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巨タイというやつがやってみたかったんですけど。
結局めんどうくさくて、タイトルが最後にくるだけになってしまいました。
本当に書きなぐりましたよ!
生徒会長が受!としかいいようがない。
本文はつづきから、どうぞ
なんでこんなことになっているのだろうと思ったのは、ほんの数ヶ月前だ。
数ヶ月あれば、人なんて歩きだすし、しゃべりだすし、短いようで結構長い。
数ヶ月前、俺は何故か、俺ではない人間の身体を持つことになった。
所謂魂が入れ替わったっていう、フィクションの世界なのかと思いつつ、俺はなんか、周りの雰囲気とか流れに流されるまま数ヶ月を過ごしていた。
俺の身体が別の人、五海正弥(いつみまさや)という人間の身体になる前、俺は社会人だった。
ちょっと特殊な経歴を持つ社会人であった俺は、五海正弥の身体に入り、あれよあれよと仕事をした。
本当に仕事をした。
どうしてこうなっているとかなんでこんなことしているとか、そんなことを聞く暇なく、仕事をした。
最近の学生ってこんなこともしなきゃいけないのか大変だな。としみじみ思いながら数ヶ月、ただひたすら仕事をした。
仕事をした結果、一人で、たったひとりで生徒会役員として仕事をしていた鹿楼明澄(ろくろうあずみ)くんが、何故か俺に熱い視線を向けてきた。
それもそうか、ひとりで耐えてきたところに救いの手ときたら、確かに熱い視線も向けたくなる。
俺はわけのわからないまま、ただひたすら仕事をしていたわけで、もう、二学期も終わるなって頃、二人で回すのは不可能だと言われた仕事を片付けてしまって、ようやく、何がどうなってるか聞けると思っていたわけだ。
しかし、だ。
数ヶ月だ。数ヶ月もあれば、なんとなく分かることもある。
仕事ばかりで、流され続けても分かることなんていうのはあるものなのだ。
例えば、俺が生徒会書記であるとか、そのたったひとりで仕事している人間が生徒会長であるとか、なんで二人しか生徒会室に来ないとか、他のメンバーは仕事もせず遊びほうけているとか、そういうことはわかる。
あと、会長が根が真面目で可哀想とか、そういうの。
真面目…ではもしかしたらないのかもしれないけれど、なんか、もっと肩の荷おろしていきろよーというか、学生なんだからもっと遊べーというか、なんていうか、可愛そうで、ちょっと可愛くて。
つまるところ、熱視線は俺の中で歓迎されていた。
でも、外見は高校生らしくない高校生でも、中身は社会人で高校生よりは老成しているはずの俺は、すぐに気がついてしまった。
この状況はありえないのだ。
本来ならありえるはずのない状況なのだ。
俺とこの五海くんが入れ替わっている状態というのなら、俺はいつかもとに戻るのかもしれない。俺がもし、死んで、五海くんをのっとっているというのなら、五海くんにこの体を返さなければならない。俺が死んで、五海くんになったというのなら、もともとの五海くんの記憶がないことから記憶喪失であるし、そうなれば、記憶が戻った際、俺が俺の記憶を持っているとも限らない。
不安定だ。
とても不安定だ。
記憶喪失で、勝手に記憶なり人格なりを作り上げたというのならまだ、希望はあるかもしれない。
しかし、入れ替わったりのっとったりしていた場合は、俺は、鹿楼くんの視線に喜んでいる場合ではない。
なんとか、元に戻る前に、俺は今、俺ではないことを説明しなければならない。
説明できないのなら、俺はこの気持ちを隠さなければならない。
それで、この身体の持ち主である、五海くんに、鹿楼くんの視線をとられたまま、交代、しなければならない。
俺は、鹿楼くんの視線に気がつきながら、曖昧に笑って受け流し、悔しい思いを抱かねばならない。
俺も状況が見えていなかったら、必死に説明していたと思う。
けど、記憶喪失とかならまだしも、入れ替わってるとかいわれたら、『は?』な話だ。そんなの、誰が、信じるの?って話だ。
それを思い、嫉妬して今後のことを思うのなら、俺は鹿楼くんに冷たくして、鹿楼くんに嫌われるべきなのだ。
耐えられないとかそんな悲劇的なこと考えてないで、嫌われるべきなのだ。
でも、五海くんが鹿楼くんに嫌われたいわけではないはずだ。
俺が勝手にやるのだ。
本当は、そんなこと、勝手にすべきではない。
俺が俺の体でやるなら問題はない。多少、嫌な感じはするが、問題はない。
だが、これは五海くんの体なのだ。
五海くんは自分の身に覚えのないことで嫌われて、自分のしていないことで責めたれられなければならないかもしれないのだ。
だから、俺は、曖昧に笑うしかできない。
という免罪符を掲げて。
「…鹿楼会長」
少し不満げに俺を見る。
鹿楼くんは俺に会長と呼ばれることを好まない。
けれど、距離は近づけてはならない。
「もし俺がどこか行っても、鹿楼会長は俺のこと、見つけられる?」
姿かたちが違って、年齢さえ違って。
性別は悲劇なのか、良かったというべきなのか、それだけは一緒で、立場も違う。
五海正弥という人間からしたら、何もかもがちがう人間を、『俺』だと思って、見つけることはできるのか。
俺は思う。
できない。
そう思う。
けれど、俺は、できないということを知っていながら、口約束が欲しかった。叶えられなくてもいいから、その約束が欲しかった。
「ハァ?」
「なぁ、できる?会長」
「そりゃあ、おまえ…急にいなくなったら探すが…」
いなくなるのか?と不愉快げに眉間に皺を寄せた会長に、できたら傍にいたいなぁと思いながら、首をふる。
『俺』はいなくなるかもしれないが、五海正弥はいなくならない。
少なくともこの学園を卒業するまでは、鹿楼くんのわかる範囲にいるはずだ。
「で、見つけてくれる?」
「俺にできねぇことはねぇよ」
鹿楼くんならそう言ってくれると信じていた。
数ヶ月。
俺は五海正弥だった。
鹿楼明澄の傍にいた。
ただひたすら仕事ばかりしていたけれど、君の思い出になるには十分だった。
目が覚めたとき、俺は俺だった。
ちょっと経歴が特殊な社会人、阿蘇仁誠(あそじんせい)だった。
「先生、ちょっと、何ベッドで寝てんですか!ちゃんとパソコンと向かい合ってください!」
いつも通り担当編集者という名前の仕事人が俺を叱って揺さぶる。
「いや、眠くて」
「せめて、もっと起きやすい場所で寝てください!ほんと、頼みますよ!」
俺には好きな奴がいた。
色々あって、気持ちが勝手に薄れてしまい、告白もしなかった。
熱しやすく冷めやすい俺には、よくあることであったのだが、これはいつもと違った。
なんといったらいいのだろうか。
違う、のだ。
俺の好きだったやつ、五海正弥は幼馴染だ。
幼稚園から大学部まで管理するひとつの学園で最初からいれば、大体のメンツは幼馴染だが、五海は家まで近所で、家族ぐるみのつきあいだった。
五海正弥は、おとなしくて、周りに流されがちで、無口。対人関係にちょっと気後れしていて、でも、優しいやつだった。
その五海のことがずっと好きだったというのなら、俺が急に気持ちが薄れて好きじゃなくなるなんてあまりにもおかしなことだったのだが、そうじゃなかった。
ある日やってきた転校生に、どんな理由があるかは知ったことではないが、生徒会メンバーと呼ばれる連中が、恋をした。
恋、なのかどうかは間近でみることがなかった俺は知らない。
俺が少し風邪をひいている間にあった出来事だったからだ。
俺が久々に学校にきて、まず最初に見たのは書類があふれる生徒会室で、そこに通っている間に、正弥が階段から落ちたというから、俺は正弥の様子を見に行ったわけだ。
正弥は医者の話では、記憶が混乱しているとか、別人格のようになっているとか…そのくせ、記憶喪失者にはあるまじきはっきりとしたことをいうらしい。
仕方なく周りは合わせてやれと通告があったので、俺は正弥らしからぬ正弥を『五海』として受け入れ、たまりたまった書類を片付けるためにもこき使うことにしたのだ。
五海は物怖じしな性格で、誰とでも気軽に話すし、家族ぐるみであるからこそ、話をする必要のない俺ともよく話した。
書類をさばく作業は優秀なもので、さもすれば俺の仕事も奪う勢いだった。
正弥はこんな人間であったのか。
いや、五海は特別、だった。
俺が無理矢理連れてきたけれど、書類を見てすぐさま俺に尋ねて取り掛かった。
俺が疲れているのをおもんぱかって寝ていろと言ってくれた。
それは正弥らしい優しさではなかった。
正弥はそっと、よりそうような、さりげない優しさをもっていた。
五海はいつもはっきりと俺に厚意をくれた。
正弥はこうだったと思わなくなった頃、俺は五海が好きになっていた。
それでも、いや、それだからこそかもしれない。
五海が俺を『鹿楼会長』と呼ぶのが、気に入らなかった。
俺の幼馴染は、ずっと俺を明澄と呼んでいたはずだ。
なぜ今更、このときに、鹿楼会長だなんて遠い、他人のような呼ばれ方をしなければならないのだろう。
けれど、もし、五海が俺を明澄と読んでいたら、俺はまた、違うと思っていたことだろう。
実際そうだった。
五海がまた階段から落ちたというから、心配になって保健室に走った。
「あずみ…?」
首を傾げた五海は、正弥、だった。
俺の知っている五海じゃなかった。
五海はああだったのに、五海はこうだったのに。
本人を前にして、何度比べたことか、何度違いを感じたことか。
そうして、俺の好きは薄れた。
それから、俺はずっと、特に好きだと思える程の人間にも出会わず、『五海』に出会うこともなく、外部の大学に通い始めた。
クリスマスを目前にして、合コンだとか、デートしようだとかいってくる連中を適当に流していたら、俺を映画に誘ってくれたやつが、その映画の原作本なるものを無理矢理押し付けてくれた。
それは、クリスマスイヴに封切りになる映画で、高校生がただ日常をバタバタと過ごす、青春モノのような、友情もののような…恋愛もののような内容だった。
ついこの間まで高校生だった俺にも懐かしく思えるような内容で、まぁ、…面白かった。
だから、映画を見てやろうと思った。
封切りの時に見に行ったせいか、最初に原作者が特別ゲストとして出てきて挨拶をしたなんてことのない挨拶だ。
挨拶ついでに、その原作者が本の宣伝をした。
「今回映画になったもののすぐあとに書いた本なのですが、実は、ラブレターでして」
「ええ?そうなんですかー!?え、でもあれって…」
「まぁ、そのへんはほら、ご想像におまかせしますということで」
そんなことを言って笑う作者と映画の出演者に何故かイライラしながら、俺は映画が始まるのを待った。
映画は面白かったが、なんだかイライラして、映画館の物販コーナーにしては珍しい、原作者の本を全巻そろえたそこで、俺は一冊の本を手にとった。
お調子者のように軽く話して帰った原作者のものとは思えない、何か見ているこちらが辛くなるような、タイトルだった。
君の思い出になる前に