書きなぐり 労働中。 忍者ブログ

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英語タイトルでそういう話がありましたね。
まったく関係ありません。


これは、結構前に、学園で働く話をしましたが、その話。

カップリング、は明かさない方向でいきます。
ですが、主人公は攻です。


本文は続きからどうぞ。









難儀なことになっているな。
ぽつりとお客様が呟いた。
俺はお客様に断り、その場から退去すると、調理場へ向かう。
「おい、あのクソチビ、誰か黙らせろ」
そういうと、料理長の瑠璃(るり)が、困ったように笑った。
「無理だね。今は、君以外は星一つ以下しか出勤してない」
「マジかよ。たかが柄悪いオマケの星三つのスタッフに納められる騒ぎかよ。クソが」
俺は舌打ちをし、あたふたとフロアで料理を運ぶ奴らを見た。
たとえ忙しくとも、それを見せない。それが星を一ついただく条件となっている。
まだ、連中は星一つ以下だな。
俺はため息をついた。
「オマケ三つというけど、三つくらいになると急にがくんと人数が減るのも知ってるだろう?五つなんて他のところあわせても五人いるの?」
「先日、一人増えた」
「なら六人くらい?どっちでもいいよ。ここには星五つ一人もいないし、四つだって一人しかいないんだよ。わかってるでしょう」
俺はもう一度舌打ちして、フロアにでる準備をする。
俺は、今から、私。
口が悪い元ヤンキー……まだヤンキーかもしれないが、とにかく、粗野な動作も、乱暴な口調も使わない。
目つきさえもかえ、ゆっくりと穏やかな表情へと変える、イメージをする。
「瑠璃、もし、呼んだらよろしく頼む」
「いつも変身お見事!いってらっしゃい、紺鼠(こんねず)」
Bosco blu(ボスコブル)、生徒には青、または森と呼ばれる学生食堂がある。
そこは生徒によって営業されるイタリアン専門の食堂だ。
学園には他にも、生徒によって運営されている店や、団体、事務所、会社が存在している。
その中の一つであり、俺の働いている青は、学園内の飲食店としては星二つと言われており、ちょっと今日は気分がいいから、ちょっといいランチでも食べようかなとOLが向かうような店に似ている。
普段から食べるには少し高い。しかし、たまに食べにいけるお気に入りのお店。そういう立ち位置だ。
しかしながら、この学園の生徒は舌も肥えているし、裕福な家庭の人間が多いということもあり、星一つ以下の店は存在しない。
ただ、この学園では家の力など大した力にならない。
この学園で力を振るえるのは、この学園にきてから権力を持った者のみだ。
継承されていくものもあるが、スタートは皆同じであり、入学してまもなく行われるテストの結果により、この学園で金銭の代わりとなるポイントが付与される。
そのポイントは、各学期末に出される成績によって与えられるが、微々たるもので、それだけで食べていけるようにはできていない。
そうして学園の生徒たち、この学園でポイントを得るために働くことになるのだ。
どんな仕事でもいい。
働いて、ポイントが支払われれば、いつか給料となってポイントが配布される。
学園側はそれを大々的に売りとして出しているために、ほとんどの生徒がそういった労働込みでこの学園に入学する。
それでもたまに、この学園のことをよくわかっていないやつが、いるのだ。
その典型が、本日の騒ぎとなっているお客様であり、黒い噂が絶えない転校生だ。
そろそろ、ペナルティでポイントが消失するのではないだろうか。
「お客様、失礼します」
「なぁなぁ、あんた、名前は!?」
「お客様、すみません」
「なぁー!」
あくまで俺を無視して青のお客様の一人に話しかけるお客様に、俺は、顔の筋肉を総動員して微笑み、お客様の肩を軽く叩き、もう一度お声をかける。
「お客様」
「お!なんだよ!あんた!」
「ご歓談中、申し訳ありません、お客様」
「お客様なんていうなよ!他人行儀だな!ナツって呼んでくれ!」
「……それでは、ナツ様」
「様はいらねーぞ!あんたの名前は!?」
「私は、紺鼠と申します」
「こんねず?変わった名前だな!」
それもそうだろう。
この青のスタッフは星一つ以上になると、皆、青系の色の名前をもらう。
紺鼠は、鼠色系の紺色だ。
鼠色より、紺が強い。
その名前は、青のスタッフの誇りだ。
「そうですね。ところで、ナツ様」
「様はいらねーぞ!」
「……貴方様のお声はとても、明るく元気ですね」
「おう!ていうか、敬語もいらねーぞ!友達だからな」
「……ありがとうございます。実は、私、あちらの席にいたのですが」
ナツ様がいる場所から一番遠い場所を手で示す。
「あんなとこにいたのか!」
「はい。あちらの方にも聞こえて参りまして」
「へぇー!」
「大変、ナツ様のお声が魅力的で、近くで聞きたくなり、こちらに参りました」
「なんだよ、いくらでも話してやるぞ!」
こんなに本題に入るのに時間をかけているというのに、こいつとずっと話すだなんて冗談じゃねぇなと、本心が頭をだす。今は引っ込んでろと自分自身に言い聞かせ、俺は続ける。
「はい、ありがとうございます。明るく元気なお声はとても魅力的なのですが、きっと、小さなお声も魅力的なのではないのかな?と思いまして」
「小さい声じゃ聞こえないだろ!」
「ええ、遠くにいてはきこえません。ですが、この距離なら、十分聞き取れます。貴方の魅力的なお声をたくさんの方に聞いていただきたい気持ちもあるのですが、こうして、近くにいて聞き取れるだけの方々の秘密にしてしまいたい気持ちもあるのです」
「みんなのほうがうれしいだろ!」
「そうですね。皆で分けられたら、嬉しいです。ですが、特別にお聞かせ頂けるとさらに嬉しくなりますね」
特別という言葉を密かに強調して話すと、ナツ様は、小さな声……通常の音量の声ではなしはじめた。
「特別だぞっ」
「ありがとうございます。更に、すてきなお声ですね」
あたふたとしていたスタッフたちの一部が遠くからポカンとこちらをみている。
働けと言いたいのをぐっとこらえ、俺は更に続ける。
「ご注文はもう、されましたか?」
「おう。したぞ」
「では、料理をお持ちするまで、少々お待ちください。……あと、他の方のお名前なのですが」
「こんねずもききたいのか?」
「いいえ、私は、ナツ様のお名前を聞けただけでも充分でございます。他のお客様のお名前を聞かれるのもよろしいのですが、せっかく魅力的なお声をお持ちなのです。お近くのご友人にご披露なされてはどうでしょうか?私のように、特別にききたい方もいらっしゃるとおもうのです」
「わかった!……わかった。特別聞かせてやるぞ」
俺は表情を変える。
少しゆるんだ笑みだ。
まるで、少し親しくなったから気を緩めたように見える笑み。
「では、ご注文の料理をお持ちするまで、ご歓談お楽しみください」
「おうっ」
やれやれ、これでやっと静かになった。
そう思い、調理場に顔を出すと、瑠璃が料理の皿をカウンターに起きながら笑った。
「タラシ」
「タラシたくてタラシてねぇよ!……特別ボーナスとかくんねぇかなぁ」
「無理でしょ。貴方の仕事に含まれてるし。ほら、これがさっきのお客様のご注文」
「ああ、それなら……獅子那(ししな)!」
「はい、紺鼠さん」
「うまいこと持ってったら星一つ、昇級試験受けれるようにしてやるよ」
「マジすか!いってきます」
獅子那ならできるし、星一つも無理ではないだろう。
俺は確信して、獅子那に仕事を振った。
「獅子那くん、さっきもなに食わぬ顔で仕事してたね……」
「対処に向かった奴が名前聞かれてる間も、フォローしつつだからな。あいつは大物になるぞ」
「そうだね。あ、これは、君のお客様のご注文」
「ん。じゃあ、俺もいってくる」
そういって俺を指名してくれたお客様の元に急ぐ。
物音は立てず、埃もたてず、泳ぐように、滑るように、優雅に見えるようにを心がけ、二階席の個室に向かうと、お客様はこう言った。
「紺鼠、おまえ、俺の名前知ってる?」
「ええ、存じておりますよ。貴方のお名前を知らない者はこの学園ではそうおりませんよ」
そういうと、拗ねられた。
言わんとすることは解っているが、ちょっとした意地悪だ。
「彩一(さいち)様、またのお越しをお待ちしております」
デザートを食べ終え、お客様がでていく間際に、おきまりの挨拶をする。
薙彩一(なぎさいち)は俺に振り返って、目を見開いた後、鼻で歌いながら帰っていった。
相変わらず、鼻歌がへたくそである。




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