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コロッケパンが食べたいなーとかそれだけのはなし。
最近、何故かストレートに欲求ぶつけてるんだけど。
いや、コロッケパン美味しいですよ。ものによりますけど。
マジで恋した5秒後の生徒会長とヤンキーです。
欲望シリーズと名づけましょうか。(何)
腹が減った時が飯時ヤンキー×焼きそばパンも好きだが、今はコロッケパンだ会長
本文はつづきからどうぞ。
第三資料室という名のユートピアを失い、甘い空気に耐える日々を送る会長は、飯時ばかりが楽しみとなっている。
朝は弱いためきちんと食べることが少ないが、時間さえあれば、昼時より少ない品数ではあるが、パンを売っている売店にて菓子パンを買ってくるのは彼のささやかな楽しみだ。
朝は惣菜パンが出ていることが少なく、だいたいは部活動に励む生徒に購入されるため、甘い菓子パンが残ってしまうのは仕方ないことだが、やたら歯ごたえのある耳をもったフレンチトーストを苦戦しながら食べるのは彼の楽しみのひとつとなっている。最早、あのフレンチトーストでなければ満足しない気さえしているのだから、売店の陰謀というものを感じずに居られない。
昼はパンより米が食べたい。
大体そう思って、昔はオニギリを入手するか、食堂に行くかのどちらかを選択していたのだが、生徒会役員専用席という個室にいかなければ食堂を利用することが敵わない彼は、近頃めっきり食堂に行く回数が減った。
何故なら、あの甘い空気は食堂の専用席にも持ち込まれているからだ。
何故昼時の楽しみを、苦痛の甘味料を味わいながら潰さねばならないのだろう。
そう思うと、いくら米が食べたくとも食堂を利用しなくなる。
そんな彼を歓迎してくれたのはまたしても、売店だった。
おにぎりも販売している売店は、朝よりも品数を多くして彼を待ってくれていた。
しかし、売店は彼を待ってくれていたのだが、売店に行く人間は彼を待ってくれない。
昼時の売店は戦争だ。
彼と同じ嗜好の人間が多いのか、米はまずまっさきになくなる。
微妙な具のおにぎりは残ったりするのだが、菓子パンを食べるくらいならとそれを手に取る人間は多い。
もちろん、甘いものが好きで菓子パンしか食べない人間も多くいるのだが、飯時ということもあり惣菜パンを手に取る人間の方が多い。
しかもここは男子校だ。
成長期の男子が惣菜パンの一つや二つで満足するのか。
答えは否。
満足する人間や、小食な人間もいるのだが、大多数は争うようにしてパンを、オニギリを買ってく。
この戦争に負ければ、菓子パンを手に取るか食堂に行くしか方法はない。
いくら人気投票で決まった生徒会長とて例外ではない。
売店の昼時は戦争なのだ。
蝶よ花よと育てられたわけでも、箱に入っていたわけでもない会長であったが、さすがにこの戦争に勝ったことがない。
誰もがスタートダッシュを切る時間をフライングすれば、彼とて好きなパンを買えるのだが、スタートダッシュを切れず出遅れることのほうが多い。
幸運にも彼が手に取る事ができるのは、知人が恵んでくれた焼きそばパンと、惣菜パンとして最後に残っているコロッケパンくらいだ。
あとは菓子パンや微妙な具のおにぎりだ。
焼きそばパンは、しなびた人参がちょろっと入っていて、麺と生姜くらいしか目立って具といったものがないくせに、やけに人気のパンであるだけに、恵んでくれた知人にひどく感謝したことを覚えている。
コロッケパンもまた、少し甘みのあるコロッケが挟まれているだけのパンで、コロッケの中身も肉等ひとかけらも見つからない代物だ。
それはカツやソーセージが挟まっているパンが人気なのも頷ける。
ちなみに、一番人気はカツドック。二番目はサンドイッチだ。
サンドイッチは色々あるものより、三種類しか入っていないものが人気で、それも、量があるという理由だけで人気である。高い割にお上品なサイズのミックスパックはそれらが売り切れるのをまって手に取られる。
そんなわけで、運が良ければあやかれるコロッケパンなのだが、その日、会長はコロッケパンがどうしても食べたかった。
何がなんでも食べたかった。
しかし、売店にはスタートのチャイムが鳴って五分後に向かうこととなり、片手に二つ手にとったバケットと甘食しか得られなかった。
意気消沈したまま、自然とユートピアに足がむいたのは、それだけ彼が第三資料室という場所に安らぎを求めていたからだ。
今となっては安らげる場所ではなくなってしまったそこのドアを見た瞬間に、彼は踵をかえす。
しかし、踵を返すのは遅かった。
「入りゃいいじゃねぇかよ、丹村(にむら)会長」
いまや第三資料室の主となっている雁屋の声に、顔を上げた彼は見てしまった。
ビニール袋から、はみ出る、コロッケパン。
「てめぇがいちゃ、くつろげねぇよ」
正直な感想だったのだが、気もそぞろな返事となってしまった。
どうしても、今日はコロッケパンが食べたかったのだ。
雁屋の持っているビニール袋が、一番近いとはいっても下山しなければないコンビニの袋であるとか、授業をサボって下山していたのかとか、もうそれについて何か行ってやることもできないくらい、彼はコロッケパンが食べたかった。
「そりゃ、悪かったな。つうか」
雁屋もさすがにその熱烈な視線に苦笑する。
「もしかしてこれ、食いてぇの?」
掲げられたビニール袋を睨みつけるが、彼は頷かなかった。
「やるよ。ついでに、あんたが来てる時間はここ来ねぇようにするから、教えてくんね?」
願ったり叶ったりだ。
「いいのかよ」
「元々あんたの巣だろうが。意外と心地よくてきちまってたけど」
元いた人間を追い出すほどじゃないと言う雁屋に、彼は悩む。
ここに来なくなったのは、確かに雁屋のせいだ。
しかし、それは他人がいて不愉快だからとか、ましてヤったからとかいう理由じゃない。
雁屋だからだ。
あの部屋の家具が少々変わった配置になっているのも、彼が堂々と後ろを気にすることなく雁屋を眺めるためであったり、不自然に窓際が居心地のいい空間になっていたりするのは、長時間眺めて不自然がないようにするためであったし、あの隠れたソファーだって実はそれなりに、雁屋がからんだ理由があったりしたわけで。
知らぬは本人ばかりなり。
彼はようやく、パンから視線を逸らし、首を振った。
「雁屋が気に入ったんならいつでも行けよ。別に、俺はまどんとこ移動するし」
「……」
じゃあ、なんで今まで避けてきたんだと聞かない雁屋は優しいのではない。
恋愛上級者なのだろう。
「あー…でも、俺が緊張するから」
「クソが!このたらしめ…ッ!!」
差し出されたコロッケパンをひったくり、甘食を投げつけると、今は誰もいないだろう生徒会室に彼は走っていった。
実は、バケットは結構好きなのである。
「ヤった時も抵抗なかったもんなァ」
独りごちて甘食を拾って雁屋は笑った。
甘いものは好きではないと彼は知らないのだろう。
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