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もしかしたら、受以上。
例の、ゆるゆる真っ黒ヤンデレの、攻の語りです。
だぁりん、とんだ鬼畜野郎ではないか。
みたいになってる。
受には普段甘くて優しいんですよ。
普段は。
では、すごいひどい内容ですがよろしければつづきからどうぞ。
天上に天族、地下に地族、地上に人間、水中に水族。
俺は奥さんを見送ったあと、のんびりと新聞を広げた。
「セレスアル様」
「…お前たちは懲りないな。何度、アレがいるときに来るなといったらわかるのか…」
昨夜もまた、ひとり、死んだ。
知っていても止めはしないし、元々そういう約束の上で、仕事をしている。
「ですが…ッ」
「俺に身の危険はないし、アレに殺されるのならそういう運命だ。それで、なんの仕事だ?」
俺が地層八層より、最下層まで落ちたあと、俺を見つけ出した天軍のやつは幸運だった。
奥方がいない時に、俺を見つけることができたのだから。
そいつは、俺に何度も何度も帰るように懇願した。
俺としては鬱陶しいばかりだし、もう戦争に加担するのも、政治に加担するのも面倒だった。
このまま奥さんと一緒に、静かに暮らしていたいなどと、年寄りじみたことを思っていたものだった。
俺、ライリズ・セレスアルは天軍天将の一人にして、諜報部長を務め、奥さん…シグリファ・エストールに巻き込まれて死んだとされている、悲劇の英雄扱いの天族だ。齢は万を数えようとしているのだから、相当な年寄りなのだから、年寄りじみたことを思っていても仕方ないことだった。
そんな俺は、奥さんとは、千余年前に出会った。
当時の奥さんはそれはもう、ひどい男だった。
男も女も食い散らかし、あっちへフラフラこっちへフラフラ。八層将の秘蔵っ子と言えばあたりはいいが、愛人といっていい関係で、戦争に参加した理由も、天族トップが美人で綺麗でうまそうで、あんあん言わせていたぶりたいからとゲスじみた理由での参加であった。
奥さんはまさに変態。まさに変質者。
天軍トップは確かに美人で類を見ない綺麗な人で、優しく、強く、清らかな…なんの理想を体現したのか解らない天族であったが、卑屈な俺は心底妬ましく思っている部分も合った。
天族天将という高官を仕事としておきながら、灰と朱色というほかではあまり見ない色の翼を持っていたが故に、それをコンプレックスにしていたし、化け物じみた回復力も非常にコンプレックスだった。
コンプレックスであるが、使えるものならなんでもつかう。腕を切ろうが足を切ろうが、トカゲのしっぽだ。簡単に切って捨ててきた。
それが、部下であろうが、俺のプライドであろうが、なんでも、だ。
時に身体が必要だというのなら、それすらも使いすてた。
外面だけはうまいこと繕っていたのだから、無駄な人気はあったが、俺はいつでも卑屈な心持ちが少々あったものだ。
話は戻って、奥さんだ。
奥さんは、トップが好きだといって、戦争をかき回した。
いいように、天族を弄んだといってもいい。
その様子は天族ではひどく恐れられ、嫌がられ、今でも頭のオカシイ変質者の名前を天上でほしいがままにしている。
不名誉極まりないのだが、まさにあの時の奥さんはそういう存在だったし、今でもそう変わりないので、弁明のしようがない。
俺がいても下半身はゆるいし、いつまでたってもフラフラしている。
俺が怒らないのもひとえに、奥さんが一日一回必ず俺を求めることと、奥さんが受身に回るのは俺だけだというせいなのかもしれない。
耐えられないときもあり、そんなときはひどく嫉妬してしまうが、奥さんはそんな時、いつも泣きながら謝る。可愛いので余計に嬲ってしまうのが実に申し訳ない。
そんな奥さんをどうして好きになったか。
理由が解らないし、解りたくないし、理解する必要もないのがこうしてうちにやってくる天軍の下っ端どもなのだろう。
奥さんとは簡潔にいうと、敵対関係にあったし、奥さんからトップを事前に守るのが俺の仕事みたいなところもあって、ニセの情報を流したり、ちょっと対峙したりもあった。
昔は非常に奥さんが嫌いで、見たくもなかったのだが、あるとき、俺はドジを踏んだ。
奥さんと正面衝突することになった。
俺と奥さんとが正面衝突すると、奥さんに軍配があがる。
…奥さんの方が強いのだ。
どうあっても、奥さんを好きになることなんてない状況だった。
まずは、奥さんが正気ではないところから俺と奥さんは始まっていたと思う。
奥さんは当時薬中で、本当に狂った思考回路を持っていた。
俺が奥さんに捕まってでも、情報をトップに渡したそのときに、俺が言った言葉に奥さんは反応した。
『お前に全部くれてやる』
だから、その情報はくれてやらん。
自棄で言った言葉だった。
奥さんはそのことばにやたら感動して、俺を殺さず持ち帰った。
俺の翼を削ぎ落としたり、俺を薬漬けしたりと、自由にしてくれたのだが、俺は非常に回復力が強かった。
翼が削がれても生えてくることはしっていたし、薬もその程度ではどうにもならない。
ただ、薬がまわっているふりをしながら逃走する準備を整えていた。
奥さんは、何故か俺を殺さなかったし、捨てることがなかった。
その理由をずっと解らずにいたし、やたら甘えてくるのにも驚いた。
ぬいぐるみか何かと思っているのだろう、そう思ってもいた。
けれど、俺は、奥さんといるうちに気がついた。
奥さんは俺を外に出したがらない上に、外にばらすことを嫌がった。
それゆえ、閉じ込めてはいるが、接触時間は短かった。短い接触の間、毎回毎回、俺を見て、嬉しそうに笑う。
『俺に自分から全部くれたのは、初めてだから』
そういって、俺を大事に大事にしていた。
閉じ込めて、薬漬けにしようとも、それは大事にしていた。
『俺が欲しいもの、くれたの、初めて』
何か寂しく、愛おしかった。
俺の気持ちを本当のところを知らない。
騙すことを仕事にしてきた俺を、信じられない。
本当のところ、あの言葉の真意を知っていたのだろう奥さんは、俺の意識がはっきりすることを恐れた。
否定されること、離れられること。
実のところ、そういうフリをしていただけで、ずっと意識のはっきりしていた俺は、奥さんが可愛くて仕方なかった。
たまに、意識が浮上したように見せかけて、少し優しくすると、舞い上がる奥さんは、本当に可愛かった。
ただ、それだけで、俺は奥さんが好きになれた。
俺の意識が浮上するときを奥さんが心待ちにするようになった頃、ちょっとした事件が起こった。
俺を助けにきて、偶然俺の居場所に迎えにきた天軍の下っ端軍人がいたのだ。
俺がそいつと天に帰るという話をしているときに、タイミング悪く奥さんは俺のいる場所にやってきた。
その時の奥さんは、見るに耐えないほどひどかった。
ただ、そのあとすぐ、俺に使っていた薬を強いものにした。
そうして、楽しみにしていることを消してまで、俺を欲する奥さんに、俺は心底満足した。
俺は、独占欲が強かった。
並々ならぬ独占欲を持っていた。
奥さんは、その独占欲を満たすことができる存在だった。
そうして、俺の今がある。
「なるほど。それなら、第六層にいけばわかる」
「…セレスアル様…、やはりあなたは天軍に必要な方です」
「知るかよ。さっさと帰れ。俺はそんなくだらないことをするために生きてるんじゃない」
こうして、俺と奥さんの存在を誤魔化すことを条件に天軍の仕事をし、なおも奥さんを騙しながら、俺は笑う。
これがバレたら、奥さんは一体どういう行動にでるのだろう。
それが、少し楽しみではあるのだが、それでも、コレはバレない方がいいだろう。
「盗みぎきとはいい趣味だ」
俺と天軍の密会を盗みぎきしていた地軍の軍人が舌打ちをした。
「俺は、諜報活動は得意なんだが、戦闘はとくいじゃなくてな」
奥さんは、気狂いだの、おかしいだの、変質者だのといわれていたが、それでも地軍には必要な人だった。
なにより、八層の将に愛されていた。
所有物として、愛されていた。
それゆえ、こうして、俺に天軍のひとがよってくるように、奥さんにも地軍のひとがよってくる。
「シグとちがって、殺し方が汚くなってしまう。許せよ…?」
汚したからには片付けなければならない。
奥さんが帰ってくる前に。
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