書きなぐり ビスケット!5 忍者ブログ

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ナンバリングすべきかどうか悩みましたが、222もナンバリングされてるしいいかなって。

ちょっと間に合わなかったんですけど、ちょっとくらい、いいかなと。
クリスマスですよ、会長!



本文はつづきからどうぞ









わざわざレンガで囲いを作られ、そこに入れられたモミの木を眺めながら、委員長が呟く。
「いつから日本のクリスマスは、七夕になったんだ?」
「皆で飾り付けるなら、オーナメントの写真でもとってプリントしたほうが安上がりだとかいった奴がいたからだ」
俺は、モミの木の一番上に飾る星を箱から出しながら答えた。
オーナメントの写真は最初、本物志向の生徒たちには不人気だった。
そこで、副会長が色とりどりのペンを買ってきて、オーナメントの写真の隣におくと、皆、その写真の裏に思い思いの願い事…サンタへのお願いといえばいいだろうか。それを書いては、モミの木に飾り始めた。
寮の入口に近い、ロビー部分。
毎年そこにモミの木が設置されるのだが、生徒会は毎年そこにオーナメント代という資金を出さなければならない。
新しいものがいいという考え方、そのほか、毎年記念でもっていくやつら、生徒に人気のある生徒会がモミの木を飾り付けるということもあって、誰それが飾り付けたといってはもっていく連中がいるからだ。
そんな理由で持っていかれるのなら、飾りを好きなように飾り付けさせればいいのではないか。
そんな理由で、今年はオーナメントの写真を飾り付けることになったのだ。
「会長様とデートできますよーに。だと」
「…風紀のアニキの舎弟になりたいとかいうのもあるぞ」
風紀委員長と同時に、短冊と化したオーナメント写真から目を逸らす。
「つうか、ここに置いてあった脚立どこいった?」
上の方の飾りつけのため、飾り付け期間中、常設してあった脚立が見当たらず、俺は手にでかい星を持ったまま、委員長に尋ねた。
委員長は、仕上げのLEDを手に持ったまま、あたりを見渡し首を捻った。
「わからねぇ」
このクリスマスツリーを出す作業は、いつの間にか仕上げに星を飾るのは会長、LEDを付けるのは風紀委員長という決まりごとができていた。
生徒が騒がしい時間帯にそれをやると、見物客が多くて邪魔であるため、こうして誰もいない深夜に生徒会と風紀の一部で作業をすることになっている。
いわば、伝統行事のようなものだ。
今年は生徒会のあと二人には、委員長と一緒は羨ましいけれど、応援しているからと言われ、生徒会は俺ひとりで飾り付に臨むこととなった。風紀委員会は関係なく普通に何人かが作業予定だったのだが、委員長の兄弟である生徒会役員が脅してまわり、風紀からも委員長のみが参加となった。
委員長はそれについて兄弟の行動に何かいうこともなく、ただ、『うぜぇ連中いなくなってラッキー』という感想を漏らしていた。
「管理人に聞くか、他のもってくるか?」
「あー…めんどくせぇな」
委員長はそう言うと、俺の目の前で座り込んだ。
「ほれ、来いよ」
「……何だ?」
「肩車」
確かにモミの木のてっぺんは、風紀委員長の身長を足せばどうにか足りるだろう。
しかし、この年になって、しかも、好意をもっている人間に肩車をしてもらうのは気が引けた。
「ああ、そうだ。お前も肩車しろよ?上の方にLEDのねぇクリスマスツリーなんて残念だろ?」
顔だけこちらに向けるようにして風紀委員長がそう言った。俺はその様子を想像して笑うと、後で自分もやらなければならないのなら…と遠慮なく風紀委員長の肩をまたいだ。
「その残念ツリーもちょっとみたいが」
「笑ってると落ちるぞっつうか、落とすぞ?」
俺は笑うのをこらえながら、少しぐらつきながらも俺をのせて立ち上がった風紀委員長の頭に手をのせ、片方の手をモミの木のてっぺんに伸ばす。
「つうか、今、おまえがLED付けてくれてもいいんだぞ?」
「いや、俺も肩車して足みじけぇなって笑いたいからな」
「マジかよ。会長はムカつくくらいなげぇから文句もいえねぇわ」
そんなこと思ってたのかよと笑っていると、俺はオーナメント写真が置かれている机の上に下ろされた。
「さて、足短くねぇって証明しねぇとな」
俺は机の上からおりたあと、その場に座る。
「どうだろうな俺より短そうなもんだ」
軽口をたたいたものの、見た感じ風紀委員長の足は長い。
すっかり風紀委員長にのせられてしまったと思いつつ、悪い気はしない。
普通に触る分には、恥じらったりはしないし、これほど茶化されてしまっては照れる気にもなれない。
立ち上がると俺もやはり、少しぐらついた。
「重いから早く作業してくれ」
「筋肉量が違うんだな」
「落とすぞ」
「わりぃわりぃ」
手早くぐるぐるとLEDを巻き終わるのを見たあと、俺は同じように、風紀委員長を机の上におろした。
「ついでに、俺たちも何か書いておくか?」
「どこにつるせっていうのだ、こんなだぞ?」
「んー…それもそうか」
願い事が書かれたオーナメントは、モミの木に所狭しとつるされていた。壮観である。
机の上からおりると、委員長はニヤニヤと笑いながら、ツリーをしげしげと眺める俺の隣でLEDのコンセントをさした。
「写真はやっぱりダメだな」
「いやわるくねぇよ。ただ、場所がなかっただけだ。いっそのこと、モミの木も紙にすりゃいいんだ」
俺はそれを想像して頷いた。なるほど、確かにそうすれば問題はない。
「そうそう、会長」
「なんだ?」
委員長の手のひらが俺の前に出された。
俺が首をひねると、委員長の手は半回転する。
その手には先程は握られていなかった白い紐が握られていた。
視線を下げると、その紐はしたへと続いており、小さな赤い靴の入口を閉めていた。
子供用の小さな、菓子が入った靴を俺に渡すと、委員長は自室にLEDや星が入っていた箱を抱えて俺に背を向けた。
「メリークリスマス。さっさと寝ろよーあとは片付けておく」
俺は自分自身の手に収まった小さな靴を眺めながら、思った。
困った、机にまた食えない菓子が増えてしまう。




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