書きなぐり 夢を見るなら楽しいほうがイイ 忍者ブログ

[541]  [540]  [539]  [538]  [537]  [536]  [535]  [534]  [529]  [528]  [525
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


異世界トリップ系。
巻き込まれではなく、正真正銘呼び出されたのだけれども、間違えだった。そんな主人公が、拾われて…。


主人公×竜……かなぁ。
どっちでもいいんだけれども。
始まったばっかりで止めてしまってるんですが、携帯のメール一つでは納まらなかったのでとりあえずこれで。


本文は続きからどうぞ。









「やっちまったな」
起きてすぐに俺はつぶやいた。
寝るつもりはなかった。ちょっと横になるだけのつもりだった。
しかし、眠っていた。
見渡すかぎりの砂地、雲一つ無い空、輝く太陽。
暑いのはきっと誰かが空調をいじったせいで、俺はその暑苦しさにすぐ目覚めるはずだ。
そう、今、すぐ。
しかし、寝苦しさは全く感じず、夢のなかで、日陰を探そうにも、砂ばかり。
汗も出た先からからっからに乾いていってる気がする。
ただ暑い。もはや、暑いというより熱い。
「……」
口を開いたら、そこから水気を奪われるんじゃないかという熱さに、誰かが布団の乾燥機でもつけているんじゃないかとさえ疑った。
夢のなかだ。
進まなくても、歩いても結果は同じだ。
しかしこのままひからびて起きるというのは、なんだか寝覚めが悪そうである。
だから、俺はあてどなく歩くことにした。
砂の上を歩くには不適切なスリッパに、砂が入るたびに不快な思いをしながら、俺は歩き続けた。
しばらく歩いて、座り込む。
疲れた。
何もなかった。
これはいよいよ、苦しくなって目が覚めるんじゃないだろうか。そう思っているときだ。
雲もなかった空に、黒い固まりがあらわれた。
それはどんどん大きくなって、俺の目の前に着陸した。
俺は風圧に飛ばされ、転がったあと、顔をあげる。
えらくファンタジックな夢だな。
そんな感想をもたせる生きものが首をもたげて、俺を見ていた。
でっかい爬虫類に、羽が生えたみたいなそいつに、干物になった挙げ句食われて、おはようだなんて、最低最悪だなと思った。
『人間、貴様を迎えに来た』
まだまだ目覚めるのは早いようである。



さて、俺を迎えに来た竜によれば、俺はいわゆる異邦人というやつらしい。
『人間、貴様は、どうやら間違えらしい』
間違えとはいったい何のことだろうか。
直接頭に響いてくる、竜の声を、竜に掴まれた状態でききながら、俺は首を傾げた。
食われはしていないが、地面に落ちて起きるかもしれない。しかし、やはり寝覚めが悪そうである。俺は夢のなかであるが、現実逃避に竜の声を聞く。
『貴様がこの世界にきたのは、ちょっとした手違いで、人間どもが、貴様をミミズどもの巣に投げ入れた』
あんな砂しかないところにミミズなんているのかよと思って思わず下を見ると、でっかい虫みたいなのがいた。
これはまずい。ミミズもきっとあのサイズである。
『だが、貴様は運がいい。ミミズどもが、どこかの呪術師によって食い合いをしている最中で、他の食事はとらない』
俺とミミズの幸運な巡り合わせをききながら、耳慣れない単語を反芻する。
呪術師、食い合い。
ファンタジックな夢はやっぱりファンタジーなんだろう。
『ついたぞ』
俺を手から離すだけという、いささか乱暴な方法で地面に落とされた。
高度を落としてくれただけ、マシだ。
「ついたぞって」
俺はどうして竜に迎えにこられたかもわからなければ、何の間違いであったかも分からない。
「貴様を迎えにいけと、クルガ様がおっしゃった」
いかにも、勇者がたどり着く魔王城みたいなところから、人というには少し、いやかなり、かわったやつがやってきた。
鱗とヒレと、なんかうすい膜。
紺色の、肌。
きっと人間ではない。
『この人間、肝が座りすぎている』
「そうですね。一応人の形に似せましたが、必要ないですね。皆に伝えておきます」
『しかし、クルガの人間好きにも困ったものだ。捨てられたなら拾っても文句はないだろうだなどと…』
「ペットにするんでしょう。問題ないかと。愛玩するには……むいていない気もしますが、そこはクルガ様なので…」
竜と紺色の人の話を聞いているかぎりでは、俺はクルガという人のペットになるらしい。
「……」
なんとコメントしていいものかわからないというか、状況がまったくわからない。
さすが夢だ。
わけがわからない。



「これが本物の人間か!」
うれしそうに俺に抱きついて喜ぶそいつは、緑色だった。
今度は緑の人か…。
「人間!何かしゃべれ!」
何かお話をしなければならないらしい。
俺は俺の疑問を、ついでみたいにはなしてみた。
間違いって何だとか、おまえら何だとか、ここどこだ?とかそんなものだ。
ここまでファンタジックな夢だ。人に聞かせられる程度には設定みたいなものが知りたかった。
緑の人いわく、ここは砂漠のど真ん中より少しそれたところに入り口がある竜たちの都。
緑の人も紺色の人も竜で、人みたいな形になってみたらしい。
緑の人はクルガ。王位第三継承権を持つ王子さまであるそうだ。
紺の人がマイスといってクルガの側近で、俺を迎えに来た黒い竜がリノウといって、クルガの兄であるとか。
クルガの兄というと、第一継承権とか第二継承権とかの持ち主なわけで、俺は何というかビップ待遇されているような気がしてきた。
ポイって投げ捨てられたけど。
「あと間違えというのはなー、召喚間違えというのか?おまえは召喚したくなかったらしい。不要物を養う物資は人間どもにはないから、サンドウォームの餌にくれてやったらしい」
サンドウォームとはまた聞き慣れないが、ミミズの巣に捨てられたという話から、たぶんそれはでっかいミミズのことなのだろうと思う。
「でだ。俺はこれで、人間って奴に興味があって、一匹ほしくてさー。捨てたんならいらないだろうし、な!」
軽くそんなことをいわれても困ってしまう。
軽いだけにまったく困難な状況だと受け取れないのも俺を困らせる。
夢、荒唐無稽すぎる。
「だから、おまえ、俺のペットに」
『俺が留守にすると、てめぇ等は本当に余計なことしかしねぇのか…』
突然割って入った声に俺は辺りを見渡した。
上空に、一匹の竜。
その色、深緑。緑というより黒に近いくらいの、色。
「おかえりなさーい!兄上!!」
また王子さまだな。
俺は見上げたまま思う。
『ただいまかえった』
ああ、今までみてきた竜の中では一番律儀そうなやつだな。そうも思った。
『で、何故、人間がいる』
そして、俺に一番ものいいたそうだなと思った。
「兄上!この人間飼っていい?」
やはり俺はペットらしい。


結果からいうと、俺はペットではなく客人になった。
『兄上も、寛大がすぎる。またミミズの巣に戻しておけばいいものを……』
所謂、もとの場所に戻していらっしゃいというアレだ。
俺の思考は大変自由に逃避行為に励んでいて、この黒い竜は三番目の王子さまみたいな形になったら肌黒いのかなとか考えていた。
「夢にしちゃ、細かい設定だな」
ぽつりとこぼしてしまったせいか、黒いのがこちらをにらみつけてきた。
竜の表情は解らないので、目付きだけがものをいう。言動からも、態度からも、俺を歓迎しているのは三男のみだ。
『夢か』
「それ以外何が?」
現実ならばあまりにもありえない。しかも、俺はやたら疲れていて、スリッパはいたままソファに寝転がっていた。そのまま寝てしまったから、こうして夢をみていると思うのが普通だ。
夢だからって、何もスリッパでなくて、靴であってもよかろうにとは思わないでは無かったけれど。
『愚かなことだな、人間』
憐れみを感じる声色といってもいいかはわからないが、とにかく俺を憐れんでくれているらしい。
『せいぜい、夢を楽しむがいい』
そういいながら、竜はどこかへ飛んでった。
俺は、人間には機能性をかく、三男が興味本位で作っただだっ広いだけの城の床に座り込む。
椅子が一つもないどころか、玉座すらない。
部屋は区切っただけといった、立派すぎるワンルームみたいになっていた。
雨や風はしのげるが、何だか広くて肌寒い。
暑いところから一転、寒いところにくるなんて、風邪を引きそうである。
そのくせ、喉は渇いていて、ふらふらするしぼんやりする。まさか夢のくせに脱水症状など起こしてはいないだろうな。
ファンタジックでありながら、やけにリアルな夢に、俺は舌打ちをしたかった。
しかし、舌打ちをするには口が渇いていた。
俺はこのまま倒れて、起きるのか。
思ったとおり、最悪の目覚めだ。
俺が目をつぶろうとした時、遠くから音がした。
最早この夢を見初めて、お馴染みになってしまった羽音だった。



目が覚めたら、そこには知らない天井が遠くに見えた。
高すぎる天井。
だけど寒くはない。でも、快適ではない。
「……」
『水、飲むか?』
これからそこで体を洗えといわんばかりの広い水のみ皿とでもいおうか。ちょっとしたプールか池にしか見えないそいつが、重たい音を鳴らしながら動いた。
「……」
人間と竜では規模が違う。わかっている。
わかっているから、俺は仕方なく、でかすぎる水飲み皿に手をつっこみ、すくい上げ、飲んだ。何度も飲んだ。
脱水症状とまではいっていなかったらしい。なんとか水を受け付けた。
そうして水を飲んだあと、改めて俺に水をくれた竜をみた。
深緑のやつだ。
「……ありがとうございます」
『いや、客人に死なれては困る』
三男あたりが持ってくるのなら解るが、まさかの深緑の王子さまだ。
そして俺は辺りを見渡す。
さまざまな布が置いてある場所、そこに俺は座っている。
起きてすぐは、その布に、俺は埋もれていた。
「これも……」
聞く前に、竜は俺に視線を向けた。
睨んでいるでもなく、興味本位でもなく、哀れんでいるでもない。俺を確認する目だ。
『人間は弱い。環境の変化に弱い。急激な温度変化にもついていけない』
客をもてなすつもりはないが、殺すつもりもない。ただ、当たり前のことを当たり前にやっただけなのだろう。
たとえ大味であっても、この竜が、俺を思ってしてくれたことで、俺はもしかしたら少し、気持ち良く起きられるかもしれない。
「ありがとうございます」
もう一度いって、俺は布の集まりのなかに潜り込んだ。
ただ、疲れていた。



もう一度目が覚めると、やはり、天井は高かった。
夢のなかで、寝て、目覚めるなんて貴重な体験である。
布束のなかから体を出し、正面をみると、深緑……黒と深い緑の鱗が見えた。
ぐるりと辺りを見渡すと、やっぱり俺は深緑の竜の傍にいた。
深緑の竜の尻尾が、ぐるりと俺を取り囲んでいたのだ。
「……俺にどうしろって…」
呟くと、竜はその呟きで起きたのか、寝ていなかったのか答えてくれた。
『人間に適した環境ができるまでは風避けになることになった』
「王子さまがすることじゃねぇーし……」
俺の呟きに、竜は同意した。
『まったくだ。しかし、他の竜も人間などのたれ死ねと思っている。命令は絶対であるから守りはするが……それでは俺の気分が悪い。嫌々やられているのも、それを感じている人間を見るのも』
本当に律儀で真面目で、義理堅そうな竜だ。
俺に義理はないだろうけども。
「クルガ王子は……」
『おまえのいいたいことは解る。しかし、クルガは人間が好きではあるが、自分自身と同じようにみている。人間は自分と同じ状況下で生きていけると思っている。そのため、おまえからしたらおまえを粗雑に扱う』
俺に好意的である三男坊は、人間というものをまだしらないと、竜はいう。
このしっかりした感じ、この竜長男なんだろうな。なんとなく思った。
『だから、客人の部屋をクリエイトするように言い付けておいた。しばらく、おまえはこうやって寝起きをすることになる』
深緑の竜が長男なら、第一継承権保持者じゃないかと思って、俺は思わず布束の上で正座した。
「……ありがとうございます」
それしか言うことが見当たらないのがなんとも情けない。
俺の夢は、まだ覚めない。
PR
<< 非王道的な HOME 転校生がヤンキーだったら >>
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
リンク
カテゴリー
フリーエリア
最新CM
最新記事
最新TB
プロフィール
HN:
鶴義 亀吉
性別:
非公開
バーコード
RSS
ブログ内検索
アーカイブ
最古記事
P R
Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]