×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ファンタジーではありません。
総長とワンコがなんとなく心温める話です。
たぶん
本文は続きからどうぞ
「突然なんだが」
「はい」
「殴る蹴るの暴行の末、勝利して最後にたっていた野郎が俺とつきあうという話になっていたんだが」
「はい」
「俺はおまえと付き合うべきなのか?」
「いや、総長、俺の好みとはかけ離れてるんで」
「だよなぁ」
しみじみと総長が呟いた。
午前三時過ぎ、泣く子も黙る強面たちが虫も眠る丑三つ時に、総長を取り合い傍観している総長を放置して決めたらしい。
『最後に立っていたやつが、恋人になる』
単純明快だ。
最終的に立ってた奴をぶん殴って、勝者をなきものにすべく、総長は堂々と傍観していたらしい。
そこに、虫も眠っているというのに騒がしいから、起き出し、このくそ眠たいのにバカかアホかと罵り、殴る蹴るの暴行の末、最後に立っていた俺に、総長が声をかけたという次第だった。
突然の乱入者に、総長は考えた。
この話は、無効だろうか有効だろうか。
きっとなにが何でも総長をものにしたい連中は、無効を叫ぶだろう。
しかし、総長だって、連中に言ってやりたいだろう。
「俺に選ぶ権利はねぇのかよ」
ぽつりと呟かれた本音が胃に染みる。
「っすよねぇ」
頷いた俺の頭を無造作に撫でる総長は、遠くを見て、俺と一緒にカフェオレを啜っていた。
「だいたいだ、あいつら、俺の意志は基本的に無視じゃねぇか。俺よりよわっちぃくせに」
「すねー。俺より弱いすしねー」
「うちのもんでもないし」
「すねー。うちの人でも、総長、ぜんぜんその気ないすよねー」
総長を取り合ってた連中は、総長の下のものではない。
「だよな。おまえ、意外と話せるな……」
「ああ、そう思えば、総長と話すの初めてっすね。俺、主とばっか一緒っすもんね」
「そう思えば、今日はあいついねぇの?」
「主、いたんすけど、起きたらいなくて、この騒ぎすわ」
「なるほど、それは悪いことしたな」
転がる強面たちをつま先でつつきながら、総長が苦笑した。
「総長じゃなくて、こいつら悪いんしょ。だって、ぜんぜんおもしろくもなかったすもん」
総長が俺に顔を向けた後、強面たちを見て、もう一度俺を見る。
そして、また強面たちをみた。
なんだか、強面たちに申し訳なさげだった。
「なんか違ったすか?」
「いや、単におまえの基準がおかしいだけなんだが。おまえの主とその周りだろ、比較対象」
「俺にとっちゃそれが普通なんすからいいじゃないすか。総長もそれにはいってるすよ」
総長が今度は少し楽しげに笑った。よく、仲間といるときにする笑みだ。
「そりゃあ、ありがとよ。で、おまえ、寝直さないのか?」
「目が覚めたっす。寝付きわりぃのに」
「ああ、じゃあ、ちょっと魔法かけてやろうか?」
総長ともあろう者が魔法とか何いってんだ。
と、思っていたが、本当に魔法だった。
目に手を当てられてちょっと話をしただけで眠くなるとか、本当、なんの魔法だ。
PR