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役割的には嫁なんだけど、夜もご奉仕しちゃうけど、攻…なんだぜ…ってのが書きたくて…。
嫁×旦那さま
嫁が旦那に迫っても、旦那は嫁が好きすぎてうっかりしてしまう日々。
旦那がんばってー!
本文は続きからどうぞ。
玉葱を刻んでいた。
理由はそれだけだったのだが、そいつにとってはそれだけで十分だった。
「せ…」
「せ?」
「責任とって嫁にする…!」
せっかくの男前が台無しだ。
俺を正面から抱き締め、そういったそいつに、俺は玉葱を触っていた手を宙に浮かせたまま、笑ってしまった。
「バカだろ?」
「は…?」
「だいたい急に何で嫁なんだ?」
奴はしばらくの間黙って、俺を抱き締める力だけを強めた。
「…海野(うみの)、昨日、俺が襲ったとき言ってたろうが」
昨日、誰が俺を襲ったというのだろうか。
俺はいつもどおりに朝起きて、昼間の授業はかったるいとさぼり、夕方に朝霧(あさぎり)に会ったはずだ。
そう思えば朝霧に何か言った気がする。
「『これで傷物にでもなったら、嫁にでももらってくれるのか』」
そんなことも言ったかもしれない。
しかし、毎回挨拶のように殴りかかってくるので朝霧が襲い掛かってきているという認識がなかったようだ。
「別に傷物になってねぇけど」
「……昨日、珍しく一発はいったから」
だからこそ俺は鼻で笑っていったのだ。傷物になったら、と。
腹に入った一撃は見事なあざをつくったが、今更そんなあざごときで傷物など、本気でいうようなたまではない。
「さすがに、その…気になって…」
朝霧は殴りかかってくるくせに、俺には自分自身の攻撃は絶対に当たらないと思っているようだ。
勘違いも甚だしい。毎回わりとギリギリなのだ。
そういうわけであるから、朝霧はたかが一発が気になって俺に会いに来たのだろう。
「したら、俺に会うなり、泣く、し…」
玉葱は、誰であろうと平等に目を襲ってくる。みかんの皮の汁より平等だ。
「いや、それは…」
「だから!俺が!」
話は遮るなといいたいところだが、朝霧は俺を離し、向かい合い、真剣にこういったから、何もいえなくなった。
「嫁に貰ってやる…!」
自分自身よりがたいが良くて、可愛げがなく、同性で、性格もあまりいいとはいえない男を嫁に貰うというのは結構、混乱している証拠のようなものだ。
「……じゃあ、貰ってくれ」
少しからかうために、そう返事した俺は、からかい半分、これを機に朝霧をものにする気半分で微笑した。
朝霧がふいっと顔をそらした。
『反則…』と呟かれたそれに、俺は脈ありかと笑みを深くした。
海野が嫁に…許婚になった。
親族は知らないことだし、俺が勝手に言ったことだが、海野本人が嫁になってくれるというのだから、許婚と言っていいだろう。
俺はひそかに海野を嫁に貰えたことに喜びを感じていて、毎日、地に足がつかない思いだ。
そう、ふわふわしている。
「海野」
「あ?旦那さま、俺の名前は?」
「海野稜(うみのりょう)」
「そう、稜。リピートアフタミー」
「りょう?」
「ん。よくできました」
俺の頭をさらっと撫でた挙げ句、頬に唇を落としていった海野は、嫁らしく朝飯を作る。
ぼんやりしている間に、朝飯はできる。
よくできた嫁だな。
「あぁ、そうそう。今日はお前の部屋行くからな?」
頷いて嫁と朝飯をすませ、登校し、昼になる前に気が付いた。
「う、う、う、うみの…が、き、きす…?」
頬にされた程度で何を純情ぶっているのだと思いはするものの、恋愛感情で好きな人にされるのは初めてだった。
「うわ、なんで今思い出してんだ…」
中学生もいまどきそんなことにはならないだろう。
俺は机に頭を打ち付けて死にたい気分になった。
気分になったといっても比喩的なことだ。本気ではない。
結局授業に身が入らぬまま、ハートマークいりの、やたら恥ずかしい愛妻弁当を食って、どうせ授業に身が入らないならとさぼって放課後。
日課にしている海野を襲いに行くことを実行すれば、海野は俺を後ろから抱き締めた。
「旦那さま、昼飯どうだった」
「恥ずかしかった」
ありとあらゆるものがハートマークになった弁当は本当に恥ずかしかった。
「残念。じゃあ明日は好きってかいたのり弁にしようか」
「普通にしろよ、のり少なくなるだろうが」
のり弁はのりがのってこそだ。
後ろで海野が笑っていた。
夜になると海野が俺の部屋にやってきた。
「旦那さま、夜のオツトメに参りました」
と言って笑った海野は、その晩、俺のバックバージンをあっさりと奪っていった。
「つか、嫁、こんなことしねぇ!」
朝起きて腰痛にうなりながら怒鳴ると俺の嫁は俺を抱き締めこういった。
「旦那さまが可愛くてつい」
「嫁かわいくねぇ!」
だが。
うっかりあれよあれよと流されてしまっているのは、たぶんきっと、惚れた弱みなんだ。たぶん。…うん。
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