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いいタイトル思いついた!
青春!
ウホウホ!
ってなって、書き出したんですが、纏める自信がひとっつもなかったんですよ。
案の定、1ときました。
いえ、今日中におわらせますよ。
というわけで、会長の話。
青春ですよ。
青春。
タイトルは物騒ですが、内容はただの青春です。
本文は続きからどうぞ。
思えば俺はあいつの背中ばかり見ていた気がする。
なんてことはない。
出席番号が前と後ろなのだ。
あいつが前、俺が後ろ。背も、昔は俺があいつより少し背が高くて、いつも、あいつの背中を見ていた。
所謂腐れ縁ってやつで、高校生になった今でも、俺はあいつの背中を見続けている。
背中を見すぎたのかもしれないし、友達が共通しなくても、腐れ縁は伊達じゃなくて、なんとなく知っている。
あいつも俺も仲が悪いわけでなし、席が近けりゃ、並ぶ列も一緒となれば、それは必然とそれなりに話もするからだ。
天気がいいだとか、腹が減っただとか、喉が渇いただとか、眠いとか。なんか、一部の好みを互いに知っていて、あいつは持ってる菓子を俺が腹減ったっていうたび、出してきて、あいつが喉渇いたっていうたび、飲むかってペットボトル差し出す。そういう仲。
傍から見れば、仲いいなっていっていい。
俺らからすれば、仲いいのかな?という程度。
一緒に帰ったり、飯食ったり、遊んだりなんてしねぇし、ペアになれって言われたら違うやつと組む。
ホームルームだとか、のんびりしてたい短い休み時間とか、授業開始のちょっと前。
あいつと俺の仲ってのは、そういうちょっとの間の交流でしか見られない。
だが、誰もがいうのだ。
「おまえは、佐々木と仲いいよな」
「…それ、結構、言われんだけどよ。そんなでもなくねぇか?」
「いや、仲いいぞ。羨ましい」
風紀副委員長の瀬長満(せながみちる)、俺の幼馴染。
同じ学校、同じクラス。ずっと一緒で、つまるところ、俺と同じ。あいつとは腐れ縁。
「いや、けどなぁ…俺、そんなにハルさんと話さねぇし」
「あだ名でよんでんじゃねぇか」
「そりゃあ、俺も、佐々木さんだからだ」
佐々木嗣尚(ささきつぐなお)。名前もあいつとは何の縁があってか、似たような字面をしている。苗字に至ってはまったく同じだ。
「佐々木も俺のこと、ツグさんって呼んでんだろ?」
「それが余計に仲良さそうだっつうの」
確かにそうかもしれない。
なんとなく互いの友人が呼んでいるあだ名に、『さん』と敬称を付けて呼んでいる。
佐々木って呼ぶのが普通なんだが、苗字が同じでなんだか違和感を覚えてしまうため、名前で呼ぶのが通常だったんだが、尚一くんだとか嗣尚くんだとか、そういうのは俺たちの柄じゃない。そうなると、呼び捨て、ということになるのだが、それほど仲良くもないし、なんか遠慮する。結果、友人間で呼ばれている名前に敬称をつけるという、さらに柄ではないことになってしまっている。
それが、今日まで続いている。
たぶん、ずっと続くことだろう。
「んで、何?羨ましいんだったら、今、隣の席だろうが。会話に加われよ」
「ばっか、できるかよ!そんなん!できたら…できたら、こんなとこで管巻いてねぇ…!」
満は、片想いをしている。
俺の前の席で、満の隣の席の佐々木さん…あいつに、片想いをしている。
馬鹿みたいにわかり易い。
ねたふりして話をきいていたり、俺に八つ当たりしたり、視線が合いそうになったらそらしたり。
寝たふりしてる満に、あいつは優しく笑う。俺に八つ当たりしてる満にあいつは羨ましそうな顔をする。視線がそらされる度、あいつは切なそうな顔をする。
両想い。
面白いから、黙っている。
いつになったら付き合うんだろうと傍観していた。
「あー…もう。なんで俺、佐々木じゃなかったんだろう!」
「いや、佐々木が三人とか、先生大変だろうが」
「でも、佐々木さんはいっぱいいるだろうが」
「佐藤さんよりはすくねぇよ」
「そうかも知んねぇけど」
こうしている間にも、あいつは満と俺を見て切なそうに顔を歪める。
体育の授業。
バスケットコートの向こう側。
俺と幼馴染がだべっているその姿をしっかり目に収めて、そんな顔をする。
知らないから見られる顔。
知っているから見られる顔。
こいつら早くくっつかねぇのかな。
「おい、ハルさん」
「あん?」
「返事の仕方が横着だ。やり直し」
「アホか。で、なんだ、ツグさん」
「おま…お前ら、それで、仲良くないとか、嘘つくな…ッ」
「いや、嘘じゃない。仲悪くもないけどな。で、ハルさんよ。おたくの副委員長が、風紀の素晴らしい息のあいっぷりを見せたいそうだ」
「はぁあぁ?言ってねぇ!」
「なんだ、一緒に、やりてぇの?」
「つーか、マジ、仲よくねぇとか嘘だろ、お前らぁぁあぁ…」
結局、満はバスケットコートに立った。
最初は俺とアイツの仲の良さとやらにおかしいおかしいと文句を言いながら、次第に、楽しそうに、バスケをする幼馴染もあいつも、そこに生まれてからずっと隣にいるべき人間がそこにいることが嬉しいみたいに動き回る。
やはり、俺はあいつとは仲がいいとはいいがたい。
仲がいいとはバスケットコートで動き回る二人を指す言葉だ。
それもそうか。両想いなのだから。
俺は視線を足元に向けた。薄汚れた体育館シューズを見て、笑う。
「きったねぇの」
早くくっつかねぇかな。
口に出したことは一度も無かった。
面白いから傍観していた。
面白いと思っていたかったから、俺にはどうこうするのができないから傍観していた。
早くくっついて欲しかったのは、本当。
あの二人がさっさとくっついたら、俺はこれ以上思い煩わなくてもよくなる。
口にださなかったのは、俺が卑怯だからだ。
あの二人が、いない、俺だけになってしまう少しの時間が寂しい。
好きだった。
あいつと過ごす、短い時間。
好きだった。
幼馴染となんということはないことでじゃれあう時間。
好きだった。
三人の微妙なバランス。
今でも存在するそれは、少しずつ変わって、俺は、そうされたわけでもないのに、馬鹿みたいに一人だなんて思う。
だから、俺は、殺した。
殺害動機、なんとなく。
そうでなければ、俺が惨めだ。