています。恋と憎しみと恐怖と…悲しい話」
「……それ」
「本で、読んでください」
漸く会長に顔を向けると、いつも以上に笑ってみせる。
有無を言わせない笑顔ってやつだ。
俺はイスから立ち上がり、返却されている本が入った箱を持った。
「何か他がいいなら明日にでも。考えときますんで」
よくいったものだ。
本当は落ち着かないのだ。
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