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そんなに長引く話じゃないけど、魔法と学園のシステムを珍しいものにしてしまったので説明のような展開が続く。
話らしい話の組立かたをしていないので、こう、だらだらしてる感がいなめない。
冴島と西秋の関係はすきなんだけど、進展という進展がないからなぁ。
この事件に終止符を打ったあと、方向性が変わるやもしれません。
本文は続きからどうぞ。
冴島が動こうと思うと、必ず風紀の三兄弟が先に動く。
冴島がしようと思ったことをいち早く察知しているのか、タイミングがいいのかは冴島も測り兼ねるところだ。それが冴島のカンに障る行為ならば、冴島も闇討の一つや二つしていたところであったのだが、大概、あの三兄弟は冴島の思わぬところで思わぬことをする。
だから、あの三兄弟のうちのひとり、藍色の名を頂く夢野が大怪我をしたと聞いても、冴島はちょっと面白いことになってきたと思うだけだ。
三兄弟は仲がいいほうだが、兄弟の誰かが誰かのせいで怪我をしたからといって報復をする連中ではない。からかって遊ぶようなことはあっても、そんなことはしない。
今回も三兄弟はのんきに構えていることだろうと思い、やたらと目立つ風紀の三兄弟を遠くから見ていた冴島は、少し、首を傾げた。
大怪我をしたという夢野がいないのは当然として、夢野を欠いたあとの二人が、まるでお通夜のような雰囲気を醸し出していた。
珍しいことだ。
風紀のトップがその調子なのだから、学園も騒がしくなるのも当然だ。
夢野が怪我をしたという話が駆け巡り、沈痛な様子の風紀のトップに根も葉もない憶測や、様々な噂話が飛び交う。
夢野の怪我が、流石に目に余るようになってきた風紀保護観察委員会に殴り込んでできた怪我であるとか、その怪我を見て風紀の心優しいトップが凹んでいるとか。
「目に余る風紀保護観察委員会に殴り込みと、それでできた怪我は正解だろうが、お通夜な理由はなんだ?」
滅多なことでは暗い雰囲気を引きずらない三兄弟の、しかも三兄弟の中で一番物事を単純に見ている風紀委員長の今野までもその調子なのだから、あまりものごとに興味を示さない冴島も引っ掛かりを覚え、引っ掛かりを覚えたその日のうちに風紀委員長の部屋へと訪れていた。
風紀委員長である今野は、何処から不法侵入したか見当もつかない冴島を見つけた瞬間に息を飲んだ。
「お、お通夜…すか」
「お通夜だろ?目に見えて暗い」
冴島が、自分たちが凹んでいるというだけで気にかけてくれるような優しい人ではないと知っている今野は、しばらくの間、冴島の顔を見つめた。
冴島は、今野が冴島を見つけた時から同じ場所で同じ表情をしている。いつもの、何事も退屈そうで、さもすれば眠そうにもみえるつまらなさそうな顔ではない。今にも声を出して笑いだすのを堪えるような、そんな顔だった。
「そ…すかね……」
こんな顔をしている時の冴島は、何かとんでもないことをする。
昔、今野が冴島にいらぬ因縁をつけて襲いかかった時も、化野や夢野が今野を病院送りにした冴島に興味を持ち、次々に病院送りにされた時も、こんな顔をしていた。
過去のことを思えば、トラウマになっていてもいいくらいの表情。しかし、それは、今野に期待を持たせる。
また、一緒になって冴島さんが遊んでくれるんじゃないのかな、という期待だ。
「嬉しそうにしてんじゃねぇよ。言えよ。なんでそんな暗ぇの」
夢野は、噂や冴島のいうとおり風紀保護観察委員会を潰すために、風紀保護観察委員会を訪ねた。
それで怪我をして戻ってこようと、その委員会が潰れようと、今野や化野はへこんだりなどしない。
夢野が怪我をして帰ってきて、その夢野からきいた話に、へこんでしまったのだ。
「……夢野が、噂の委員会つぶしに行ったんすけど」
冴島が小さく頷いた。
今野は夢野が怪我で顔を歪めながら、辛そうに告げた、ある事実を頭の中で繰り返す。
「委員長が、副委員長だって」
冴島はその言葉をしばらく、考えた。
委員長というのは風紀保護観察委員会の委員長のことだろう。
副委員長というと、ありとあらゆる委員会にいるはずだが、今野が呼びかける委員長は今でも冴島である以上、その副委員長は一人であるはずだ。
「峰か」
冴島が風紀委員長であったころ、風紀副委員長をしていたのは樹峰だった。
冴島とぶつかって得た地位ではなく、冴島といると面白いからというような理由でいつの間にか傍にいた人物だった。
傍にいて鬱陶しいことはなく、仲も良かった。
気が合ったといってもいい。
けれど、樹峰と色を使って戦ったことは一度もなかった。その上、樹が色をつかって何かをするということを見たこともなかった。
実力主義で、ギスギスしたところがなくもない風紀委員会には珍しいタイプで、冴島と仲がよいという理由だけで副委員長になったと思われていた。実際、能力で実力を示すようなこともなかったためその通りであったのだが、冴島が委員長ではなくなった時から、樹の姿を見ることもなくなった。
「で、峰にボコられて帰ってきたということは、峰は色使ったんだな」
「いえ、副委員長は、いつもどおり武器で…驚きが優ったみたいで」
「夢野の悪いところだな。予想外のことに対応しきれない」
相手が峰でなければ、それでも夢野は風紀保護観察委員会を潰していたことだろう。
相手が悪かったとしか言い様がない。
ある程度は能力を使うまでもなく叩き飲めせる。それが、冴島の風紀委員会の副委員長だった。
夢野は負けたわけでもなければ、大怪我でも自力で帰れるほどの怪我で帰ってきたのだろう。能力も使わず、ただ、呆然としていたに違いない。
樹は冴島の信者に疎まれることも多かったが、尊敬されることも多い男だったのだから。
「そうか、峰か……あれが俺の残した火種、なぁ…?」
冴島は思わず笑った。
「あの、冴島さん…?」
「退屈だったんだろ」
今野が何が?と問う前に、冴島はその会話を終わらせる。
「暇つぶしにはちょうどいいか。お前ら、大人しくへこんどけよ」
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