書きなぐり エコー4 忍者ブログ

[515]  [514]  [513]  [510]  [508]  [507]  [506]  [505]  [504]  [495]  [485
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



久しぶりのエコーは新キャラの先生のせいで、主人公の影が薄いです。
あの手のキャラは本当に、いつもこう、なんというか、イキイキとして勝手に話が進むのでまいります。


つづきは本文からどうぞ。
いつになくだるいというより明るいエコー。






風紀保護観察委員会が大きく動いたのは、その一週間後だった。
生徒会の人間に怪我をさせたことで、学園は騒がしくなっていた。
末端ならば、そんなこともあるだろうと言われるし、身の程知らずにも生徒会に入ったからだよと笑われたところであっただろうが、怪我をしたのは生徒会の中心も中心、会計長だった。
生徒会の会計方をまとめる人間である会計長は、カラフルの一人で、色はグリーン。
「色が近いな。知り合いか?」
「…クラスは一緒だな」
「そうか」
校内新聞では風紀保護観察委員会のトップが謎の人物とされていた。
槙がわざわざやってきて事件の重要性をといて帰ったのだから、少しは気にしてやろうと校内新聞に目を通せば、それであったため、報道部も使えないものだと冴島は思った。
昔、報道部をも掌握していた冴島は、現在の報道部のメンバーがどうなっているかも知らない。
報道部を掌握してしまったのも、棚からぼた餅のようなものであったのだ、現在の報道部がどうなっているかを把握しているわけがない。
「なぁんか…面白くねぇの」
面白いか否かで簡単に動けるほど軽いフットワークを持っているわけでもない、そう呟いて、いつも寝転んでいる場所から冴島は立ち上がった。
「…デートは?」
「この件が解決するまでお預けだな。メンドくせぇことに、学園全体、ソワソワしてやがる」
槙がどう思おうと、関わる気がない彼らにとって面倒なのは、学園が落ち着かいないことだ。
こういった状態にあると、いつ何か別のものに飛び火しないともかぎらない。
普段人気がないこの場所でも、何かといっては文句をいって、呼び出しなどをする輩もいるのだ。
「しばらくは、真面目に、教室通うわ」
「は…似合わねぇなぁ…」
西秋が鼻で笑うと、同じように冴島も鼻で笑った。
「薙ぎ倒して弄んで踏みつけて、蹂躙するのは、飽きた」
「悪趣味め」
「まったくだ」
そうして、冴島は大人しく教室に通うことにした。
廊下側から三つ目、前より後ろから数える方が早いくらいの微妙な位置に席がある冴島は、いつもその席で寝ている。
教師は冴島の活躍を知っていたし、今でも昔の冴島を覚えているせいか、あまり冴島に触れてはこない。
あるけれど無い扱いをする。
たまに冴島が起きて、頬杖をついていれば問題をあてがうくらいのことはするのだが、ほとんどの時間寝ているかサボっているか暇そうにしている冴島に何かをいう教師はいない。
適当にだらけた感のある冴島の所属するクラスは、冴島が教師にどういう扱いを受けていようが、あまり関心を抱かない。
だからこうして、実技の授業に冴島が参加していることもおかしなことだった。
実技を担当する教師も、『今日はペアになって』とは言い難い、明らかに一人になってしまいそうな冴島を発見して、なんといったものか悩んでいた。
クラスの人数は冴島を合わせ、偶数。
いつもならば、一グループだけ三人にするか、休んでいる生徒同士を組ませて終わらせるところだったが、その日は誰も休んでおらず、一人残らずペアになってしまえた。
実技の授業に突然現れた異分子にどうしたものかと口を閉ざしていた教師のかわりに、本日の実技を手伝ってもらうために一緒に授業をしてもらった、もうひとりの教師が口笛を吹いた。
「冴島くんがいるじゃん」
なんとも軽い調子だった。
隣で口を噤んでいた教師は額に手のひらをあて、大きなため息をついた。
口笛を吹いた教師は、冴島芥と少々あさからぬ縁があった。
「先生いいですか?」
「……何がですか?」
「今日の授業なんですけど」
「ダメですって言ってもやるんでしょう?」
「そうです。ってか、先生もどうせ、ペアになってくださいとかいえないでしょー?」
その通りではあったのだが、彼はこの教師に授業を任せるのはかなり不安だった。
しかし、彼は何も言わなかった。
「うん、では、勝手にやります。はい、今日はみんな、いつもの感じでチームを作ってください。そこの目つきの悪いやる気のない生徒の冴島くんはほおっておいてかまいません。いつものペアないしトリオができましたら、スペルを組んで戦ってもらいます。ただし、武器は使用不可です」
生徒たちは不審な顔をしながらいつものペアやトリオをつくる。
放置された冴島は、教師のせいで嫌な感じで目立ってしまったこともさることながら、このあとどうなるかを考えて、小さく舌打ちした。
「はい。できましたね?今回は、遭遇戦です。好きな場所からスタートしてください。先生たちも混ざりますので、油断しないように。では、冴島くん」
「……」
「返事」
「…はい」
「冴島くんは、一人で、戦ってください」
「……」
「縛りは、言葉の意図を二重でつかわないこと」
「…」
「返事」
「…はい」
「よし。じゃあ、先生。適当にスタートしましょうか」
「え、あ、ああ…」
大人しく返事をしている冴島に驚きのあまり目を見開いていた教師に、冴島に返事をさせた教師は小さく笑った。
「今の冴島なら、わりと普通に言うことききますよ。授業に出たからには。でも、ききたくないときは聞きませんから、見極めです」
その見極めが難しいんだろう。とは、その教師も言わなかった。
言わなくてもわかっているだろうことだからだ。
教師たちがそんなことを話している傍ら、冴島芥はあたりを見渡していた。
授業は適当にこなせばいい。
ことごとくペアやトリオを潰してもらいたくて仕掛けただろう教師の思惑には従わず、のんびりそれなりに参加して、サボればいい。
それには、サボるのにいい場所がなければならない。
「…この足は、駆けるに足る」
黒い息が足元に漂ったあと、足の下に隠れた。
冴島は一度その場で小さく飛んだあと、軽く地面を蹴る。
本気で走っては、面倒になることが解っている。それなりの速度で走れればいい。
色は使っているものの、急に走っても大丈夫なようにしただけであって、特にたいした補正もしていない。
彼は自分の力のみで走る。
色を使わないのに、早いそのスピードを落として走る冴島は、まずひとつのペアに近づいた。
「冬、雪よりなお冷たく、凍える、風よりも悪質…!」
近づいてきた冴島に、気がついてクラスメイトが言葉を紡いだ。
色は言葉を紡いで形をつくる。
冴島に攻撃をしてきたクラスメイトの色は白。その力の色を思わせる言葉が入っているのはイメージ先行型の彩色者だ。
冴島は一言、吐き捨てる。
「塗りつぶせ」
絵の具とは違い、意図しなければ混ざることのない力の色がぶつかる。
本当に塗りつぶすほどのちからは使っていない。
クラスメイトが言葉で作ったブリザードを邪魔できればそれでいいくらいのものだ。
「追って、何者も凍る銀の世界よりの侵食、何よりも強い白夜」
白を使うクラスメイトのペアは銀を使うようだった。
白と銀で相性はいい。
黒い壁のようになっていた冴島の色は銀と白に侵食され、冴島に攻撃を届けようとする。
「新色。白い夜なら影はより濃いだろう」
ポツリと、白と銀に侵食された場所に、黒い点が穿たれる。
「混ざれ」
色が混じってしまえば、言葉の効力はなくなる。
慌てて言葉を重ねようとするクラスメイト達より早く、冴島は言い放つ。
「色が灰なら、白は汚れる。色が灰なら、銀は輝きを失う。ならば、黒ならどうだ。その色は、重たい灰。堅牢な牢獄のような、灰」
その全ての色を利用して、色の形を檻にする。
檻に閉じ込められたペアふたりは、慌てて次の言葉を探している。
「間に合わねぇよ。嵐の夜は無音。寝てな」
檻の中で寝てしまった二人を残して、冴島は再び走る。
普段はしない言葉の戦いをして、気ばかりが疲れる。そう思いながら、木にでも登って隠れようと思っている時だった。
冴島の進路を、別の二人組が塞いだ。
「……教師が大人気ないと、おもいませんか」
「……いや、冴島、俺は遠慮したかったんだ…」
「……そこのクソみたいな教師に巻き込まれたことはわかりますよ。昔、ちょっと、縁がありましたから、心中、お察しします」
この瞬間、冴島のクラスの実技担当の教師のひとりである上総本直(かずさもとなお)は冴島に親近感を持った。いいやつだと不覚にも思ってしまった。
「いや、冴島くんさぁ…手加減とかいつ覚えたの?一瞬で潰してくれないと…」
「……」
「俺が話しかけると無口になるよね、急に。先生、冴島くんが差別します」
「先生も差別したいんですが、角(すみ)先生」
「先生は優しいからそんなことしませんよ、ね。さて、冴島くん。本気出してもらおうか!」
「……塗りつぶす。塗りたす。押し込める。内包する。すべてを黒にする」
冴島の黒いため息が、一瞬にして増幅され広がる。
「うっはあ、戦う気なしだ!」
「角先生、俺は加担しませんからね」
「ええ、そう言わずー先生、せっかく生成りなんですから」
「知るかよ、巻き込まれて俺だってうんざりなんだっつう……なんですよ」
「言い直されても」
教師も色々なのだなとそんなことを思いながら、冴島はさらに言葉を重ねる。
「混ざれ、混じろ、残すことなく余すことなく」
「うーえー。黒い。暗い。でも俺って騒がしいの好きだし。誰よりもショッキング。何よりも明るく煩い、夜でも輝くよ、この色」
「煩いだけしか能がねぇんだろ」
「先生、きこえてますよ」
「……能がないんじゃないですかね」
「言い換えても悪口!」
その日、騒がしい元風紀委員会顧問の角煌(すみかがや)と同僚である上総にちょっとした同情と仲間意識をもった冴島であった。


PR
<< 嫁と旦那の方程式 HOME だぁりんも病んでる >>
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
リンク
カテゴリー
フリーエリア
最新CM
最新記事
最新TB
プロフィール
HN:
鶴義 亀吉
性別:
非公開
バーコード
RSS
ブログ内検索
アーカイブ
最古記事
P R
Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]