書きなぐり 殺害動機2 忍者ブログ

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3で終わりだから!
3で終わるはずだから!!

長さにすると、金星からの恋文くらいなんだけどなぁ。


本文はつづきからどうぞ。






「なんで、てめぇが我慢する必要があんだよ」
ばっかじゃねぇの?
放課後、教室。
なんとなく。
あっけなく。
俺は、一仕事終えて、カバンを持った。
復活の呪文でも知ってんのか、このヤンキーは。
そう思って視線を動かした先、同じクラスの一匹狼。
「……何してんだ?」
プリントの束を片手に教室にやってきたヤンキーは、左手のプリントの束を嫌そうな目で見たあと、俺に向き直る。
「サボったツケ」
「あ、そら、ご愁傷様で」
「てめぇあれだよな。学年主席だよな?手伝え」
「いや、手伝ってやってもいいが、見返りは?」
放課後、教室。
なんとなく、あっけなく。
ヤンキーは復活の呪文を唱える。
「一緒にいてやる」
俺は、ヤンキーの耳に付いてるピアスを見える限り数えて心を落ち着ける。この野郎は知っているのか。
俺が何を殺したか、知っているのか。
「そうか。じゃあ、手伝ってやらぁ」
俺はそうして、放課後、ヤンキーの長谷川と黙々とシャーペンを動かす仲となった。
長谷川は筆圧が強い。
すぐシャー芯を折る。
長く芯を出しすぎなんだと文句をいうと、俺のシャーペンの使い方をまず伝授してもらうとか馬鹿なことをいって、すぐサボろうとする。
だいたい、筆圧が強いくせに2Hなどと硬い芯を使っているやつも悪い。俺は、ムキになって奴のシャーペンのケツを押し、全ての芯を俺愛用のHBに変えてやった。
今思えば、ケツから出した後に、一本全部だせばいいことだったのに、ムキになってしまった。
そうして、俺のシャーペンには2Hが収まった。
あの二人が二人で過ごしている間、俺はヤンキーと過ごした。
すぐサボりたがるヤンキーを捕まえ、時に一緒にサボり、案外楽しかった。
プリントが終わる頃には、じゃあ、また明日というくらいには仲良くなっていた。
「なぁ、最近、ハセキョンと仲いいじゃん」
「ハセキョン?」
「長谷川杏市(はせがわきょういち)略してハセキョン」
「そんな可愛い面してねぇだろ、あれ」
「してねぇけど」
風紀の二人は不思議そうだ。
生徒会長と、ヤンキー。接点がないどころか、一緒にサボるなど不届き千万な仲の良さだ。
「ついうっかり、まずい現場を見られてしまって。そう、弱みを握られたというべきか」
「おい、何やったんだよ、ツグさん会長」
「いや、その言い方おかしいだろ、尚一」
そうか?と首を傾げたあいつは、意外と面白い感性をもっている。そう思えば、俺をあだ名に敬称つきで呼び始めたのはあいつが最初だった。
「ハルさんよ。別にちょっとした青春の一ペェジだから気にすんな」
「おい、マジかよ。あまずっぺぇよ。青春って言葉がもうダメだわ。俺も混ぜろよ」
「俺も混入希望」
「お前らみたいな毒素混ぜたら、俺の美しい青春の一ペェジがきったなくなるだろうが」
残念なことに、俺の美しい青春の一ペェジとやらにはこの二人が必要不可欠なのだが、この二人はそれを知らない。
けなすだけけなして、二人から不評をもらったあと、笑って誤魔化して俺はヤンキーがいるだろう屋上に向かう。
屋上の給水塔には、前の授業をサボったヤンキー。
「やっぱ俺、無理だわ」
二人の間、いや、二人のごく近くで、笑いながら思うのだ。
青春の一ペェジ?混入?
確かに、混入されている。あの二人がいなければ、美しい青春の一ペェジとやらは出現しなかった。本当、そんなのは、もっとあとになって、アレが青春だったって美しく、懐かしく見えるハズだった。
今、青春の一ペェジになるものじゃなかった。
「なぁ、一緒にいてくれるんだよなァ…長谷川」
「プリント手伝って貰ったしな」
はしごを誰かがおりてくる音を聞きながら、俺は、白い柵を掴んで外を眺める。
糞みたいに山奥にある学校の二番目に高いだろう場所は、絶景で、山と山の間に街がみえる。海が見える。
けど、あいつがいない。満もいない。
後ろから、長谷川が俺に腕を伸ばした。
背後に、存在感。
「…どっちが好きだった?」
「……どっちも好きだった」
長谷川が納得したように頷いたのが解る。
「どっちを我慢した?」
「どっちも殺した」
もしも、長谷川があの時声をかけなければ、うまくいっていたかもしれない。そうでなかったかもしれない。
俺は、どっちも我慢できなかった。
あいつとの、ハルさんとの少しの時間は、俺には変えがたい恋情だった。
満との、くだらないじゃれあいは、俺にはなくてはならない愛情だった。
二人がくっついたら、形が変わってしまうこともしっていた。そうでなくても、いつかなくなってしまう、もしくは変わってしまうものだと知っていた。
変わらず残るものもあることを知っていながら、俺は、その二つを違わない形で好きでいたかった。
だから、俺は、俺のワガママも、俺の感情も、殺した。
殺害動機、なんとなく。
でなければ、俺が惨めだ。
だってそうだろう?知ってたんだ。俺は、あの二人が両想いだって、知っていながら、二人の友人と俺の今の居場所と、三人の関係を保っていたかったんだ。
俺の気持ちさえなくなってしまえば、今の居場所も、三人の関係も変わらないと思えた。
「我慢できねぇくせに殺したりするから、そうなる」
「長谷川も、我慢してねぇくせに、忍耐力ありすぎだろ」
俺を後ろから抱きしめて、こんなことしてるのが友情なら、手厚い友情だろう。
長谷川のは、おそらく友情ではなく下心だ。
「バレテら」
「当たり前だろ」
そうして俺は、もう一つ、殺す。
「長谷川といんのも、嫌いじゃねぇけど。やっぱ、俺はあの二人がいい」
死に損ないのもう一つと一緒に、より残酷に、殺す。
「またな」
またはない。


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