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今回新登場するキャラを載せるという。
エコーはどちらかというと、ここじゃなくて、サイトの方なんじゃあ。とは思うのですが。
表にだしたら、ファンタジー全部やりかけで、本当、酷い有様になってしまうので。
二話目をまとめました。
本文は続きからどうぞ。
「僕としてはね、三枝に生徒会に入ってもらって、『黒の』に風紀に入ってもらいたいんだよね」
「冗談じゃない」
西秋はレッドと呼ばれる生徒会補佐の槙(まき)の話に、開口一番そういった。
生徒会になど槙の願いでもなければ関わりもしない西秋は、心底嫌そうな顔をした。槙は常から気の弱そうなと言われるその顔を、さらに眉を下げることで弱らせる。
「君の答えはかわらないね」
「当たり前だ。あんたに手を貸してんのは、あいつを表に立たせるためでも、俺が表に立つためでもねぇ…あんたがどうしようもなくなったら俺が手を貸してやるっていう誓いのせいだ」
槙は西秋の誓いに、あまりいい感情を持っていない。
それにより何度となく助けられているが、友人にはそんなものに縛られていてほしくないと思っている。
一度、冴島が生徒会を潰しかけたとき、あのまま冴島が生徒会長となることをよしとしなかった槙は、冴島の攻撃に手も足も出ない生徒会に変わって仕方なく西秋に動いてもらった。
西秋はどこにも所属せず、誰にも従わない。権力に興味がなければ、誰より強いということも求めていない。
だから、一部を除き冴島より強いと思っておらず、一時しのぎくらいにしか思われていなかった。
昔の冴島は、槙には強欲の塊に思えた。いつも何かに飢えていていつも何かを求めている。手当たり次第何かに手を伸ばしては破壊している。そういうふうに見えて、友人に助けを求めることも厭った。
この友人が冴島よりも弱かったら、壊されてしまうと本気で思った。
しかし槙の心配や不安は杞憂におわった。
西秋は冴島をトップから転落させ、冴島はその力がなくなったかのようにおとなしくなった。
あまりの大人しさに、冴島を調べた槙は自分自身の浅はかさを知った。
冴島芥は、飢えていた。
しかしそれを他人に向けることはなく、乱暴であったし適当であったが、学園やそこにいる生徒達を壊すようなことは一切していなかったのだ。
冴島はただ、自分自身に起きた厄介事や、面倒事を潰してきただけだった。
「僕はね、冴島くんってもっと何かと突っ掛かってきて、あのことも恨みに思われて面倒なことになると思ってた」
「あの執着のない男がか?」
全盛期の冴島は、もてた。権力にその顔、身体、少し非道なところさえも、人を魅了するに足りた。
トップから落ちたあとは、冴島自身が目立たなくしたということもあったが、まるで何事もなかったように誰もが冴島を忘れた。
あれ程恐れられていた。あれ程持て囃されていた。あれ程彼に近づきたいといっていた。
その誰もが冴島を無視する。
西秋は、それをよかったと思うと同時に、そんな奴らに冴島を担ぐ権利も、頼る権利も、まして目に留める権利すらないと思った。
「三枝は、前から冴島のこと知ってた?」
西秋は答えない。
西秋にとって、冴島は今も昔もかわらず、人のいない寂しい場所でサボりをする男だ。
冴島を表舞台からたたき出したあと、西秋は冴島に特別な感情を抱いても、それは依然として変わらない。
「…結局、てめぇには関係ねぇよ」
「君も冴島も、いつもそうだね。人を遠ざけることだけは余念が無い」
西秋と冴島は所謂似た者同士だ。
冴島が厄介ごとと面倒ごとを片っ端から潰した男ならば、西秋はそれらを自分から遠ざけた男だ。
両者共に、面倒ごとや厄介ごとを片付ける、もしくは解決するという手段には出ず、眉間に皺を寄せる。
現在冴島は、潰すことをやめ近づかないことを選び、西秋のことも受動的だ。興味のあることには少々動くようだが、自らの枠をはみ出すような愚は犯さない。もちろん、他人の枠を踏み荒らすような真似もしない。
「気のせいだろ」
西秋は槙に笑ってみせた。
気のせいだろうと言った本人が一番解っている。
人を遠ざけるのは面倒だから。今の状態に満足しているから。
それ以上に他人に自分達の領域を荒らされたくないから。
「今回の話はなかったことにする」
「言われると思った。でも、冴島芥はどうなんだろうね」
西秋はやはり答えない。
それは冴島の問題であって、西秋の関与するところではないからだ。
西秋三枝という男は、冴島より解りやすい。
苔のような濃緑色の髪を起き抜け寝癖も直さないでおいたのだろうボサボサのままであったりだとか、ただ、自然に伸びただろう背だとか、何事にも動じない…無視をしきった、面倒臭そうな態度だとか。
その姿を見た印象そのままの性格だ。
外見のこだわりの無さや態度の表す面倒くさがりなところ、好き嫌いの前にそれほど心動くことがない。
西秋が今のところ興味があるといえるのは、この学園唯一の友人である槙と、友人とはいえず、恋人ではありえず、かといって知人とも言いづらい冴島と学園のカリキュラムくらいだ。
そんな誰の注目も受けそうに無い彼が目立っていたのは冴島と初めて戦ってしばらくくらいのものだ。
だから食堂に行ってなんとなく座った席で、風紀の暴走を傍観していられる。冴島が風紀に絡まれているなと思いながら、ぼんやりと器を持ち、周囲の様子も見ていられる。
風紀に絡まれた冴島への周囲の反応は『誰あれ』といったところだった。
「西秋くん、あれ、誰だか知ってるかなぁ?」
西秋にそう聞いてくる人間までいた。
西秋は態度を変えずにスプーンを置いた。
「さぁな」
たまたま相席したクラスメイトがニコニコしながら、もう一人、相席している人間に振り向く。
「だってぇー」
その人は、西秋より、クラスメイトより、冴島に視線を向けたまま頷いた。
「そ」
その声を聞いて、西秋はその人に視線を向ける。
「樹(いつき)くん、人の話くらいききなよぉ」
クラスメイト二人になんの断りもせず、挨拶もせず、西秋は食器返却口へと向かう。
そう思えば昔、冴島のなにより近くに居た男があんな顔をしていたなと思いながら。
「あれ?西秋くんは?…何も言わずにどっか行っちゃったぁ?せっかく顔だけはそれなりなのに、なんでああなんだろう」
「媚売って何かと取り入ろうとしている奴よりはいいんじゃねぇの?」
どんどん遠くなっていく会話を耳でとらえ、西秋に敵意を向けるわけでなく、逆に他の人間に皮肉を言う樹…樹峰(いつきみね)は、確かに冴島の傍に居た人間と同一人物だろうと思われた。
樹は冴島の友人だった。
現在は冴島がその姿を隠してしまったように、樹もすっかり形を潜めている。
まるで、示し合わせたかのように、そうであることが普通であるかのように。
何かそこが少しつまらない。
西秋は、わかり易い男なのだが、自分自身が持て余し気味の感情にも無視を決め込むところがあった。
西秋と冴島が微妙な関係であるのは、二人がそれでいいからと思っている以上に、西秋の気まぐれさと冴島の無関心さ故だ。