×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
急に書き出してしまって、やっちまったなぁとは思ったのですが。
たぶん一匹狼×会長
いや、やっちまったなぁとは、思ったのですが。
本文はつづきからどうぞ。
たぶん一匹狼×会長
いや、やっちまったなぁとは、思ったのですが。
本文はつづきからどうぞ。
ある日、道ばたに落ちてる十円や百円くらいの気軽さで、人間を拾ってきた。
拾ったからといって、元の場所に戻してきなさいだとか、警察に届けなさいとか言う奴は俺の家にいない。
その日、拾った人間は、物や、言語が違う生き物とは違ったが、なにも言わずに俺に拾われた。
抵抗することも、否を唱えることもできただろうに、黙って。
それを俺は、応ととった。
その日は、風呂にいれて、ベッドにいれて、寝かせておいた。
「名前がねぇと不便だよな」
翌朝、ベッドで目が覚めてぼんやりとしているそいつに、俺は声をかけた。
これだけ育っている人間だから、名前の一つや二つあるだろう。
俺はそう思って、そいつに声をかけた。
「なぁ、名前は?」
そいつはつれてきたときと同じで、黙っていた。
名乗るつもりはないのだろう。
わかったので、俺は、適当に呼ぶことにした。
「人間の名前ってなにが一般的なんだ?タロウとか?おまえ、男だし」
そして、そいつは、タロウという名前になった。
俺はタロウに、勝手に冷蔵庫のものでも食って生きろ、帰りたかったら帰れといって、家を出た。
学校には、いつも通り遅刻して、教室には一応顔をだして、昼休みから昼寝に中庭のベンチに向かった。
突然の雨に降られ、びしょぬれで仕方なく家に帰ると、タロウはまだ家にいた。
「まだいたのかよ」
拾ってきておいてなんだが、正直な感想だった。
タロウは、道ばたに落ちていた。
それはもう、踏まれて破れて、ヒラヒラ飛んでくこともできず、アスファルトに絡みついているビニール袋みたいに落ちていた。
たって、歩けるだけいいなと思った。
なんで、そんなぼろぼろの奴を拾ってきたか。
正直、俺は、その日、人恋しかったからだ。
いつも通り喧嘩して、いつも通り一人で帰っていたところであったから、なんかタロウがボロクソになって転がってんのが、無性に、虚しくなって、俺もこんななっても、誰も足も止めてくれねんだろなとか、柄にもなくセンチメンタルしちまって、寂しいなとか思って、拾ったのだ。
おまえには俺がいたから良かったな、とかそういうことではなく、もしかしたら、ここでこいつ拾っといたら、後々俺を拾ってくれるかもしれねぇとかそんなんで。
だから、一時の気の迷いとか、気まぐれとか、一日泊めてやるかって感覚で拾ってきたんだ。
まさか、まだここにいるとは。
「ナス校……?」
タロウが呟いたナス校というのは俺の通っている学校の通称だ。
本当は全寮制のおぼっちゃま高校で、こんな山の中腹にある家に生徒が住んでいるのはおかしい。
俺にはちょっとした事情というやつがあって、この家から通学させてもらっている。
ちなみに、ナス校のナスというのは野菜のナスを指す。ネクタイが非常に珍しいナスのような色であることから、山の下の学校の連中がやっかみをこめて、そう呼ぶ。
うちの学校でも、一部の人間は自嘲をこめ、そう呼ぶ奴らもいる。
タロウは道ばたで座り込んでいたし、ボコられていたが、顔ははれても整っている類なんだろうと俺は推測している。
こういう顔が整っている類のやつは、大抵、うちの学校に所属しているから、こいつもそうなんだろうなと、何となく思った。
「ああまぁ、金は持っちゃいねぇがな」
俺の事情というのはここにある。
金は持っていない。かといって、奨学金をもらうほど品行方正でもなければ、優秀でもない。
でも、これまたとある事情から、ナス校には通わねばならず、かといって、あんな金のかかる寮にもいられない。
仕方ないから、小屋にでも住んでおけと、理事長が趣味で建てた家に住むことになった。
それが、この家だ。
「で、おまえ、なんでまだいんの?」
それ以上、タロウはなにも言わなかった。
俺は家から追い出す理由もないので、そのままにしておいたが、何日かいるなら飯代だけはしっかり払ってもらいてぇなと思った。
拾ったからといって、元の場所に戻してきなさいだとか、警察に届けなさいとか言う奴は俺の家にいない。
その日、拾った人間は、物や、言語が違う生き物とは違ったが、なにも言わずに俺に拾われた。
抵抗することも、否を唱えることもできただろうに、黙って。
それを俺は、応ととった。
その日は、風呂にいれて、ベッドにいれて、寝かせておいた。
「名前がねぇと不便だよな」
翌朝、ベッドで目が覚めてぼんやりとしているそいつに、俺は声をかけた。
これだけ育っている人間だから、名前の一つや二つあるだろう。
俺はそう思って、そいつに声をかけた。
「なぁ、名前は?」
そいつはつれてきたときと同じで、黙っていた。
名乗るつもりはないのだろう。
わかったので、俺は、適当に呼ぶことにした。
「人間の名前ってなにが一般的なんだ?タロウとか?おまえ、男だし」
そして、そいつは、タロウという名前になった。
俺はタロウに、勝手に冷蔵庫のものでも食って生きろ、帰りたかったら帰れといって、家を出た。
学校には、いつも通り遅刻して、教室には一応顔をだして、昼休みから昼寝に中庭のベンチに向かった。
突然の雨に降られ、びしょぬれで仕方なく家に帰ると、タロウはまだ家にいた。
「まだいたのかよ」
拾ってきておいてなんだが、正直な感想だった。
タロウは、道ばたに落ちていた。
それはもう、踏まれて破れて、ヒラヒラ飛んでくこともできず、アスファルトに絡みついているビニール袋みたいに落ちていた。
たって、歩けるだけいいなと思った。
なんで、そんなぼろぼろの奴を拾ってきたか。
正直、俺は、その日、人恋しかったからだ。
いつも通り喧嘩して、いつも通り一人で帰っていたところであったから、なんかタロウがボロクソになって転がってんのが、無性に、虚しくなって、俺もこんななっても、誰も足も止めてくれねんだろなとか、柄にもなくセンチメンタルしちまって、寂しいなとか思って、拾ったのだ。
おまえには俺がいたから良かったな、とかそういうことではなく、もしかしたら、ここでこいつ拾っといたら、後々俺を拾ってくれるかもしれねぇとかそんなんで。
だから、一時の気の迷いとか、気まぐれとか、一日泊めてやるかって感覚で拾ってきたんだ。
まさか、まだここにいるとは。
「ナス校……?」
タロウが呟いたナス校というのは俺の通っている学校の通称だ。
本当は全寮制のおぼっちゃま高校で、こんな山の中腹にある家に生徒が住んでいるのはおかしい。
俺にはちょっとした事情というやつがあって、この家から通学させてもらっている。
ちなみに、ナス校のナスというのは野菜のナスを指す。ネクタイが非常に珍しいナスのような色であることから、山の下の学校の連中がやっかみをこめて、そう呼ぶ。
うちの学校でも、一部の人間は自嘲をこめ、そう呼ぶ奴らもいる。
タロウは道ばたで座り込んでいたし、ボコられていたが、顔ははれても整っている類なんだろうと俺は推測している。
こういう顔が整っている類のやつは、大抵、うちの学校に所属しているから、こいつもそうなんだろうなと、何となく思った。
「ああまぁ、金は持っちゃいねぇがな」
俺の事情というのはここにある。
金は持っていない。かといって、奨学金をもらうほど品行方正でもなければ、優秀でもない。
でも、これまたとある事情から、ナス校には通わねばならず、かといって、あんな金のかかる寮にもいられない。
仕方ないから、小屋にでも住んでおけと、理事長が趣味で建てた家に住むことになった。
それが、この家だ。
「で、おまえ、なんでまだいんの?」
それ以上、タロウはなにも言わなかった。
俺は家から追い出す理由もないので、そのままにしておいたが、何日かいるなら飯代だけはしっかり払ってもらいてぇなと思った。
タロウが家に住み着いて三日たった。
三日たって解ったことは、タロウは学校に行く気配がない。
そして、顔の腫れが引いてきて解ったことなのだが、やはり整った顔をしている。
いわゆるかっこいいとか、ワイルドであるとか言われる類の顔で、体格もいい。
「神様ってのは、不公平だな」
思わず呟いてしまったのは仕方ない。
こんな美形ならば、女も男も放っておかないかもしれない。
いや、だが、逆に、こんな美形だからこそ、放っておくかもしれない。
タロウは一人で生きていけそうな雰囲気が漂っていた。
「いや、家にいんのは別にいんだけどよ。おまえ、飯、カップ麺しか食ってねぇし」
料理をするという習慣のない俺は、家にはあまり食材を置かない。ただ、カップ麺を常備してある。
それはタロウもカップ麺を食うしかないだろう。
「俺んちなんかいていいのおまえ」
やっぱりタロウは無言で、俺は、独り言をぺらぺらしゃべるしかない。
だいたいだ。
ガキの頃からいわゆる鍵っ子というやつで、寝ても起きても一人だった。
友達はあんまいなかったし、その友達は地元にいるからここにはいねぇし。
そうなると、ここでは一人で、とある事情……ひらたく、簡単にいってしまうと、お袋は愛人で、中学のときにそのお袋が過労でそのままいなくなって、父親に引き取られたけれど、俺はやっかい物だった。
だから、一応、世間体で学校には行かせるけど。みたいな感じで、父親の息子も学校には通ってて、俺と同じ年なんだが、あんまり顔あわせたくはねぇし、あと、金持ちの癖に俺に出す金はねぇとか、父親の妻がいうから、仕方ない。
俺は学校いってるけど、家なき子。
そうなると、家の事情ってやつにやたら耳ざとい連中が俺の噂をしてくれる。
それはぐれもする。
おかげで、俺は学校で孤立し、孤立しなくてもいいはずの山の下でも孤立している。
環境が急にかわっちまったせいもあるし、なんか、自分の置かれている状況が笑えるほど他人事で、ふらふらしてるうちに、なんか、孤立していた。
結局そのまま、今にいたる。
だから、久しぶりに人がいるってのが、なんか自分でもうれしいのかどうかよくわかんねぇけど、ちょっと、人一人分狭く感じる家ってのが、なんか、むずがゆいけど悪くねぇから、追い出せねぇ。
別に俺を嫌うでもない、好くでもない、ただいるだけのやつだけど、なんか人がいるってのが、いい。
ついつい独り言も、こぼれる。
タロウに話しかけてんだけど、タロウが答えるわけじゃねぇってのはわかってるから、独り言。
答えがねぇの、知ってるから、ある意味、安心して話しかけてしまっている。
「やっぱ答えねぇのな」
笑いながら、俺は、カップ麺をテーブルに二つ置く。
一応炊いておいた飯をおいて、食う。
飯はしっかり食いやがるよな、タロウ。
タロウが俺の家に居着いてしまって一週間たった。
俺は、タロウが家の学校の生徒で、しかも、おぼっちゃまだということを確信している。
なんせ、一週間前までカップ麺をどうやって食うかも解らないようだった。
お湯もわかせないようだった。
今は、お湯も沸かせりゃ、カップ麺の入っている戸棚も把握している。
一日目みたいに、魚肉ソーセージを無惨な姿でゴミ箱に捨てる必要もなくなった。
魚肉ソーセージはこうやって食うんだぜと、ついさっき思い出したかのように実演してやったんだが、目を見開いて驚いてやがった。
ついでに、魚肉ソーセージを渡すと、うまくビニールから中身がとれず、しょんぼりしていた。
仕方ないので、うまく切れなかった紐みたいなのは放置して、包丁でビニールきって与えると、うまそうに食っていた。
餌付けしている気分だ。
「なぁ、あんた、マジ、ここいていいのか」
一週間、どこにもいかず、ここにいるってのは、さすがに気になる。
いや、三日目にも聞いたが、たぶん学生だし、学生じゃなかったら、尚更、一週間、どうしたんだと聞きたくなる。
「……おまえ、俺のことタロウって勝手に名付けた癖に、タロウって呼ばないよな」
一週間して、初めてタロウが笑った。
そんなどうでもいいつうか、むしろ、タロウって名付けたの気にいらねぇえとか言いそうなのに、タロウが笑った。
久しぶりに、俺に向けられる笑顔なんて見た。
新鮮な気分だ。
「別に、俺とおまえしかいねぇからな、この家。なら、最初に名付ける必要もなかった……のか?」
俺が首をひねって尋ねると、タロウは大笑いして、首を横に振った。
「いや、タロウでいいんじゃねぇの。そんな名前で呼ばれることもねぇから」
タロウという名前は、タロウの本名に引っかかりもしないということもこの日解った。
三日たって解ったことは、タロウは学校に行く気配がない。
そして、顔の腫れが引いてきて解ったことなのだが、やはり整った顔をしている。
いわゆるかっこいいとか、ワイルドであるとか言われる類の顔で、体格もいい。
「神様ってのは、不公平だな」
思わず呟いてしまったのは仕方ない。
こんな美形ならば、女も男も放っておかないかもしれない。
いや、だが、逆に、こんな美形だからこそ、放っておくかもしれない。
タロウは一人で生きていけそうな雰囲気が漂っていた。
「いや、家にいんのは別にいんだけどよ。おまえ、飯、カップ麺しか食ってねぇし」
料理をするという習慣のない俺は、家にはあまり食材を置かない。ただ、カップ麺を常備してある。
それはタロウもカップ麺を食うしかないだろう。
「俺んちなんかいていいのおまえ」
やっぱりタロウは無言で、俺は、独り言をぺらぺらしゃべるしかない。
だいたいだ。
ガキの頃からいわゆる鍵っ子というやつで、寝ても起きても一人だった。
友達はあんまいなかったし、その友達は地元にいるからここにはいねぇし。
そうなると、ここでは一人で、とある事情……ひらたく、簡単にいってしまうと、お袋は愛人で、中学のときにそのお袋が過労でそのままいなくなって、父親に引き取られたけれど、俺はやっかい物だった。
だから、一応、世間体で学校には行かせるけど。みたいな感じで、父親の息子も学校には通ってて、俺と同じ年なんだが、あんまり顔あわせたくはねぇし、あと、金持ちの癖に俺に出す金はねぇとか、父親の妻がいうから、仕方ない。
俺は学校いってるけど、家なき子。
そうなると、家の事情ってやつにやたら耳ざとい連中が俺の噂をしてくれる。
それはぐれもする。
おかげで、俺は学校で孤立し、孤立しなくてもいいはずの山の下でも孤立している。
環境が急にかわっちまったせいもあるし、なんか、自分の置かれている状況が笑えるほど他人事で、ふらふらしてるうちに、なんか、孤立していた。
結局そのまま、今にいたる。
だから、久しぶりに人がいるってのが、なんか自分でもうれしいのかどうかよくわかんねぇけど、ちょっと、人一人分狭く感じる家ってのが、なんか、むずがゆいけど悪くねぇから、追い出せねぇ。
別に俺を嫌うでもない、好くでもない、ただいるだけのやつだけど、なんか人がいるってのが、いい。
ついつい独り言も、こぼれる。
タロウに話しかけてんだけど、タロウが答えるわけじゃねぇってのはわかってるから、独り言。
答えがねぇの、知ってるから、ある意味、安心して話しかけてしまっている。
「やっぱ答えねぇのな」
笑いながら、俺は、カップ麺をテーブルに二つ置く。
一応炊いておいた飯をおいて、食う。
飯はしっかり食いやがるよな、タロウ。
タロウが俺の家に居着いてしまって一週間たった。
俺は、タロウが家の学校の生徒で、しかも、おぼっちゃまだということを確信している。
なんせ、一週間前までカップ麺をどうやって食うかも解らないようだった。
お湯もわかせないようだった。
今は、お湯も沸かせりゃ、カップ麺の入っている戸棚も把握している。
一日目みたいに、魚肉ソーセージを無惨な姿でゴミ箱に捨てる必要もなくなった。
魚肉ソーセージはこうやって食うんだぜと、ついさっき思い出したかのように実演してやったんだが、目を見開いて驚いてやがった。
ついでに、魚肉ソーセージを渡すと、うまくビニールから中身がとれず、しょんぼりしていた。
仕方ないので、うまく切れなかった紐みたいなのは放置して、包丁でビニールきって与えると、うまそうに食っていた。
餌付けしている気分だ。
「なぁ、あんた、マジ、ここいていいのか」
一週間、どこにもいかず、ここにいるってのは、さすがに気になる。
いや、三日目にも聞いたが、たぶん学生だし、学生じゃなかったら、尚更、一週間、どうしたんだと聞きたくなる。
「……おまえ、俺のことタロウって勝手に名付けた癖に、タロウって呼ばないよな」
一週間して、初めてタロウが笑った。
そんなどうでもいいつうか、むしろ、タロウって名付けたの気にいらねぇえとか言いそうなのに、タロウが笑った。
久しぶりに、俺に向けられる笑顔なんて見た。
新鮮な気分だ。
「別に、俺とおまえしかいねぇからな、この家。なら、最初に名付ける必要もなかった……のか?」
俺が首をひねって尋ねると、タロウは大笑いして、首を横に振った。
「いや、タロウでいいんじゃねぇの。そんな名前で呼ばれることもねぇから」
タロウという名前は、タロウの本名に引っかかりもしないということもこの日解った。
タロウが笑った日から、タロウは俺の独り言に答えてくれるようになったし、たまに話しかけてくるようにもなった。
タロウが笑った日から三日たった。
「んで、おまえさぁ」
「タロウ」
「……タローさぁ、ここいていいの?」
「おまえ、俺がいなかったら、ここ、一人だぞ?おまえこそいいのかよ」
偉そうに言い切っているが、俺の聞いていることには答えない。
返事はするようになったが、タロウから俺の疑問への解答を得られることは少ない。
最初は、色々聞いたんだが、身元とかそういうのをきくと、タロウはほとんど話をはぐらかす。
別に無理に帰そうとか、そんなことは思っていない。
いたいだけいればいいし、たまにこの家のことを思い出してここにくればいい。
どうせ、学校は一緒だ。
タロウみたいな面のやつは、さすがに目立つし、発見するのもたやすいだろう。
「家に一人は慣れてっから。ふと、なんか、一人だと感じる時はあんだけど」
「あっそ」
素っ気なく相づちを打つものの、なんだか納得いかないみたいな顔でタロウがこちらを見るから、俺は、仕方なくこういった。
「あー…でも、めちゃくちゃ恥ずかしいしてれんだけど、たまに遊びに来てくれたら、俺、カップ麺テーブルに余分に出すわ」
「……もうちょっと歓迎してくれてもいいだろ」
「俺んちは財政圧迫されてんだよ。茶より豪華だろう」
「いや、おまえんちの茶よりは豪華かもしれんが、茶もピンからキリだぞ」
このおぼっちゃまめ…と思いはしたが、学校で売っている意味の分からない茶の値段を考えると、確かにそうだ。
そんな高い茶も、やつらには間に合わせのもので、不人気らしいが。
「しかたねぇな。ギョニソもつけっから」
「ぎょにそ?」
「魚肉ソーセージ」
「……?」
俺と話し出して、タロウは表情も豊かになった。
これは、タロウが俺と交流する気になったからだろう。
初めて聞く名前に、タロウが不思議そうな顔をした。
「あの白くて長い奴だよ、おまえが何度挑戦してもうまくビニールとれねぇえやつ」
「ああ!」
理解して、うれしそうにタロウは手をたたいた。
「だったら俺、おまえの胡椒の味しかしねぇし、肉もはいってねぇ焼きめしがいい」
「おい、わがままいうな。焼きめしとか一手間じゃねぇか。しかも胡椒の味しかしねぇって文句言いやがって、塩しかいれねぇぞ今度から」
「……焼きめしがいい」
「解った解った。なんなんだ、ぜってぇ胡椒ばっかの焼きめしよりカップ麺とギョニソのがいいだろが」
「自分で認めんなよ」
そういって、タロウはやっぱり笑う。
タロウを拾ってから、二週間目のある日、タロウは家にいなかった。
いなくなった。
帰ったのだろう。
メモもなにもないけれど、きれいに畳まれた俺の部屋着だとか、やっぱりうまく食えなかったんだろう魚肉ソーセージとか、そんなものを片づけた名残がある。
最後に挑戦とか、よほど悔しかったんだろうな、魚肉ソーセージ。そんなことを思いながら、少し笑ってしまった。
俺一人の笑い声が、部屋に響く。
そう思えば、この部屋には俺しかいないのだなと、思い出す。
俺は、一つため息をついて、カップ麺をとりだそうとした。
何かといっては、貧乏貧乏言っていたせいか、恩返しみたいに、タロウがカップ麺を増やして帰っていた。
あいつは俺の好みをしらねぇから、あいつにとって物珍しいものばっかりかったのだろう。
袋麺から焼きそば、豚骨、味噌、塩、醤油、パスタのカップ麺まであった。
そんなたけぇの普段、買わねぇよっていうのまであった。
どうせ買うなら、肉かってくれよ。焼きめし肉ねぇって文句言う癖にと、しみじみ思って、俺は味噌ラーメンを手に取る。
久々に食べる味噌ラーメンには、そぼろみたいな本物か偽物かもわかんねぇ、かやくの肉がのっていた。
「明日探してみっかな、タロウ」
いざいなくなると、一緒にいた時間が長いだけ、なんだか違和感を感じる。
寂しいとは認めたくないもんだ。
翌日。
俺はタロウを探すため、生徒総会なる集会に参加した。
学校の生徒が集まるというから、探しやすいだろうと思って、参加したのだ。
タロウはすぐ見つかった。
どこにいるのかと、普段は使わない二階席から隠れて見下ろしていたというのに、タロウはステージの上でいかめしい顔してやがった。
俺は生徒総会が終わった後、生徒の波を眺めながら、声を耳に拾った。
「会長様、ちょっとおやせになったんじゃない?」
「二週間お見かけしなかったけど、ご病気だったのかな…」
「それに今日、なんだかきょろきょろしてらっしゃらなかった?」
俺が、その声を聞いて解ったことがある。
タロウの本名は、櫻ヶ崎相模(おうがさきさがみ)といって、タロウという名前は確かに引っかかりもせず、また、生徒会長であるということを知った。
こんなおぼっちゃま学校の生徒会長がなんで道ばたに落ちてるのかはよくわからない。
そのうち噂話とかで聞くこともできるだろうが、俺もそこまでタロウのことを調べ尽くしたいわけでもない。
名前と、ちょっとした素性が知られれば、十分だ。
俺は、いつも通り、ちょっとだけ教室に顔を出して、満足して、誰もいない非常階段でちょっと時間をつぶし、とっとと山の下へと向かった。
タロウが笑った日から三日たった。
「んで、おまえさぁ」
「タロウ」
「……タローさぁ、ここいていいの?」
「おまえ、俺がいなかったら、ここ、一人だぞ?おまえこそいいのかよ」
偉そうに言い切っているが、俺の聞いていることには答えない。
返事はするようになったが、タロウから俺の疑問への解答を得られることは少ない。
最初は、色々聞いたんだが、身元とかそういうのをきくと、タロウはほとんど話をはぐらかす。
別に無理に帰そうとか、そんなことは思っていない。
いたいだけいればいいし、たまにこの家のことを思い出してここにくればいい。
どうせ、学校は一緒だ。
タロウみたいな面のやつは、さすがに目立つし、発見するのもたやすいだろう。
「家に一人は慣れてっから。ふと、なんか、一人だと感じる時はあんだけど」
「あっそ」
素っ気なく相づちを打つものの、なんだか納得いかないみたいな顔でタロウがこちらを見るから、俺は、仕方なくこういった。
「あー…でも、めちゃくちゃ恥ずかしいしてれんだけど、たまに遊びに来てくれたら、俺、カップ麺テーブルに余分に出すわ」
「……もうちょっと歓迎してくれてもいいだろ」
「俺んちは財政圧迫されてんだよ。茶より豪華だろう」
「いや、おまえんちの茶よりは豪華かもしれんが、茶もピンからキリだぞ」
このおぼっちゃまめ…と思いはしたが、学校で売っている意味の分からない茶の値段を考えると、確かにそうだ。
そんな高い茶も、やつらには間に合わせのもので、不人気らしいが。
「しかたねぇな。ギョニソもつけっから」
「ぎょにそ?」
「魚肉ソーセージ」
「……?」
俺と話し出して、タロウは表情も豊かになった。
これは、タロウが俺と交流する気になったからだろう。
初めて聞く名前に、タロウが不思議そうな顔をした。
「あの白くて長い奴だよ、おまえが何度挑戦してもうまくビニールとれねぇえやつ」
「ああ!」
理解して、うれしそうにタロウは手をたたいた。
「だったら俺、おまえの胡椒の味しかしねぇし、肉もはいってねぇ焼きめしがいい」
「おい、わがままいうな。焼きめしとか一手間じゃねぇか。しかも胡椒の味しかしねぇって文句言いやがって、塩しかいれねぇぞ今度から」
「……焼きめしがいい」
「解った解った。なんなんだ、ぜってぇ胡椒ばっかの焼きめしよりカップ麺とギョニソのがいいだろが」
「自分で認めんなよ」
そういって、タロウはやっぱり笑う。
タロウを拾ってから、二週間目のある日、タロウは家にいなかった。
いなくなった。
帰ったのだろう。
メモもなにもないけれど、きれいに畳まれた俺の部屋着だとか、やっぱりうまく食えなかったんだろう魚肉ソーセージとか、そんなものを片づけた名残がある。
最後に挑戦とか、よほど悔しかったんだろうな、魚肉ソーセージ。そんなことを思いながら、少し笑ってしまった。
俺一人の笑い声が、部屋に響く。
そう思えば、この部屋には俺しかいないのだなと、思い出す。
俺は、一つため息をついて、カップ麺をとりだそうとした。
何かといっては、貧乏貧乏言っていたせいか、恩返しみたいに、タロウがカップ麺を増やして帰っていた。
あいつは俺の好みをしらねぇから、あいつにとって物珍しいものばっかりかったのだろう。
袋麺から焼きそば、豚骨、味噌、塩、醤油、パスタのカップ麺まであった。
そんなたけぇの普段、買わねぇよっていうのまであった。
どうせ買うなら、肉かってくれよ。焼きめし肉ねぇって文句言う癖にと、しみじみ思って、俺は味噌ラーメンを手に取る。
久々に食べる味噌ラーメンには、そぼろみたいな本物か偽物かもわかんねぇ、かやくの肉がのっていた。
「明日探してみっかな、タロウ」
いざいなくなると、一緒にいた時間が長いだけ、なんだか違和感を感じる。
寂しいとは認めたくないもんだ。
翌日。
俺はタロウを探すため、生徒総会なる集会に参加した。
学校の生徒が集まるというから、探しやすいだろうと思って、参加したのだ。
タロウはすぐ見つかった。
どこにいるのかと、普段は使わない二階席から隠れて見下ろしていたというのに、タロウはステージの上でいかめしい顔してやがった。
俺は生徒総会が終わった後、生徒の波を眺めながら、声を耳に拾った。
「会長様、ちょっとおやせになったんじゃない?」
「二週間お見かけしなかったけど、ご病気だったのかな…」
「それに今日、なんだかきょろきょろしてらっしゃらなかった?」
俺が、その声を聞いて解ったことがある。
タロウの本名は、櫻ヶ崎相模(おうがさきさがみ)といって、タロウという名前は確かに引っかかりもせず、また、生徒会長であるということを知った。
こんなおぼっちゃま学校の生徒会長がなんで道ばたに落ちてるのかはよくわからない。
そのうち噂話とかで聞くこともできるだろうが、俺もそこまでタロウのことを調べ尽くしたいわけでもない。
名前と、ちょっとした素性が知られれば、十分だ。
俺は、いつも通り、ちょっとだけ教室に顔を出して、満足して、誰もいない非常階段でちょっと時間をつぶし、とっとと山の下へと向かった。