書きなぐり 昔の。 忍者ブログ

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大学の終わる一年くらい前にかいたものなんですが、もうお蔵入りだろ…と思って。

昔はこんなんもかいてたんですよー!
芸風、かわりました。
もしくは衰えたとかそんな、そんなはずは…。
ちょっとだけなおしましたけども。なおせるなら、うん。

ファンタジーで、BLなんだけど、BLという部分はあまりださないかたち。
内容は、途中でおわってます。


本文はつづきからどうぞ。



見渡すかぎり砂しかない世界に、彼はため息を吐いた。
辺り一面、緑にかこまれた場所からやってきた彼には、苦痛でしかない世界でもあった。
此処には、緑の息とも言うべき濃い空気がない。陽の光をやさしく遮る木々もない。…気心の知れた友も、いない。
彼は此処に来なければいけなくなった原因である人間を憎んだ。もう、取り返しのつかないほど砂漠化した土地に、今更緑を取り戻そうだなんて虫がいいと、彼は思う。それに、砂漠化させたのは、この土地に住む人間であるのだ。この土地とはなんの関わりもない、遠い、海を跨いだ大陸で捉えられた彼が、どうしてこの土地に緑をかえさなければならないのだろうか。彼は、なんの関わりもない人間を救ってやろうと思うほど慈悲深くない。
だが、無理矢理連れて来られた彼に、旅の途中で次々と倒れていった人間は同じようなことを言った。
『我が国を助けてください』
無理矢理連れられて来て、恨みこそすれ、助けてやろうと思うほどの感情や理由を見出だすことはできない。
馬鹿なことをいう人間どもだと、彼は思った。
ただ、最後に倒れた人間だけが違うことを言った。
『我が国に行くほうが、近い』
次々と人間が倒れていくような過酷な環境だ。その苛酷さは誰にも平等に降り掛かった。
彼とて例外ではなく、著しく体力を消耗していた。倒れた憎い人間のことはそのままでいいてしても、彼はどうしても故郷へと帰りたかった。このまま、元来た道を戻っても、彼を連れてきた人間達と同じ結果になるだけだ。ならば、人間の言うことをきくようで腹が立っても、砂漠にある国に行くほうがいいだろう。
そして彼は、この砂漠を歩き続けることになった。
こんな環境では、ため息すらも彼から体力を奪う。彼は、なるべくため息を吐かないようにした。しかし、身体の中に何かたまっていくようで、ため息を吐かずにはいられない。
再びため息を吐いたとき、彼は不意に故郷に似た空気を感じた。不信げに前方をみた彼が感じたのは、故郷の空気のような緑の作る濃い空気だ。砂しかない土地で感じられるはずがないものだった。
しばらくすると、遠くから、強く砂を踏み締める音が聞こえてきた。
一定間隔で止まることなく続く、その音は、彼に警戒を抱かせる。
ここには、見渡すかぎり砂しかないとはいえ、平面なわけではない。緩急激しい丘がいくつも連なっている。彼のいる場所にやってくる何かは、その緩急に隠れ、なんであるか分からない。
気配というものに関して鋭い感性を持っている彼が、砂を踏む音が聞こえるくらい近くに来るまで、それに気付かなかったことに、警戒すると同時に軽い衝撃も彼に覚えさせた。それほどまでに、彼は疲れていたのだ。
それでも彼は、前方に向けた目に険しい色を灯したまま、微動だにしなかった。
砂を踏む音は、次第に近付き、ついに彼のいる場所へとやってこようとしていた。彼は低く身を伏せ、砂に身体を焼かれながら前方を睨む。
そうしているうちに、一人の人間が彼のいる場所では一番高い砂丘の頂上にやってきた。
人間は額に手をあて空を見上げた後、辺りを見渡し、彼を見つけた。
「……!」
人間は目を見開き、遮光用のゴーグルを額へと押し上げる。その目で見たものが信じられない、といった顔をした後、思い切り舌打ちをした。
彼は人間を観察し、その様子をみて彼を此処へ連れてきた人間と仲間ではないと仮定した。人間の表情の変化と、その身にまとう気配が彼の故郷の空気に似たものだったからだ。
彼は身を低くしたまま、その目に灯した険しさだけを消した。それでも彼は、その人間を警戒していた。
人間は彼を見たまま、ため息をついて、彼に近づいた。
彼は、それにあわせて一歩下がろうとした。しかし、人間が一歩、また一歩と近づくたびに強くなる、あの緑の気配に動けずにいた。
なんとも心地よく、なんとも懐かしい。
この人間が彼にとって良いものか悪いものかも解らない。それでも、彼は動けないままだ。彼に手を伸ばせば届くほどの距離まで来ると、人間はゆっくりと膝をまげ、しゃがみ込み、彼の頭を撫でた。
「…そこは、熱いだろう」
彼を見つめる目はやさしく、彼を撫でる手も、とてもやさしかった。先程、舌打ちまでした人間のものとは思えないほどだった。
彼は警戒を解かなかったが、ゆっくりと姿勢を正した。人間の言う通り、そこは熱く、少しでも身体から熱を遠ざけようと思ったからだ。
「おまえは此処の生きものではないな」
彼は四肢で大地を駆け、黒い体毛と緑の瞳を持つ獣だ。故郷から離れ、過酷な環境に疲れ切った彼は、すっかり本来よりも痩せて毛艶もよくない。それでも美しく立派な獣だった。
「このまま歩いて来たのなら、その足も痛いだろう。……ついておいで。近くのオアシスまで案内するから」
人間の言葉が獣に通じるかどうかなど関係ない様子で、人間は彼に話し掛け続ける。
幸い、彼は賢い獣であったから、人間の言葉を理解していた。
だからといって、人間の言うことを鵜呑みにするのは危険である。それでも信じざるを得ないほど、彼は疲れていた。
人間が歩きだすと、彼も人間と距離を置きながら歩きだした。
人間は砂漠を熟知しているようだった。
不意に砂嵐が来ると言って丘をおり砂嵐をしのいだり、そこにいっては抜け出せないから行くなと言って流砂を避けた。
砂漠を旅しているので人間は無駄なことは一切話さなかったし、彼も人間に応えてやるほど人間という生きもの自体をいい生物だと思っていなかった。ただ、この人間はおかしな人間だということだけはすぐに解った。
それは普通に考えてもそうだったし、彼の視点から見てもそうだった。
夜になる前にテントを張り、火を焚いて夜が明けるのを待つのは至って普通なことだ。人間はその後、炎の前でゆっくり目を閉じる。しばらくの間、何かを感じているかのように目を閉じたままになる。眠っているというのなら、もちろん、おかしくないし、一度だけなら、それもおかしくはない。
しかし、人間は毎晩それを繰り返し、眠っているわけでもなかった。義務のように、その行為をしたあとに、人間はホッと安心したように息を吐き、すぐに悲しそうな顔をする。
人間が何に安心し、何に悲しむかなど、彼の知り得ることではなかったし、知りたいことでもなかった。しかし、そうしている間、より一層、あの気配が強くなるので不思議だとは感じていた。
ある晩、人間は、いつもの行為を終えた後、彼に話し掛けた。
「明日、オアシスにつく。…まだ、枯れていないはずだ。おまえはオアシスに行った後、どうする?」
オアシスに行ったからといって、体力が元通りになるわけではない。体力を貯え、元来た道を帰るには、獣一匹では無理がある。
それでも、帰りたいと彼は思う。砂漠の途中で息耐えようと、彼の帰る場所はそこしかないからだ。
しかし、それをこの人間に伝える気などない彼は、人間に何を聞かれてもそっぽを向くだけだった。人間もそれを知っていて、独り言のように問い掛ける。
「おまえは、此処にいるべき生物ではないから、帰りたいのだろうね。だって、おまえからは緑の匂いがする」
砂漠で生きてきた人間には分からないだろう匂いを感じ取ることができる。この人間も此処で生きてきた人間ではないのかも知れない。彼は思う。砂漠のことを知っていても、元いた場所から離れ、ずいぶんたつのかもしれない。そう思えば納得のいくことだ。
彼は少し、この人間の見方を変えた。
彼が考えたことが真実ならば何の為に、この緑の薄い土地へ来たのか。彼はその意味を考える。未だ、人間という生物を信用できないまま、彼はこの目の前の人間だけに興味を向ける。
「もう寝ようか。明日も早い」
彼はまるで人間に応えるように尾を水平に揺らした。
人間はその様子に、薄く口端を上げ笑った。火の燃える暖かい色が、殊の外、人間の表情を柔らかくした。なんとも優しい色合いの表情だった。
彼はそれを目に収めて人間よりも先にテントの中に入る。人間はその様子に声を上げて笑い、後に付いてテントに入った。
夜は深く、空には星しかなく、地上には砂ばかりが広がり、少ない燃料で焚いた火は煙と灰になって消えた。



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