書きなぐり 殺害動機3 忍者ブログ

[486]  [484]  [483]  [482]  [478]  [476]  [475]  [474]  [472]  [469]  [462
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



もっと切ない話にしたかったんだけど。
さっぱりでした。

青春でした。
切ないってなんなんだろうもう!


本文はつづきからどうぞ。






恐らく、思い出ってやつはどんどん風化していく。
一秒ごとに風化して、一分ごとに美化される。
そんなこともあったね。青春だね。そう言えるものになっている。
俺は、そうであってほしいと望んだし、そうあるべきだと思ってる。
だから、ここ最近の出来事は全て、美しい青春の一ペェジになることになった。俺の中で、コレはもう決定事項だ。
「ほかに意見はありませんか」
進行となっている副会長の声を耳に収めながら、俺は指の上でペンを回した。
文化祭の準備が忙しくなってくると、青春だとか言っている間がなくなった。
こうして文化祭のための会議を行う度、少しの間が与えられる以外、俺は他のことを考えないようにしているためだ。
友人たちは俺を冷たくなったと称した。
長谷川はどうか解らない。
会っていないからだ。
サボっているのを捕まえるのはやめたし、一緒にサボるのもやめた。
すると、途端にあわなくなった。
なんだ簡単だ。
何も感じないし、何も思わない。
「っと、ちょっとまて、この配置は…」
机のうえに広げられた校内地図に手に持ったペンを走らせる。
急に焦って書き込んだせいか、芯が折れた。
簡単に折れるものだから、折れたところからもう一度線を引っ張ったのだが、また芯が折れる。
書き込むうちに何度かそれを繰り返しているのを見て、副会長がイライラした声を上げた。
「なんでそんなに折るんですか!だいたい、色が薄いです。前はもっと濃いの使ってたでしょう?」
「ハァ?前からこんなだったって…」
そう言いながら、校内地図に走ったシャーペンの軌跡は、薄かった。
見慣れた薄さをしばらく睨んで、俺はハッとする。
急にシャーペンのケツを押し出した俺に、副会長が微妙な顔を下が、その場に居た風紀委員長と副委員長が副会長を止めるものだから、誰もがだまってその様子を見つめた。
出し切ったシャーペンの芯は、一本。
それ以上は出なかった。
あんなにたくさんあったのに、俺は知らず知らずのうちに芯を使ってしまったのだ。
おそらく、何度も何度も折って、いつもより早い消費で、それに気がつかないほどぼんやりと、そして、それが普通になるくらいの間。
俺は芯をシャーペンに戻すと、予備に入れてあるシャーペンを取り出して、何事もなかったかのように校内地図に書き込みを始めた。
副会長は首をかしげるばかりで、風紀の二人はため息をついた。
「なぁ、喧嘩したかなんかしらねぇけど、もういいんじゃねぇの?」
「何が?」
「長谷川だよ」
「だから、何が?」
長谷川を無視している訳じゃない。
長谷川も俺もいつもどおりに戻っただけだ。
会議以来、予備のシャーペンを使っている俺は、いつもどおりではないのかもしれないが、概ね、いつもどおりといっていい。
ヤンキーの長谷川と、生徒会長の俺。
仲がいいのがおかしいのだ。
「喧嘩もしてねぇし。普通だよ。通常運行に戻っただけだっつーの」
「確かに、お前も長谷川も通常運行だけどな…」
「なんつーか…びっくりするぐらい元に戻りすぎだろ」
そう、予備のシャーペン以外は、元に戻ってる。
俺は二人の間にいて、ヤキモキすることがなくなったし、いつもどおり、茶化したり、餌付けされたりしている。
変わらない。
俺がいたかった場所も、俺が二人の気持ちを知る前と、変わらない。
自分自身の気持ちに、気がつく前と、変わらない。
「もう何がなんだか」
「昔っからよくわかんねぇけど…それでも、お前、おかしいだろ」
「そうかぁ?」
解らない振りをしながら、気がついている。
変わらないことが、もう、変わってしまった証拠なのだから。

 

「…ナァ、手伝ってくれねぇか」
「……見返りは?」
2Hの入ったシャーペンを回しながら、俺は黒板を見る。
日直は佐々木と佐々木。
生徒会長と風紀委員長。
俺とあいつ。
さっさと風紀の仕事に向かわせたあと、俺は教室に残る。
2Hの使いかけの芯が一本だけ入ったシャーペンを指の上でとめたと同時に、長谷川が俺の隣の席に座った。
「昔話でいいか?」
「……」
「『器用そうだな』って、笑いやがったんだぜ」
プリントを机の上に置いて、それを左手でめくりながらヤンキーが笑う。
大量のプリントは、相変わらずのサボリのツケ。
「俺、不器用なのに」
左手がせわしなく動くのを眺めながら、俺は思い出す。
結構昔に、そんなことを言った覚えがある。あれはヤンキーではなかった…どころか、素行すら不良じゃなかった。
しかも、その記憶は小学生の頃まで遡らなければ出てこなかった。
「左利きって、器用そうに見えんだろうが」
「見えるだけで、別に器用じゃねぇよ」
カチカチと、シャーペンの芯を押し出す音がする。
「なぁ…」
「あー?」
「俺、昔話はいいから、前と一緒がいい」
紙に書き込まれていく文字は、2Hとは違った濃さだ。
「……死にそう」
「おう、殺した」
長谷川の筆圧は強い。
わら半紙のプリントを傷つけたあと、柔らかくなった芯は折れた。
殺害動機。
なんとなく。
そうでなければ…
「俺って可哀想」
「馬鹿言うな、振り回された俺が一番かわいそうだ」
平気な顔して、一緒にいられない。
「おい、会長様、顔赤いぞ」
「気のせいだろ」


 

PR
<< 一瀬さんの日常 HOME 殺害動機2 >>
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
リンク
カテゴリー
フリーエリア
最新CM
最新記事
最新TB
プロフィール
HN:
鶴義 亀吉
性別:
非公開
バーコード
RSS
ブログ内検索
アーカイブ
最古記事
P R
Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]